Gaudiyとコミックスマートは、業務提携したことを発表した。
Gaudiyは、ブロックチェーンを中心としたデジタル技術を活用し、エンターテインメント業界で「新たなユーザー体験の創出」と「ビジネスモデルの構築」を推進。コミックスマートは、マンガ家の育成・支援およびマンガアプリ「GANMA!」の運営を行っている。
同提携にともない、ブロックチェーン技術と暗号技術を利用した、ユーザーがデータを所有することのできる新しい電子書籍事業を両社共同で推進。今年夏を目処に一般ユーザー向けに実証実験の開始を予定している。
現在流通している電子書籍の多くでは、データの不正コピーを防止するため、ユーザーは書籍の「データ自体」ではなく「読める権利」を購入する仕組みになっている。その権利はDRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)の仕組みによって閲覧やコピーの制限が管理されており、このDRMは電子書籍を提供する事業者(Kindleなど)ごとに独自の仕様が使われている。そのためユーザーは、事業者が指定した端末やビューアー上でしか閲覧ができず、自由に書籍データの移動や中古売買はできない。さらに事業者の都合によりサービス提供が終了した場合は閲覧もできなくなってしまうという課題があった。
また「所有ができない」ことで、これまでの紙の書籍ならではの体験、たとえば、買った本を売買する、友人と回し読みをする、コレクションをする、作者からサインを入れてもらったマンガを記念に保管しておく、など、「紙の本を所有すること」で生まれていた体験は薄れているという。
両社は今回の業務提携で、データの不正コピーを防止しつつ「所有」を実現するため、ブロックチェーン技術を活用して書籍自体の所有権をユーザーが持てる、自律分散型の流通システムを構築・提供。これにより、ユーザーは事業者の都合に左右されずに書籍を所有・閲覧することができ、紙の本と同様に書籍を売買可能に。さらに電子書籍が2次流通市場で売買された場合でも、権利保有者(出版社、作者など)に適正な収益が還元される仕組みも実現するという。
今回の「データ所有型電子書籍」では、“読むこと”を超えた新たな電子書籍体験の実現にも取り組んでいく。具体的には、NFT(Non-Fungible-Token:Ethereum上で発行されるトークンの規格であるERC721をはじめとした代替不可能性を持つトークン)として唯一無二のかたちで個々の書籍を発行することで、「電子書籍内のコンテンツにのみ作者のサインをつける」「初版で購入した人限定の書籍を販売する」「本編の内容を販売後に追加・変更していく」など、新たな体験を実現していくという。
今回の所有できる電子書籍では、所有者がより自由に書籍の売買や管理を行えるように、パブリック・ブロックチェーンであるEthereum(イーサリアム:散型のアプリケーション<DApps>を構築できるブロックチェーンプラットフォーム)を利用。Ethereum上で発行されるNFTを利用して電子書籍の所有権を管理することで、販売者やプラットフォーマーの影響を受けることなく、世界中のマーケットで自由に売買を行うことができるという。また、個別の端末へデータをダウンロードする際に、購入したユーザーが保有する秘密鍵で暗号化を行うことで、「データの所有」と「不正コピーの防止」を同時に実現する仕組みを実現している。
両社はすでに共同で、新しい理論を用いたNFTのオークションなど、ブロックチェーン技術を活用した取組みを実施。今回の提携はその結果を受けてさらに連携を強固にしていくための提携であり、Gaudiyの持つ技術力とコミックスマートが持つコンテンツ力を武器に、共同で開発・事業化に取り組んでいくという。