こんにちは!Cosmowayが組織するデジタルプロダクション「factory4」のUI/UXデザイナー新谷です。
今回は、2025年2月にAdobe社から正式にリリースされた「iPhone版のAdobe Photoshop(以下、Photoshop)」に触れていきたいと思います。長らくデスクトップの領域だった本格的な画像編集ツールがスマホ版として登場しました。Photoshopの代表的なツールや機能を使って画像編集ができ、年内にはAndroid版の提供も開始する予定です。

PC/iPad版でおなじみのレイヤーやマスキング、AIを活用した生成機能などがスマートフォンでも利用可能に。UIはタッチ操作に最適化されており、外出先でも直感的に操作できます。基本機能は無料で提供されており、より高度な機能を使用するにはCreative Cloudの既存プラン、または新登場の「Photoshop Mobile & Web」プラン(月額1,300円/年額11,000円)への加入が必要です。既存のPhotoshop有料プランのユーザーは追加料金なしでiPhone版・ウェブ版のPhotoshopを利用できるため、これまでのワークフローにシームレスに統合できます。
各機能の詳細についてはすでにレビューや解説がたくさん存在するので、本記事ではUI/UXデザインの視点から、本ツールの特性と広がる可能性にフォーカスしていきます。
モバイル最適化で「Photoshop」を再構築
本ツールリリースにおける注目すべきポイントのひとつは、単に「機能を削ぎ落としたモバイル版」ではなく、代表的な機能を「モバイルに最適化して移植」というアプローチをアドビが選んでいる点です。

これまでもPhotoshop ExpressやFixなどの関連アプリは存在しましたが、iPhone版Photoshopは、明確に本家のPhotoshopをベースに設計された初のアプリ。モバイルUI設計における「限られた画面で、いかに複雑なワークフローを自然に成立させるか」というモバイルデザインの永遠の課題に対するアプローチでもあります。
iPhone版PhotoshopのUI/UX面の注目ポイント
モバイル用にUIを再構築したレイアウト設計
デスクトップ版では画面全体に展開されていたツールパネルやバーですが、iPhone版では階層的に整理し直れており、少ないタップ数で必要な機能に到達できるよう設計されています。iOSインターフェースとの親和性も高く、操作に迷いづらい構成です。
複雑な機能を持つアプリでも、ユーザーが迷わず使い続けられるように導線を工夫することは、モバイルUXの基本です。今回の設計は、「機能の豊富さ」と「操作のしやすさ」という相反しがちな要素のバランスを丁寧に考えた好例と言えるかもしれません。
タッチインターフェースの効率的再構築
限られた画面サイズに対応するため、iPhone版ではタッチインターフェースが再設計されています。iPad版のジェスチャーシステムとは異なり、iPhone版ではより直感的かつシンプルなタッチ操作に焦点を当てています。
- マルチタッチによるズームやパン操作
- 指の接触面積に配慮したUI要素の配置
- 作業状況に応じて表示が変わるツールバー(コンテキストアウェアUI)
これらは「Fittsの法則」や「親指ゾーン」といった人間工学的視点にもとづいた設計で、限られた画面サイズでも快適に操作できるよう配慮されています。

iPadのように広い画面で両手操作を前提とした複雑な操作体系とは異なり、立ったままや移動中など、ライトな利用シーンにも配慮された設計がiPhone版の特徴です。すべてを片手で完結させる想定ではありませんが、タッチ操作の負荷を軽減し、最小限の動作で目的にたどり着ける導線が整えられています。これらはマウスとキーボードに依存したデスクトップ版の操作体系を再考した結果ではないでしょうか。
無料でも使える?課金すると何が変わる?
App Storeから無料でダウンロードでき、基本的な編集機能はそのまま使うことができます。ただし、より高度な編集機能を使いたい場合は、有料プランへのアップグレードが必要です。すでにAdobe Photoshopの有料プランを契約しているユーザーであれば、追加料金なしでiPhone版も利用可能です(Web版と同様の扱いです)。
さらに今回、「iPhone版Photoshop」の登場にあわせて、「Adobe Photoshop モバイル版 & Web版プラン」という新しいサブスクリプションも登場しました。このプランに加入することで、iPhone版のプレミアム機能に加え、Web版やiPad版のPhotoshopも使えるようになります。
無料版でできること
- 基本編集機能:正確な選択ツール、無制限のレイヤーとマスクなど、Photoshopのコア機能を使用可能。
- 直感的な操作:タップ選択ツールでオブジェクト選択・削除・再配色・背景変更が簡単にできる。
- 修正ツール:スポット修復ブラシで不要な部分をすばやく除去。
- AI機能:生成塗りつぶし・生成拡張など、AIによる効率的な編集が可能。
- 他アプリとの連携:Adobe ExpressやFrescoなど、PSD対応アプリとシームレスに連携。
- Lightroomとの連携:Lightroom写真をPhotoshopで編集→再びLightroomへ戻すことが可能。
- 高品質編集:非破壊編集・フル解像度での作業が可能。
- 素材も充実:Adobe Stockの無料アセットを活用できる。
基本的な画像編集は無料でも問題なくこなせます。生成AIを試したい人や、簡単な作業には十分な機能群です。
有料プランで解放されるプレミアム機能

Web版の機能
- iPhone版と自動同期:どこでも作業を再開できる
- Adobe Camera Raw対応:高度な画像補正が可能
- 生成AI機能:類似画像の生成や参照画像機能でアイデア出しを効率化
モバイル版プレミアム機能
- 高度な修正ツール:削除ツール、コピースタンプ、コンテンツに応じた塗りつぶしで精密な修正が可能。
- 選択ツールの強化:オブジェクト選択や自動選択で特定部分だけを編集。
- デザイン性向上:高度な描画モードやカラーエフェクトで独自のスタイル表現。
- フォントの自由度:20,000以上のAdobe Fonts + 自分のフォントも利用可能。
- 書き出しオプションの拡充:PSD、TIF、JPG、PNGなど多形式に対応。印刷品質や圧縮も細かく調整可能。

Adobe Firefly(生成AI)を搭載
- 生成塗りつぶし/拡張:非破壊で画像の追加・拡張が可能。
- テキストから画像生成:アイデアからアセット制作が一気通貫で可能に。
- 商用利用OK:Adobe Fireflyは安心してビジネス用途に使用可能。