矢野経済研究所は、国内のVTuber市場を調査し、4領域のセグメント別動向、参入企業の動向、VTuberの将来展望を明らかにした。
市場概況
アニメルックなキャラクター(アバター)で動画を投稿するVTuberは、2016年の「キズナアイ」の登場によって始まった新興の表現手法。新型コロナウイルス感染拡大の影響で行動制限がなされたことで、自宅における動画視聴需要(巣ごもり需要)が高まり、VTuberはその知名度と人気が急拡大した。2022年度のVTuber市場は、VTuber事務所を運営する企業の当該事業売上高ベースで前年度比167.7%の520億円に拡大した。
セグメント別に内訳をみると、グッズが267億円(構成比51.3%)と過半を占め、ライブストリーミングは135億円(同26.0%)、BtoBが78億円(同15.0%)、イベントは40億円(同7.7%)と続いた。グッズ領域は同時にもっとも成長率が高い結果となった。伸び率は落ち着いてきているものの、VTuber市場は成長を続けており、2023年度の同市場は同153.8%の800億円になる見込みである。
VTuber市場と同規模のオタク・サブカルチャーでは、「同人誌」の800億円(2021年度、小売金額ベース)や「トレーディングカードゲーム」の792億円(2021年度、メーカー出荷金額ベース)があり、コンテンツ産業においてすでにこれらと比肩する地位を占めるに至っている。
注目トピック
IP・インフルエンサーのふたつの面をもつVTuber
VTuberは、その成り立ちからIPとインフルエンサーのふたつの特性をもち、この点がYouTuberやアニメ声優などほかのコンテンツとの最たる違いである。
VTuberはアニメルックなキャラクター(アバター)で活動しているため、そのキャラクターデザインを用いたグッズ販売のほか、ゲームやアニメのキャラクターとしての作品出演などのIPライセンスビジネスの展開が見られる。
また、VTuberは純粋なアニメキャラクターではなく、演者(中の人)がキャラクター設定に基づいたロールプレイを行いながら、視聴者と生の掛け合いを行ったり、演者本人の身近な出来事について語るなど、演者のオリジナリティが反映されたキャラクターをかたちづくっていくという特性がある。そのため、アニメキャラクターのような魅力的な見た目を備えつつも、その人らしい「生の声」として情報を発信するインフルエンサーとして、企業とのタイアップ広告などでの活躍も期待される。
将来展望
2022年以降、VTuber事務所を運営する企業が相次いで東京証券取引所グロース市場に上場するなど、VTuberは新興コンテンツとしての地位を確立してきている。
また、VTuberの人気は海外にも広がっており、大手事務所を中心に海外ファンの獲得を進めているほか、海外でもVTuber事務所設立の動きが見られる。
さらに、VTuberはアニメルックなアバターで活動し、デジタル世界でのインフルエンサーとしての側面があることから、メタバースとの親和性も期待されており、運営企業による投資も活発化している。
調査概要
- 調査期間:2023年2月~6月
- 調査対象:VTuberをマネジメントする事務所/プロジェクトを運営する企業など
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、アンケート調査、電話による調査、ならびに文献調査併用