デザイナーの視点がどう役立つのか ECの現場で行っているデザイン思考型ワークショップの進めかた

デザイナーの視点がどう役立つのか ECの現場で行っているデザイン思考型ワークショップの進めかた
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 デザインのなかでもECサイトにフォーカスし、ECサイトに活かせるデザインの考えかたなどをお伝えしていく本連載。解説していただくのは、ECプラットフォームShopifyをベースとしたECサイト制作・コンサルティングを行っている、non-standard worldの佐藤昭太さんです。初回となる今回は、「ECサイトの制作に活かすことができるデザイン思考型ワークショップ」がテーマです。

 こんにちは。non-standard worldの佐藤です。

 ECプラットフォームShopifyをベースとした、ヘッドレスコマースという次世代方式のECサイト制作をおもに行う会社で、アートディレクター/デザイナーをしています。

 この連載では、デザイナーの視点がECの現場でどのように役立てられるかについてお話しできればと思います。第1回目の今回は、プロジェクトの課題設定と仮説立案、そしてチームビルディングに役立つ、デザイン思考型のワークショップについてです。

形のデザインの前に、チームのデザイン

 一般に「デザイン」といえば、まだまだ形の話だと思われがちなように思います。しかし形のデザインに入る前に、プロジェクトが目指すべき方向を決めたり、チームのデザインを行うことは不可欠。そんなシーンでもデザインの視点が活かせると考えています。

 Googleが提唱するデザイン思考に基づくワークショップ「デザインスプリント」は、次のようなメリットがありECプロジェクトにおいても有効です。

デザインスプリントのメリット

  • 短時間で、課題設定から仮説立てまで効率的に行える
  • メンバーの相互理解につながる
  • 意思決定者から現場スタッフまで、同じ方向を向いたひとつのチームになる

 私たちは、ECサイト制作のプロジェクトを始めるとき、その初期段階でデザインスプリントを開催しています。全員が足並みを揃えてひとつのチームになりプロジェクトを自分ごと化することは、メンバーのモチベーション向上はもちろん、プロダクトからコミュニケーションに至るまで、すべての顧客体験に一貫性を持たせること、つまりブランディングのためにも重要だと考えています。

 では、具体的なデザインスプリントの流れについて見ていきましょう。

実践しているデザインスプリントの具体的なステップ

私たちが行うデザインスプリントは、Googleが提唱する内容をアレンジして構成しており、大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 背景理解と目標設定
  2. アイディアの発散、決定
  3. ストーリーボードの作成

 本来はこのあとにプロトタイプ作成、ユーザーテストまで続けて行うのですが、時間的な面での実施しやすさを鑑み、それらは持ち帰って後日行うケースが多いです。1〜3の工程までを全員で行うだけでも、デザインスプリントの利点は大いにあると感じています。

 次に、事前準備から1日目、2日目の詳しい流れをそれぞれ説明していきます。

事前準備

原則として2日間連続で予定を組みます。その際に事前に準備する内容は以下のとおりです。

  • ワークショップの目的の共有
  • 2日間連続で予定を組む
  • 参加メンバー(7人以下)を決める(実行に関わるコアメンバーの他にも、できるだけ多様なメンバーを集める)
  • 意思決定者と進行役を決める(進行役は意思決定者とは別の人が担当する)
  • 話を聞く専門家を決める

忙しい参加者にとって、ワークショップを行う目的を理解してもらうことはとくに重要だと考えています。

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