矢野経済研究所は、国内の動画コンテンツビジネス市場を調査し、現況、主要セグメント別の市場動向、将来展望を明らかにした。
同調査における動画コンテンツビジネスとは、次の主要5市場を対象とし、総市場規模は①~⑤を合算し、算出している。
- 動画制作サービス
- 動画編集ソフト
- 動画配信プラットフォーム
- ライブ配信アプリ
- アニメ制作
なお、主要5市場の定義は次のとおり。
- 動画制作サービス:企業が社内外で活用する商品紹介動画やセミナー動画などBtoB向けの動画制作サービス
- 動画編集ソフト:コンピューター上でデジタルビデオ・動画を編集するアプリケーション
- 動画配信プラットフォーム:多数のユーザーが動画ファイルを視聴可能とする有料の法人向け動画配信プラットフォーム(無料の動画配信プラットフォームはここでは含まない)
- ライブ配信アプリ:ライブストリーミングによるインターネット上でのリアルタイムでの動画配信サービス
- アニメ制作:アニメ制作に関わる業務をさし、アニメの映像制作に加え、自社コンテンツを保有する場合のライセンス収入なども含む。
市場に含まれる商品・サービス
動画制作サービス、動画編集ソフト、動画配信プラットフォーム、ライブ配信アプリ、アニメ制作
市場概況
2021年度の動画コンテンツビジネス総市場規模(主要5市場計)は、事業者売上高ベースで前年度比108.4%の7,500億円と推計した。近年の好調要因は、スマートフォンやタブレットの普及により、場所を問わず動画を視聴できるようになり、利便性が飛躍的に向上している点が挙げられる。
なかでも2021年度の拡大要因は、動画制作サービスやアニメ制作において、多くの制作会社がテレワークの仕組みを構築したことで、通常通りの制作環境を取り戻したことである。コロナ禍で停滞・遅延していた制作活動が回復したことで、需要が活発化した。
また、動画制作サービスと同様に近年プラス成長を維持している動画編集ソフトでは、小学生から大学生など学習者向けの動画編集ソフトが人気となり、クリエイターを目指す若者や教育用コンテンツにおける動画編集需要が顕在化した。
注目トピック
動画配信プラットフォーム市場は教育系が好調
動画配信プラットフォームは、制作した動画ファイルを多数のユーザーが閲覧できるようにする有料の法人向け動画配信プラットフォームを指す。動画配信プラットフォームは販売促進や教育などを目的とした社内外とのコンテンツ共有や、動画販売サイトの構築などに利用するために導入するケースが多い。プラットフォーム上で管理する動画は指定のウェブページに埋め込んで公開できるほか、視聴者へのアクセス制限を設けることも可能である。
2021年度の動画配信プラットフォーム市場規模は、前年度比108.2%の530億円と推計した。企業のなかには、商品・サービスの購入者、登録会員、自社の社員に限定して動画配信をする動きもあり、有料動画配信サービスのニーズは年々拡大している。さまざまな業界からの需要が増えているなか、2021年度は教育業界からの引き合いが増加した。具体的にはe-ラーニング目的での学習サイトとの連携や社内研修など、教育需要が高まっている。
将来展望
2022年度の動画コンテンツビジネス総市場規模(主要5市場計)は、事業者売上高ベースで前年度比109.3%の8,200億円を予測する。
近年は、動画視聴の可能なSNSの増加により、SNSのタイムライン上の投稿や広告でも静止画から動画への置き換えが進んだ。また、企業もコロナ禍において対面活動が難しくなったことから、企業広告、販売促進、IR、株主総会などを目的とする動画コンテンツを活用したコミュニケーションへの投資が積極的に行われている。企業による動画コンテンツの積極的な活用により、動画コンテンツ制作においては競争が激化している。こうしたなか、高品質かつ適正価格のサービスを提供することが、動画制作サービス事業者に求められていくと考察している。
調査概要
- 調査期間:2022年3月~5月
- 調査対象:動画コンテンツビジネス参入企業、その他関連企業、関連団体など
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailなどによるヒアリング調査および文献調査併用