「技術」と「創造」が影響力を持つ時代へ──VTuberから考える、クリエイターの新しいインフルエンス力とは

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クリエイターがインフルエンス力を持つことで得られるもの

 では、インフルエンス力とはいったい何でしょうか。それを私は、「自分が作ったものでファンを生む力」だと考えています。

 今の時代、ただ絵を描く、ただデザインを制作するのみであればAIでも可能です。そんななかで「この人でなければいけない」と思ってもらうことの難易度は高いですが、それができるかどうかがAIに仕事を奪われないための条件なのです。

 そんなクリエイターがインフルエンス力を持つことによる最大のメリットは、集客コストのカットです。一度見たクリエイターが次に投稿すると表示されやすくなるといったSNSの構造があるからこそ、クリエイターは「バズる」ことで、まずは一度自身の投稿を見てもらいたいと思うのです。

 そういった背景があるため、クリエイターとしての実力は同じであっても、影響力がある人のほうが、新しい作品を出した時に最初からユーザーに見てもらえるケースが多いのです。作品を見てもらうことがとても大変だからこそ、これは影響力があることの大きなメリットでしょう。

インフルエンス力を身に着けるには

 クリエイターだけでなく、フリーランスやビジネスパーソンには次の3つの力が要求されます。

  1. 自ら数字を作り出す力
  2. 数字を価値に変換する力
  3. 価値をお金や報酬に変換する力

 これらの能力として非常にわかりやすいのが、フォロワー数、応援してくれるファンの数など、ある程度具体的な数字で示すことが可能な「インフルエンス力」だからです。

 そして、この数字は「価値に」変換しやすいのも特徴です。「私の投稿は5万人に見てもらうことができます」と伝えられれば、その価値を理解できるビジネスパーソンは少なくないでしょう。本来であれば認知や集客のためのコストが必要なところ、コンテンツに触れてもらえる人の多さが可視化されていることの価値は計り知れません。

 つまり、クリエイターが数字を価値に変える際にもっとも大切なのは「バズるのではなく、ファンをつくる」という視点です。どれだけ拡散されても、ファンがいなければ一過性のものになってしまいます。地道な発信や作品投稿は手段に過ぎません。

 インフルエンスの本質は、「自分の作品を通じて、誰かの感情を動かすこと」。そもそもバズる理由を考えてみると、最初に拡散した人たちが「めちゃくちゃ好き」「すごくいい」と感情を動かされたからではないでしょうか。

 ではインフルエンスをつけるために何をすればいいのか。その結論は「ひとりを圧倒的に感動させる作品を突き詰めること」だと私は思っています。本当に最高だと思えるものが、他の人の心にも刺さっているのです。

出典:バズ部「ファンマーケティングとは?顧客との絆を構築し売上を伸ばす実践手法」
出典:バズ部「ファンマーケティングとは?顧客との絆を構築し売上を伸ばす実践手法

これから影響力を持つのは「制作する人」

 今後、AIがさらに進化し、技術的な制作のハードルはどんどん低くなるでしょう。そんな誰でもが一定水準のクリエイティブを生み出せる時代に最終的に残るのは「この人の作品が見たい」という純粋な欲求です。

 VTuberは、その可能性をいっそう加速させる存在だと私は思っています。

 作ったものが毎日人の目に触れ、時間をかけてファンと関係を築く。その循環が、クリエイターにとって最大の武器になる。バズを追うのではなく、心を動かす作品を生み出す。影響力を数字だけでなく「信頼資産」として育てていく。

 それらが、現代のクリエイターにとって生存戦略のひとつになるのではないでしょうか。