「デザイナーとノンデザイナー」の線引きは危険? 生涯デザイナーでいるために今できること

「デザイナーとノンデザイナー」の線引きは危険? 生涯デザイナーでいるために今できること
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 本連載のテーマは「デザイナーの越境」。Faber Companyのデザイナー・北林さんに、デザイナーが自身の領域を越境して活躍するためにはどうしたらいいのか、体験談を交えながらお伝えいただきます。第3回では総まとめとして、生涯デザイナーでいるために今できることはなにかを探っていきます。

 こんにちは、デザイナーの北林です。最終回では総まとめとして、日本でインハウス(事業会社)デザイナーが社会的評価を得ていくためにはどうすればよいか、私の上司にあたる師匠・玉飼と一緒に考えていきたいと思います。

今回の登場人物

北林:無所属デザイナー。28歳。ベンチャー企業(Faber Company)で奮闘中。現在の目標はSEO支援ツール「MIERUCA(ミエルカ)」と社内クリエイティブの品質基準を上げること。マイブームは「ダルゴナコーヒー」を自宅で作ること。

師匠(玉飼):北林の上司でありUXデザインの師匠。京大卒、リクルート出身。インターネット黎明期からWeb・UIの領域に携わる。主な著書は『Web制作者のためのUXデザインをはじめる本』。最近はデスクにバナナを常備している。(血圧を下げるため)

第一回第二回までの振り返りとポイント

  1. 社会的にデザイナーの価値が認められはじめている。
  2. 社会の要請に応じるためには、技を極めることはもちろん、スキルやマインド面での「越境」が必要になる。
  3. 事業会社、とくにベンチャー企業のデザイナーは自分で生存戦略を立てる必要がある。

 前回はデザイン文化の浸透していない組織でデザイナーが陥りがちな罠について、独断と偏見を多分に交えて解説しました。今回は冷静かつ客観的に、組織側とデザイナー側それぞれの観点を整理してみます。

 この図のように、二者の間には大きなズレがあります。この認識のズレが解消されれば、組織はデザイナーに活躍の場を提供でき、デザイナーは組織で自分の力を発揮することができるので、成果をあげやすい=出世しやすい状況になるのではないでしょうか。

師匠に聞いてみた、「右脳vs左脳の終わりなき戦い」

 ではそもそも、なぜ認識のズレが生じるのでしょうか。クリエイティブの現場でマネージャーとして多くのデザイナーと仕事をしてきた師匠に、組織とデザイナーそれぞれの問題点を指摘してもらいました。

組織側の問題

  • デザイナーの参画タイミングを下流の段階に限定してしまうことで、最良の結果にならないことも。
  • 効率を重視し、ディレクターや事業責任者とのミーティングにあまり呼ばない傾向。
  • 文化の違いから、「ちょっと変わった人」として特別扱いしてしまう。

デザイナー側の問題

  • 下流に甘んじて、上流の決まりごとに意見や意志を持つ精神を封印してしまいがち。
  • ビジネス(お金を稼ぐこと)への苦手意識が強い。
  • 特別扱いをしてほしいと思いがち。

 デザイナーにとっては、なかなか耳が痛い言葉です。

 私は四大卒ですが、社会人歴=デザイナー経験年数なので、ビジネスサイドの人と話しているとロジカルな論調に内心ビクビクします。初級レベルの英会話力でネイティブスピーカーの輪の中に入ってしまったときの気持ちに似ているかもしれません。ボキャブラリーやビジネストークの場数で圧倒的に負けている自覚があるので、「ここで自分の意見を言っても通じなそうだな……」と及び腰になってしまうことが多いのです。

 すると所属組織へのコミット意欲が下がり、ついついデザイナー同士のコミュニティに入り浸り、愚痴を言い合えることに安堵してしまうなんてことにもなりかねません。

 個人的には、ビジネスサイドやエンジニアのことを「ノンデザイナーズ」とひとくくりにするのは危険なのではないかと感じています。「私たちデザイナーと、それ以外」という線引きに慣れていくことで、彼らと向き合う機会も逃していくような気がするからです。

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