サイバーエージェントの官公庁・自治体への DX 推進支援を行う「デジタルガバメント推進室」は、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(「GLOCOM」)のレジリエントシティ研究ラボおよびセールスフォース・ジャパンとともに、社会のデジタル化に対する人々の意識について調査を実施し、その調査結果を踏まえてさまざまな統計分析および機械学習を用いた共同調査研究を行った。
同調査発表の第1弾では、人々の社会のデジタル化に対する姿勢を「デジタル積極層」「中立層」「置き去り層」「反デジタル層」の4分類に分け調査研究を行う「意識別クラスター分析編」を、第2弾では、社会のデジタル化における「全体分析編」を紹介する。
今回の第1弾では、「意識別クラスター分析編」として各層がどのような暮らしへの価値観を持っているかなどを分析し明らかにした。
同調査研究の目的と概要
調査研究は、デジタル社会に対する人々の考え方やイメージ、またどのような生活の価値観がデジタル技術でサポートされてほしいかというニーズの把握を目的として、インターネット調査による結果をもとに、さまざまな統計分析および機械学習を用いて回答傾向の分析を行いました。
意識別クラスターとして、デジタル化の進展に対する人々の姿勢を「デジタル積極層」「中立層」「置き去り層」「反デジタル層」の4つの層(クラスター)に分類し、デジタル技術に対して各層がどのようなニーズや暮らしの価値観を持っているのかについて深掘りした。
調査結果
「年齢」や「生活への満足度」がデジタル社会への意識の形成に影響を与える
社会のオンライン・デジタル化の良し悪しと関心の有無、また自身がデジタル化についていけているかどうかを尋ねた質問への回答をもとに、回答者のデジタル社会に対する意識を分析したところ、社会のデジタル化の進展に対する態度は、「デジタル積極層」38%、「中立層」34%、「置き去り層」13%、「反デジタル層」15%となった。
また、各層を性年代別にみてみると、「デジタル積極層」の割合が、男女ともに50代がもっとも少なく、50代を底辺にU字カーブを描いていることがわかった。
「置き去り層」においてもっとも多い割合である約2割を占めたのは男性80代、女性40代、女性60代、女性80代。また、「反デジタル層」においてもっとも多い割合である2割を超えたのは女性50代だった。
社会のデジタル化への意識形成に影響を与えるのは、「年齢」「居住地域」「生活への満足度」「1日の活動時間」といった、利用者の属性や日常生活に密着した項目であった。
加えて「居住地域」や「職業」「世帯年収」といった、利用者の属性に関連した項目がデジタル化への意識形成に影響を与えている。「行政オンラインサービスの利用意向や認知度」も影響を与える項目の上位に入っており、社会全体のデジタル化を考えるうえで行政分野が重要な役割のひとつを担っていることが判明した。
加えて、毎日の「生活への満足度」もデジタル化への意識に影響を与えている。満足度が高いほど「デジタル積極層」の占める割合が高くなり、満足度が低いほど「反デジタル層」の占める割合が高くなることが分析結果からもうかがえる。
「反デジタル層」においては、1日に使える自由時間が「ほとんどない」と回答する人がほかの層の人々よりも多い傾向にあったため、生活の満足度や日常生活の時間の使い方の違いは、「誰1人取り残されない」デジタル社会の実現において考慮すべき観点だと考えられる。
行政のオンラインサービス継続利用やサポート体制をいかに充実できるかが、「誰一人取り残されない」デジタル社会実現に重要
デジタル社会への意識形成に影響を与える項目のひとつである「行政のオンラインサービスの認知度」について各層の回答を見てみると、「使ったことがある」「使ってみたがその後使わなくなった」と回答した人に占める「デジタル積極層」の割合が5割を超えた。
「使ってみようと思ったが分かりにくくて使えなかった」「オンラインでどのような行政サービスを提供しているか知らない」と回答した人では、「置き去り層」の占める割合が約2割を占めた。
サービス提供側である行政がオンラインサービスを十分に提供していると思っていても、利用者にとって“継続的に使えるサービス”として認識されていなければならない。
どの点が充実・改善されれば使いたいと思うかという質問に対して、「デジタル積極層」の占める割合が高かった回答項目は「デザイン・操作性」だった。
「置き去り層」の割合がもっとも高かった改善点は、「分からないことがあった場合のサポート体制」。2021年に実施した「デジタルガバメントに関するニーズ調査」でも、オンライン手続きを使わず市役所の窓口に行く理由として「何か分からないことがあった時に聞けるから」と回答した人が多かった。「置き去り層」を置き去りのままにしないためにも、オンラインサービスの拡充を進める際には、いかにオンライン上で“気軽に聞ける環境”や“サポート体制が万全であるという安心感”を醸成できるかが重要だと考えられる。
民間オンラインサービスと行政オンラインサービスに対する人々の意識や態度はデジタル積極層・消極層によって異なる
民間のオンラインサービスを日ごろよく使う理由をたずねたところ、「デジタル積極層」の割合がもっとも高かった回答項目は「新しいサービスを使うのが好きだから」であり、「置き去り層」の割合がもっとも高かったのは「周りの人が使っているから」だった。
行政のオンラインサービスを使うとしたらどのような理由であるかの質問において、「デジタル積極層」の割合がもっとも高くなった回答項目は「新しいサービスを使うのが好きだから」。民間のオンラインサービスを日ごろよく使う理由においても同じ傾向だった。
一方で、同質問における「置き去り層」の割合がもっとも高くなった回答項目は「困った時に丁寧にサポートしてくれるなら使いたい」となった。
先述の行政オンラインサービスの改善点においても「サポート体制」が挙げられていたように、「聞きたいときに気軽に聞けない」ことが、「置き去り層」にとってデジタルサービスに「ついていけない」と考える理由のひとつだと考えられる。
「反デジタル層」は、「デジタルサービスはほとんど使わない」と回答した人の約65%を占めた。さらに、「反デジタル層」の回答を見てみると、そのなかでも利用しているデジタルサービスは、「ニュース」「地図サイト」や「メッセージサービス」「オンラインショッピング」などが目立った。
理想の暮らしはデジタル積極層と消極層で違い
理想の生活についてたずねたところ、「デジタル積極層」の割合が高かった回答項目は「祭りやイベントに触れる暮らし」「ワークライフバランス」、「置き去り層」の割合が高かったのは「地域の人とつながる暮らし」「医療・介護サービスへのアクセスがしっかりしている暮らし」、「反デジタル層」の割合が高かったのは「家族みんなが幸せな暮らし」となった。
調査概要
インターネットパネル調査
- 調査主体:サイバーエージェント、セールスフォース・ジャパン、国際大学GLOCOM
- 調査委託先:マクロミル
- 調査時期:2022年6月24日~6月27日
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 調査対象:全国15歳~89歳 4,128人(マクロミルのパネル30,875人を対象として、全国15歳~89歳の4,128人を人口構成比に基づく割当法により抽出)