創業期から振り返るクリエイティブの歴史

創業期から振り返るクリエイティブの歴史
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 本連載では、Sansan株式会社でクリエイティブ職に就く40名以上の社員が参加するプロジェクト「Juice」に所属するメンバーが、コーポレートブランディングやプロダクトデザイン、マーケティングなど、実際の取り組みを例に、「クリエイティブ」への向き合いかたを考えていきます。初回となる今回は、コーポレートブランディングについてお伝えしていきます。担当するのは、Sansan株式会社でブランドエディターを務める小池真之介さんです。

 企業の事業成長に必要な要素として「クリエイティブ」「ブランディング」「デザイン」といった言葉は、これまでも挙げられ続けてきました。2010年代の後半ごろから「デザイン思考」という言葉をタイトルに含んだ出版物も多く見かけるようになり、2018年に経済産業省と特許庁が「『デザイン経営』宣言」と題した報告書も発表しました。そういった背景もあってか、インハウスにクリエイティブ組織を置く企業、制作経験者を雇用する企業は増えているように感じます。

 Sansanは、事業展開や従業員数の増加に合わせ、クリエイティブ職に就くメンバーを増員し続けています。何かをつくるとき、場所や持っている想いが離れている人と一緒につくる場合と、すぐ隣の席にいて同じ想いを持っている人とつくる場合では、最終的なアウトプットのクオリティーに差が出ると、私たちは考えています。最後の最後まで試行錯誤を重ねて、最高のクオリティーを追求する。そのために増員を重ね、現在は40名以上がインハウスのクリエイターとして働いています。

Sansanのクリエイティブは、いつ生まれたのか

 「スタートアップになぜクリエイティブが重要なのか」。これが今回のお題です。しかし、いざキーボードに向かってみたものの、なかなか原稿が書き進みません。

 「クリエイティブの重要性」は、これまでも多くの有識者の方々によって語られているテーマです。それについて、私が改めて記事を書くことで読者の皆さんにとって何か新しい有益なことを伝えられるのだろうか。そこに何か違和感のようなものを感じたからなのかもしれません。そこで、Sansanでインハウスのメンバーとして働く私だからこそ伝えられることを探すために、これまでの自社におけるクリエイティブの存在を振り返るところから、このテーマを考えてみます。

 私はSansanが創業10周年を迎えた2017年に入社しました。その当時Sansanには、すでにさまざまなクリエイティブが存在していました。しかしそれはいつから存在していたのでしょうか。これまでのSansanを振り返りながら、その存在を改めて見つめ直してみます。

全員がスーツで勤務していた創業期

 2020年のSansanでは、営業担当者を除いて、ほとんどのメンバーが自由な服装で勤務しています。しかし、創業時の2007年から2010年までは、エンジニアやバックオフィスのメンバーを含めて全社員がスーツで勤務していました。これは名刺をデータ化し、そのデータをクラウド上で管理・共有できるサービスを事業として展開する企業がまだ存在しなかったころの話です。

 その当時は、企業が保有する名刺や顧客情報といった個人情報をクラウド上で管理するということが、今のように簡単に受け入れてもらえる時代ではありませんでした。企業の大切な資産である顧客情報(名刺)のデータの預け先となる企業を確認するために、サービスの契約前にオフィスを訪問される方もいらっしゃいました。そのときに来訪者が目にするのが、カジュアルで開放的な雰囲気のオフィスで若者たちが私服で働く様子だったとしたら、顧客の情報を預けるサービスを安心して契約できたでしょうか。当時のことを思えば、それは難しかったと思います。

 そこで、創業間もないベンチャー企業だった三三株式会社(当時の社名)が信頼を得るために用意したのが「ほかの企業と何ら変わらないスーツを着た社員が働く風景」でした。

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