本田技研工業(以下、Honda)は、同社の先端科学技術の研究を担う、ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン(以下、HRI-JP)が開発した、聴覚障がい者と健聴者の双方向コミュニケーションをサポートするシステム「ホンダ・コミュニケーション・アシスタンス・システム(以下、Honda CAシステム)」の社内利用を2020年9月から本格的に開始した。
同システムは、Hondaの基本理念である「人間尊重」を背景に、2017年より開発プロジェクトがスタート。開発のきっかけは、現場における聴覚障がいのある従業員とのコミュニケーションだったという。聴覚障がいのある従業員と健聴者との主なコミュニケーション手段は筆談となるが、会議の場などリアルタイムに双方向でのコミュニケーションが求められるシーンでは、意思疎通の正確性、スピードなど多くの課題を抱えていた。現場での課題を聞いたHRI-JPの技術者が、Hondaの持てる技術を活かし、聴覚障がい者と健聴者のコミュニケーションを円滑にしようと立ち上がったことで、同システム開発プロジェクトが始動した。
開発においては、HRI-JPがホンダ太陽、ホンダR&D太陽と共同開発。2020年9月より、Hondaグループ内事業所において本格利用を開始している。
システム構成
同システムは、同社独自のAI音声認識技術を活用し、発話内容をリアルタイムかつ高い正確性でテキスト表示するとともに、聴覚障がい者がすぐに意見を提示できるようにした、コミュニケーションシステム。マイク、音声認識サーバー、テキスト配信PC、テキスト表示用タブレット・スマートフォンなどで構成される。発言者がマイクに向かって発言すると、AI音声認識システムが発話内容をテキストに変換、テキスト配信PCを通じてタブレットやスマートフォンにテキスト表示する。
システム特徴
リアルタイムで正確性の高い音声認識
- 同社独自の技術として、スピード重視型、正確性重視型のふたつの音声認識エンジンを使用し、リアルタイム表示と正確性の高いテキスト変換を両立する。
- 発話と同時に自動的に音声認識を開始。発話ボタンや、音声認識を開始するためのウェイクアップワードは不要。
- 同社の社内業務を考慮したチューニングにより、社内専門用語も高い正確性で変換可能。
聴覚障がい者向け双方向コミュニケーションインターフェース
- 音声認識に加え、キーボード入力や手書き入力でも容易に発言可能。入力開始と同時に画面色が変わり、発言の意志を表すなど、聴覚障がい者が議論の輪に入りやすい工夫を実装。
- ひとつの画面に全員の発言が表示され、会議の流れの把握が容易に。
オンライン会議に対応
- 在宅勤務時にも打ち合わせができるよう、オンライン会議に対応。