【新連載】夢中が仕事になる時代──VTuberが切り拓いた新たなクリエイターのかたち

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VTuberとクリエイターの新たな共創関係

 VTuberと関わることで、クリエイターが仕事の幅や知名度を広げているケースも少なくありません。仮に、VTuberという存在が突然消えてしまえば、仕事の機会を失うクリエイターもいるでしょう。なかには自らVTuberとして活動を行いながら、クリエイターとしての業務を行っている人もいます。

 その代表的な存在として挙げられるのが、しぐれういさんです。彼女は自身が描いたキャラクターで配信を行いながら、ほかのVTuberの立ち絵も手がけています。

 クリエイターの生存戦略としてSNSを活用する方が増えるなか、影響力を高めるためにVTuberとして活動を行う方も多いです。しぐれういさんは、VTuber兼イラストレーターという特徴を活かし、表現の領域を展開していった好例でしょう。

出典:PRtimes
出典:PRtimes

クリエイターの実績を拡散し可視化する文化が根付いているVTuber業界

 VTuberは、クリエイターにとって既存の二次創作活動と同じかそれ以上に、プロモーションや仕事獲得のチャンスを生んでいます。たとえば、クリエイターが次の仕事を得るためには、実績を積んだりSNSで自身の作品を発信し続けたりとセルフプロデュースを行う必要があります。イラストを依頼したVTuberが、自身のSNSで「この立ち絵は〇〇さんに描いてもらいました」と紹介するケースは珍しくありません。このような投稿は数千、数万のフォロワーに拡散されるため、クリエイターの認知度を高める可能性もあるのです。

 また、企業案件では守秘義務など契約上の制約により、クリエイターが制作実績を公にできないケースも少なくありません。 しかし、VTuberの案件では、制作者を積極的に公開する文化が根づいています。このような風土が、次の仕事への足がかりや新たな依頼のきっかけになることも多く見られます。

 この関係は、VTuber側にとっても大きな利点があります。人気のあるクリエイターや個性的なデザインのアバターは、それ自体が話題を呼び、初配信前から注目を集めるきっかけにもなり得るからです。

出典:forlio えがきぐりこ
出典:forlio

 さらに、配信画面やロゴなども含めて魅力的なビジュアルが整えば、視聴者に「この配信をまた見たい」と思わせることができるでしょう。

 VTuberのプロモーションによってクリエイターの名が広まり、クリエイターの手がけるビジュアルがVTuberにさらなる魅力を与える――。VTuberとクリエイターの関係は、互いにメリットを享受できるwin-winな関係だと言えます。ただ、プラスの面だけではありません。こうした結びつきが強いからこそ、場合によっては不祥事やトラブルがもう一方に影響を及ぼすことも頭に入れておくと良いでしょう。

これからのクリエイター社会を支える「挑戦」

 「好きなことを仕事にする」という言葉が、以前よりも現実味を帯びてきた今。VTuberは、そうした現代のクリエイター社会において大きな役割を果たしています。

 VTuberは、配信者本人だけでなく、無数のクリエイターたちによって支えられています。彼らにとって、VTuber業界は新たな表現の場であり、実績を示す場でもあります。

 VTuberに関わる今後のクリエイター業界にとって重要なのは、増え続けているVTuberの人気を維持し、さらに活性化する努力をしていくことだと思います。技術的な挑戦を続けたり、新たな分野における企画に挑んだりすることが、VTuber市場の活性化につながり、さらなるクリエイターの可能性を引き出していくことでしょう。