コミュニティを持続させるために必要な5つの条件とは ――クリエイターがつながりをもつ意義を考える

コミュニティを持続させるために必要な5つの条件とは ――クリエイターがつながりをもつ意義を考える
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 本連載のテーマは「FAB」とコミュニティ。紹介してくださるのは、FabCafe TokyoでCTO兼事業責任者をつとめる金岡大輝さん。FabCafeの活動を通じて、クリエイターとビジネスプロジェクトのコラボレーションのありかたを探ります。第2回のテーマは「クリエイターとサードプレイス」についてです。

FabCafeのコミュニティ

 2012年3月に東京からスタートしてFabCafeは、現在では世界12拠点に広がり、それぞれの街でクリエイターのコミュニティを形成している。

 この9年間で、共創スペースは広く世界に広がった。

 その初期に、デジタルファブリケーションマシンが使える場所として「メイカースペース」が世界各地に設置されたが、後期には行政の主導のもと、地域のコミュニティ施設として備えられることも多くなった。しかし、今もその役目を果たす場所として生き残っているスペースは少数派だ。2017年11月にアメリカ最大規模のメイカースペース「TechShop」が破産したことは、ひとつの節目だったようにも思う。

 メイカースペースの勃興と前後し、コワーキングスペースも世界中で広がった。席数を最大化させ、巨大な施設を目指すようないっときの潮流は落ち着いたように見えるが、その数はまだまだ世界で増え続けている。新型コロナウィルス感染症の流行による働きかたの変化は、その広がりを加速させた。

 メイカースペースの盛り上がりとブームの収束はいろいろな要因が考えられるが、僕はその要因の大きなファクターとして「コミュニティ」があるのではないかと考えている。

 さまざまな方がFabCafeに視察にきた際、僕がFabCafeのコミュニティについて伝えると、時折怪訝な顔をされることがある。「コミュニティというのはつまり、会員登録をしているメンバーということですか?」といった具合だ。FabCafeに会員制度はない旨を伝えると、さらに話が通じなくなる。

 なくなってしまったメイカースペースの多くは、会員の月額費を主な財源としたビジネスモデルであったと思う。そのコミュニティがシステム化された結果、手段と目的が逆転し、コミュニティが醸成されなくなってしまったのではないだろうか。

 FabCafeでもっとも大切にしているものはなにか――。そう聞かれたときには、「コミュニティ」と答えている。

 だが、「コミュニティ」という言葉は多様な意味を持っている。

 FabCafeでいうコミュニティとしては、建築、デジタルファブリケーション、ファッション、バイオテクノロジー、グラフィック、コーヒー、食、音楽などのキーワードが浮かぶが、参加者たちは会員登録をして参加しているわけではない。しかし、そこに参加しているメンバーの顔をしっかりと思い浮かべることができる。いうなれば、FabCafeに(いい意味で)たむろしてくれるクリエイター同士の緩やかなつながりとそのアクティビティが、FabCafeにおけるコミュニティだと考えている。

 そして、クリエイターにとってコミュニティに属することは、そのスキルと同じくらい大切なことだと、僕は思う。

コミュニティのプリンシパル

 コミュニティとクリエイターの関係性をしっかりと定義することは難しい。しかし、コミュニティに属していれば、自然と情報を仕入れることができたり、最新のプロジェクトに関わったり、普段の自分の行動範囲外にある新たな出会いも期待できる。そういったつながりはクリエイターにとって大きな武器となるだろう。

 一方で、コミュニティづくりには時間がかかる。9年間FabCafe Tokyoに関わり、FabCafe の中で生まれるさまざまなコミュニティをみてきたが、そこにはいくつかの条件があるように思うのだ。

1.核となる技術・思想があり、それを支えるファシリティがあること

どんなコミュニティであっても、その活動にはテーマが必要だ。それは多くの場合特定のテクノロジーであったり、技術であったりする。そして大切なのが、それを支えるファシリティがあること。FabCafeでいえばその空間やデジタルファブリケーションマシン、それを扱うテクニカルスタッフがこれに当たる。コミュニティを自ら作る場合、テクノロジーや文脈を理解していることがとても重要なのだ。

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