企業のイチ部門が独自のブランディングに注力 Sansanのデータ統括部門「DSOC」の取り組みとは

企業のイチ部門が独自のブランディングに注力 Sansanのデータ統括部門「DSOC」の取り組みとは
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 本連載では、Sansan株式会社でクリエイティブ職に就く40名以上の社員が参加するプロジェクト「Juice」に所属するメンバーが、コーポレートブランディングやプロダクトデザイン、マーケティングなど、実際の取り組みを例に、「クリエイティブ」への向き合いかたを考えていきます。第3回は、研究開発組織のブランディングについてお伝えしていきます。担当するのは、DSOCクリエイティブグループマネジャーの山脇直人さんです。

 前回の記事は、「Missionに真剣に向き合い続け、その価値をユーザーに届け続ける」プロダクトデザインについてお伝えしました。今回はSansan株式会社のデータ統括部門であるDSOC(Data Strategy & Operation Center)のブランディングをテーマにお話したいと思います。

 DSOCは、Sansanの事業の要ともいえる名刺のデータ化を担うオペレーション部門と、そのデータを研究することで、ビジネスや社会、未来へとつながる新しい可能性を生み出すR&D部門が統合した組織です。

 Sansanでは、創業当時より名刺をデータ化する専門部門を設置しています。創業初期は、オペレーターが専用システム内で名刺画像を見ながら1枚ずつ手入力していくというアナログな体制でデータ化を行っていました。その後、事業成長にともない増加する名刺枚数に対応するために独自技術の研究開発を目指し、2013年に文書画像解析のスペシャリストが専門的な研究を行うR&D(Research and Development)部門を創設。言語に依存しない独自の画像解析エンジンや機械学習を用い、名刺のデータ化を効率化・自動化する研究開発を始めました。

 ビジネスシーンにおいて、名刺を本当の意味で活用するには、高精度のデータ化が不可欠。氏名やメールアドレスなど個人情報を含む特性上、正確なデータでなければ使いものになりません。Sansan株式会社では、テクノロジーとオペレーターの人力を組み合わせることで、法人向けサービスに関しては99.9%の名刺データ化精度を担保しています。

 2016年11月、データ化部門に、別組織だったR&D部門などのメンバーが組織に加わる形で、「DSOC(Data Strategy & Operation Center)」という組織が誕生しました。

ブランディングに必要なVIを確立した理由

 なぜ、DSOCという組織でブランディングをする必要があるのか。それは、まずDSOCが何に向き合い、何を目指しているのかを、ユーザーや研究者、学生など、DSOCがさまざまな形でコミュニケーションする人たちに、わかりやすく正しく伝えるためです。その第一歩として、ブランドが持つコンセプトをビジュアルとして視覚化する、「VI(ビジュアル・アイデンティティ)」を確立しました。ここではまず、対外向けのブランディングについてお話していきたいと思います。

 Sansanが提供するプロダクトにとって要ともいえるデータ化を支える部門と、研究開発によってビジネスや社会、未来へとつながる新しい可能性を生み出すR&D部門。このふたつを擁するDSOCは、Sansanの「土台」と「先端」であると定めました。そこで、VIも「DATA」×「RESEARCH」を二軸としています。

 正確性が求められる「DATA」は、規則的な並びと直線的な動きで表現。一方、「RESEARCH」は、数列や文字列の大きさ、位置をバラバラにし曲線と組み合わせた大きな動きで、まだ見ぬ未来や、さまざまな可能性を描きました。「DATA」で構築されたものを「RESEARCH」で新しい価値につなげていくというさまを、数列や文字列が右(DATA領域)から左(RESEARCH領域)に流れる動きで、示しています。

VIに基づいたDSOCクリエイティブとその意図

 確立したVIを軸に、まずは情報発信の要であるウェブサイトのリニューアルを行いました。ビジュアルだけでなく、コンテンツ内容も「DATA」と「RESEARCH」という二軸にわけて伝えることで、DSOCの多種多様な事業を整理して伝えることを心がけました。

サイトのハンバーガーボタンをクリックするとこのページが表示される。
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 またオンラインだけでなく、オフラインのクリエイティブにもこのVIは活かされています。DSOCには、メンバーの学会発表やイベント登壇など、オフラインでもコミュニケーションが発生する場面があり、それに関連した出展ブースや発表資料、ノベルティなどのクリエイティブが必要になります。ここではステッカーのデザインを例に見ていきましょう。

 ビジュアルデザインはVIを踏襲したものですが、このステッカーは体験も重視してデザインしています。この一枚にはDSOCに関連しているさまざまなワードを散りばめています。

 ステッカーといえば、イベントなどあまりお互いを知らない者同士が交換する機会も多いのが特徴。その出会いのシーンで、DSOCの取り組みを正しくかつわかりやすく伝え、そこから会話が生まれる。そんなコミュニケーションをイメージし、体験も含めてデザインをしています。

 このようにVIが確立されているとブランディングを考えるうえでひとつの軸が定まり、そこにツールの特性を活かしたコンテンツや体験を付加することで、伝えたいメッセージを一貫させたクリエイティブを制作することができるのです。

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