矢野経済研究所は、国内の第5世代移動体通信サービス(5G)および関連する産業の5G採用動向を調査。MNO(Mobile Network Operator:移動体通信事業者)4社の5Gサービス契約数、および5G対応スマートフォン出荷台数を予測し、公表した。
電気通信事業者協会(TCA)によると、2019年12月期における国内携帯電話サービスの契約数は1億8,000万契約を超え、社会インフラとして広く普及している。2010年代には、第4世代移動体通信サービス(4G)が基幹技術としてアップデートを重ねながら足元を支えてきた。国内大手のMNOによるサービスに加え、大手事業者のサブブランドやMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)による「格安スマホ」は導入から数年が経過しており、消費者の選択肢の幅が広がっている。
2020年3月には、4Gの後継規格である第5世代移動体通信システム(5G)の商用サービスがMNO3社によって開始された。5G導入に合わせて、2007年以来となる新規参入事業者の登場も話題となっている。
同社が注目するのは、国内5G商用サービス契約数の動向について。同社は、MNO 4社の2020年度5Gサービス累計契約数は1,185万契約、また、2020年の5Gスマートフォンの国内出荷台数(メーカー出荷ベース)は1,333万台になると予測する。なお、同予測には新型コロナウイルスの影響は考慮されていない。サービスエリアは特定地域での展開に限られ、5Gを体感できる機会は限られるものの、5Gスマートフォンへの買い替えに合わせて5G対応のデータ無制限プランへの加入が見込まれるという。ただし、2020年度下期以降に需要の回復は期待できるが、新型コロナウイルスの影響による上期の落ち込みをカバーするには至らない見込みで、サービス初年度の契約数は当初の予測を2割強下回ることも考えられるとのこと。
2021年度には、サービスエリア拡大がさらに進むと同時に、MVNO事業者による5G商用サービスの開始も期待ができる。また、延期となった東京オリンピック・パラリンピック開催も控えており、通信事業者各社のサービス競争による盛り上がりも期待できることで、2021年度の5Gサービス契約数は3,210万契約、2021年の5Gスマートフォン国内出荷台数は2,230万台を予測する。
5Gの特性を有効活用できる主な分野は、映像配信(4K/8K、XR[VR/AR/MR]など)、コネクテッド(自動車のネット接続)、IoT(Internet of Things)、セキュリティなどの分野だという。特に映像配信系はコンシューマ向けサービスに加え、法人向けにおいて教育・研修分野など活用できる領域が広く、需要が大きいと見られる。新型コロナウイルスの影響拡大以降、スマートフォンでの動画利用はさらに根付いてきており、5G環境下でのリッチな映像体験は5Gサービス普及において充分な訴求力を持つと考えられる。
調査概要
- 調査期間:2020年1月~4月
- 調査対象:移動体通信サービス事業者(MNO、MVNOほか)、携帯電話端末メーカー、ODM・EMS企業、半導体メーカー、海外調査会社・コンサルティング企業
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談、eメールやセミナーでの取材、ならびに文献調査併用