まずは「社員に好きになってもらう」ところからスタート
ヤフーの公式キャラクターとして2016年に誕生した「けんさくとえんじん」。その名前は知らなくても、イラストを目にしたことのある人は多いのではないだろうか。
ヤフーはなぜこのような公式キャラクターを作ったのか。武井さんがその経緯を説明してくれた。
「以前のヤフーにはキャラクターについてのガイドラインなどもなく、サービスごとに独自のキャラクターを設定している状態でした。それらのキャラクターはユーザーに個々のサービスをイメージしてもらうには有効でしたが、ヤフー全体をイメージしてもらうことができないという課題がありました。そのため、まずYahoo! JAPANとしてのブランドやデザインを統一していこうという方針のもと、2013年に原則的に社内での独自キャラクターの使用を停止することになりました。その後、満を辞して全社で統一された『ヤフーを代表する公式キャラクター』として採用されたのが、けんさくとえんじんです」
公式キャラクターの条件としては「ヤフーらしさ」や「かわいらしさ」を備えつつも、「ITらしさ」や「企業の色」を出しすぎないように配慮したという。理由は、「ヤフーの代表であるだけでなく、将来的には国民的キャラクターになることを目指すため」だ。その結果、ヤフー色を出すのは「検索エンジン」に由来するネーミングだけにとどめ、ほどよいかわいさと親しみやすさを備えたビジュアルのけんさくとえんじんが誕生した。
けんさくとえんじんを国民的キャラクターに育てあげる第一歩として、武井さんと金田さんが所属するキャラクタープロジェクト(以下、キャラPJ)チームがまず取り組んだのは、社内向けのブランディングだ。
「そもそもヤフーを代表する公式キャラクターですから、ヤフー社員に好きになってもらえなければはじまりません。社内での露出を増やして、まず社員に好きになってもらう。そこから先は、社員の家族、さらにその知り合いなどに広めてもらうことも期待できます。のちにキャラクターグッズを対外的に展開していくことを見据えて、社内でテストマーケティングを実施するという目的もありましたが、やはりいちばんは、身近な人たちから確実にファンを作っていくことが重要だと考えました」(武井さん)
具体的には、LINEスタンプのスタンプ画像を社内チャットにおいて社員が利用できるように登録したり、社内カフェで使われているカップにキャラクターのイラストを入れたり、社内限定のグッズ販売なども実施。かなり良い反応が得られたという。
「限定販売したマグカップは、数時間で完売するほど好評で、もちろん私も自分で購入しました(笑)。キャラクタースタンプも、普段のコミュニケーションの中でごく自然に使われるようになっていますね。スタンプの種類ごとに使用回数を集計しているのですが、けんさくが『ぺこり』とおじぎをしているもっとも人気のスタンプは、これまでに約23万回使われています」(武井さん)