キャリアタイプ別に越境ポイントを解説 越境できない原因は「美意識」!?

キャリアタイプ別に越境ポイントを解説 越境できない原因は「美意識」!?
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 本連載のテーマは「デザイナーの越境」。Faber Companyのデザイナー・北林さんに、デザイナーが自身の領域を越境して活躍するためにはどうしたらいいのか、体験談を交えながらお伝えいただきます。初回では、デザイナーのタイプ別越境ポイントやそれができない原因を探っていきます。

 はじめまして、デザイナーの北林です。ベンチャー企業でインハウスデザイナーをやっています。今回の連載では、近年よく聞く「デザイナーの越境」について、若手デザイナーならではのリアルな視点から掘り下げていこうと思います!また、今回は現職Faber Companyの上司の玉飼にも全面協力してもらいました。「越境ってよく耳にするけど、実際にどうすればいいの?」「自分は越境できていない気がして将来が不安」と感じている、若手デザイナーのみなさんと一緒に考えていければと思っています。

今回の登場人物

北林:28歳の現役インハウスデザイナー。早大卒。最近の楽しみは料理とZoom飲み。作業机の下にボトルワインを並べ始めた(業務中は飲んでいないですよ!)。デザイナーなのにパス抜きが苦手。

師匠(玉飼):北林の上司でありUXデザインの師匠。京大卒、リクルート出身。ある時はUX専門家、ある時はコーポレート本部長。生態は謎に包まれている。主な著書は『Web制作者のためのUXデザインをはじめる本』。

越境について軽くおさらい

 越境とは境界線や国境を超えること。転じてデザイナー業界では、「本来の領域(デザイン)を横断すること」と捉えられています。

 越境の目的は、ビジネス×エンジニア×デザインが一丸となって問題を解決し、世の中をさらによくしていくこと。なぜ越境という言葉が叫ばれるようになったかというと、その背景には、UXという概念の登場、デザイン思考の世界的流行などによるデザイナーの社会的認知度向上があると思っています。さらに近年では、2017年の特許庁による『「デザイン経営」宣言』の発表をきっかけに、経営判断に関わるデザイナーのポジションも増えはじめ、日本のデザイナーの市場価値も徐々に上がってきています(平均年収も!)。自分たちのキャリアや人生にかかわる話なので、どんな立場であっても他人ごとではいられないですよね。最近は新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、生き抜くためのキャリアを真剣に考えるタイミングなのかもしれません。

 とはいえ、いざ越境しよう!となっても、目の前の問題にいっぱいいっぱいになってしまうことが多いのではないでしょうか。

  • そもそもデザイナーになれているのか、自信がない……。
  • ディレクターが機能しない……。
  • エンジニアの言っていることがさっぱりわからない……。
  • ビジネス側の無茶振りがきつい……。

 不満が増えると、「自虐・諦め・愚痴」モードに転じるデザイナーも多いかもしれません。そしてそれがアウトプットにも反映されていきます(著者の実体験による)。

  • このご時世、こんな自分でも仕事がもらえているだけありがたい……と自虐モードに。
  • そもそも協力しなくても、スキルさえあれば仕事はあるし……と諦めモードに。
  • 気の合う仲間と傷の舐め合い……と愚痴モードに。

 あまりネガティブに陥ると、自分の仕事すら手につかなくなっていきます。

 こんなとき、ほかのデザイナーはどうやって切り抜けているのでしょうか。周りの若手デザイナーたちに話を聞いたところ、どうやら越境するためには「4つのステージ(壁)」を超える必要があるのでは?ということがわかりました。順を追って見ていきたいと思います。

越境デザイナー4タイプの性格分析

 それでは、それぞれの壁を超えて進化したデザイナーたちの性格を詳しく見ていきましょう。この4タイプは、北林と師匠がこれまで出会ったデザイナーを大きく4つに分類したものです。

アート志向デザイナー〜寝ても覚めてもデザイン。デザインを愛しデザインに愛される天才~

  • グラフィカルな表現が得意
  • 寝ても覚めてもデザインのことを考えられる
  • 常にインプットして引き出しを増やしていく
  • 見た目が単調なデザインがあまり得意ではない(フォーム作成など)
  • 論理的なものに対して抵抗感がある(UI設計など)

さらに越境するために:場のデザイン・マーケティングの知見・UX視点・エンジニア目線など、必要だと感じたものを積極的に取り入れていく。

エンジニア志向デザイナー〜いかなる無茶振りにも完璧に対応できる最強の実行者(スーパープレイヤー)〜

  • 論理的思考が得意
  • 自分のスキルを増やして役に立つ領域を広げていくことが好き
  • 優秀な技術屋として組織で重宝される
  • グラフィカルな表現はやや苦手
  • コミュニケーションにはあまりカロリーを割かない(人と接したくないほどではない)

さらに越境するために:マネジメントやディレクションに挑戦し、「自分の力で仲間の役に立つ」を超えた「仲間と一緒に社会の役に立つ」経験を積む。

ビジネス志向デザイナー~いつ休んでる? 高邁な理想に燃え、猪突猛進する野心家

  • コミュニケーション能力、推進力、プロデュース力が高い
  • 自分の理想を現実化していくプロセスが好き
  • 企画から実行まですべてひとりでできる
  • 理想が高く努力家で、自分にも他人にも厳しい
  • 「自分の理想」が叶えられないと周囲と衝突するリスクも

さらに越境するために:色々な人の意見をフラットに聞き、視座を高める。

無所属デザイナー〜私を縛るのは法律だけ。組織にいながらにして自由人〜

  • コミュニケーション能力、巻き込み力が高い
  • 強みを活かし弱みを補うコラボレーションが好き
  • 共感性が高く、異なる価値観を受け容れることが得意
  • 自由を好み、束縛や同調圧力があまり得意ではない
  • 面倒になると逃げ出し、ジョブホッパー的なキャリアを選択することも

さらに越境するために:自分の価値と責任を自覚し、アウトプットに重点を置く。

 皆さんはどのタイプでしたか?

 私は自分自身を「無所属デザイナー」だと考えています。現在所属している部署でプレイヤーとして動けるデザイナーは私ひとりで、職種的な意味での味方はいません。ただ、互いの価値観を尊重して支え合える仲間はビジネスチームにもエンジニアチームにもたくさんいるので“独り”ではありません。

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