NTTデータと阪神コンテンツリンクら、脳科学とAIで音楽トレンドを可視化 ヒットソング予測に成功

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2020/09/08 07:00

 NTTデータ、NTTデータ経営研究所と阪神コンテンツリンクは、NTTデータの人間の脳活動を推定する技術NeuroAI(コンテンツ視聴時の視聴者の脳活動予測し、その脳活動からコンテンツ視聴により誘起される行動‧広告視聴データなどを推定する技術)と、阪神コンテンツリンクのBillboard JAPANの総合ソングチャートHOT 100のデータを組み合わせた共同研究を2019年9月から実施した。2016年12月から2020年5月までにチャートインした2,185曲を対象に、楽曲を聴いた際の推定脳活動・音色の特徴、歌詞、コード進行や過去のチャート情報などの楽曲特徴を利用し研究を行った結果、次の技術開発に成功した。

  1. 楽曲の脳情報化による新たな特徴の獲得(脳情報化された楽曲特徴の類似性が評価可能に)
  2. ヒットソングの特徴の可視化(「ヒットの要因」を脳情報や歌詞・コード進行などの楽曲特徴から把握)
  3. 未来の音楽トレンド予測(どんな楽曲がトレンドとなるのか4ヵ月程度先まで予測)

 これにより、どのような特徴を備えた楽曲がトレンドとなっているのか、そして今後どうなるのかの定量的な評価が可能となる。

 3社は今後、所属アーティストの躍進を目指すレコード会社などに向け、アーティストの発掘・育成やマーケティングの支援、そしてストリーミング事業社などに向けたチャートデータや脳情報を基にしたプレイリストの制作支援を行うなど、新たなサービスのトライアル提供を開始する。

 阪神コンテンツリンクは、日本でビルボード‧ブランドのマスター‧ライセンスを持ち、この多様化した音楽市場の実態を多角的に捉えた「ストリーミング」や「ダウンロード」、「CDセールス」など8種類の指標を組み合わせた総合楽曲チャート「Billboard JAPAN HOT100」を構成する多様なデータを保有。一方、NTTデータグループでは、脳情報通信技術「NeuroAI」の研究‧事業開発に取り組み、動画広告の分野では、広告効果の予測が既存の機械学習に優越することを示すなどの成果を上げている。

 そこで、3社は音楽に対する人間の反応を科学的に把握するために「楽曲チャートデータ」と「脳情報通信技術」を融合させる共同研究開発プロジェクトを2019年9月から行った。

 同プロジェクトの研究成果は、次のとおり。

楽曲の脳情報化による新たな特徴の獲得

 NeuroAIは、映像‧音声から人間の脳活動を推定する技術。今回、同技術を音楽に適用することにより、音楽ジャンルの情報や音声信号処理によらない新たな「楽曲特徴」を定量化。また、脳情報に含まれる、人間が感じる音楽への潜在的かつ言語化不可能な反応を利用することで、楽曲トレンドを反映したCMタイアップソングの提案や、「今までは聴かなかったようなジャンルから好きになれる楽曲との出会いを提供する」など新たなアプローチによるプレイリストの作成提案などが期待される。

ヒットソングの特徴(脳情報‧音質特徴‧歌詞‧コード進行)の可視化

 週単位の楽曲トレンドを定量的に把握するため、楽曲特徴(脳情報・歌詞特徴・コード進行特徴)およびアーティストの前週のチャートデータから、チャートポイントを説明する「チャートモデル」を構築した。過去のチャート情報を加味しているため、アーティスト知名度などの影響をある程度差し引いたうえで、どのような楽曲特徴が支持されているのかを把握できることが期待される。

 例として、Billboard JAPAN HOT 100の2020年上半期チャートを対象とし、実際のランキングと「楽曲特徴のみ」のモデルで再構築したランキングでは、Ocial髭男dism、LiSA、菅田将暉などに加え、wacci、ヨルシカ、iriといった次世代アーティストたちもランクインする、新旧の楽曲が混交するランキングとなっており、楽曲特徴によるトレンドを把握する可能性が見出された。

未来の音楽トレンド予測

 週単位で、どのような楽曲特徴(前週のチャートデータ含む)を持つ曲が上位にランクインするかを定量的に表したこのモデルの時系列変化を「トレンドの変化」と捉え、過去の変化パターンから未来にどんな楽曲特徴が支持されるのかを予測することを試みた。

 実際のチャートデータだけではなく、「急に聴かれるようになった」楽曲について指標化したデータ(急上昇トレンド指標)を対象に新たなチャートモデルをつくり、時系列変化を予測。その結果、全データの90%を利用し(2016/12/5-2020/3/16)その変化パターンを学習させたが、2020/3/23以降の未学習に仮設定したデータにおいても予測精度が維持できていたという。今回対象としたデータのなかでは最新の2020/7/20週のチャートデータに関しても、YOASOBI、ヨルシカ、Rin音、Novelbrightなどによる楽曲の順位上昇を予測することができた。

 今後は研究成果に基づき、レコード会社、音楽出版社、マネジメント、広告代理店などに向けた、新たなサービスのトライアル提供を開始する。また、NTTデータおよびNTTデータ経営研究所では音楽にとどまらず、今回の手法を動画広告‧テレビ/ネット番組など多様なメディアに適用し、脳情報化とモデル作成によるコンテンツ最適化サービスを提供していく考えとのこと。