[#2]デザイナーがチームをデザインするために――必要なふたつの要素と基礎知識を紹介

[#2]デザイナーがチームをデザインするために――必要なふたつの要素と基礎知識を紹介
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 組織の“デザイン”、“デザイン”シンキングなど、さまざまな場面で「デザイン」という言葉が使われるようになりました。そんなUIやUX以外のデザイナーがデザインできるものに、本連載では焦点を当てていきます。解説していただくのは、アトラエでエンゲージメント解析ツール「wevox(ウィボックス)」のデザイナーとして活躍する竹田哲也さん。第2回のテーマは「チームづくり」です。

 こんにちは。アトラエでエンゲージメント解析ツール「wevox(ウィボックス)」のデザイナーをしている竹田です。今回は「“チーム”をデザインする」をテーマに、私の考えをお伝えしたいと思います。

価値提供を実現するにはチームが大事

 現代のサービス・プロダクトづくりにおいては、ひとりでできることに限界があることから、サービスの持続性確保が大きな課題であることが多いです。

 とくにデザイナーは、未来をカタチにする機会が多く、ひとりで完結するには難しいポジションです。デザイナーとしてウェブサービスやスマートフォンアプリを開発していくにはエンジニアとの共創が必要ですし、マーケターとともにランディングページを作成したり、セールスと営業資料を共創することもあります。

 アフリカにこんなことわざがあります。

「If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.」(早く行きたければ一人で進め、遠くまで行きたければみんなで進め)

 すべてをひとりで行う必要はありません。価値提供を実現する際、“チーム”がいればさまざまな難題を解決していくことができるでしょう。ただ、それがチームではなく“グループ”ではうまく力を発揮することはできません。グループとチームには大きな違いがあるのです。

 辞書をひいてみると、こんな風に書かれています。

  • グループ:共通の性質で分類した、人や物の一団。群。
  • チーム:ある目的のために協力して行動する集団。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

 「グループ」は“共通の性質”によって分類されますが、「チーム」はそうではありません。“共通した目的”と“協力して行動する”というふたつが必要になるのです。

 では、この要素を分解してみましょう。

チームの血の巡りを良くするエンゲージメント

 “協力して行動する”ために必要な要素のひとつとして、エンゲージメントがあります。

 エンゲージメントは、1990年にアメリカのボストン大学のウィリアム・カーン教授の論文で「パーソナルエンゲージメント」という言葉が使われたことがはじまりです。その後、アメリカで発展した際には「従業員エンゲージメント(エンプロイー・エンゲージメント)」という言葉になり、主に「従業員一人ひとりが組織に愛着を持っている状態」として広がっていきます。

 一方ヨーロッパでは、ユトレヒト大学のシャウ・フェリ教授らによって「ワーク・エンゲイジメント」が研究され、「仕事に対してポジティブで充実した心理状態(活力・熱意・没頭)」と定義されました。

 このようにエンゲージメントには、「ワーク・エンゲイジメント」と「従業員エンゲージメント」の2種類がありますが、どちらも「従業員と組織」や「人と人」など2者間での関係性を指しており、組織や仕事に対して自発的な貢献意欲を持ち、主体的に取り組めている状態だと言い表せるでしょう。

 下の図をご覧ください。これは、ワーク・エンゲイジメントのモデルです。

 上司や同僚のサポートおよびコーチングといった周囲との関係と、評価や育成の機会など環境による「仕事の資源」、自己効力感やレジリエンスなど個人の心理による「個人の資源」は強く関係しており、充実するほど「ワーク・エンゲイジメント」が高まり、心理的ストレスが軽減されると言われています。

 チーム1人ひとりのエンゲージメントが高まりいきいきと働くことで、アウトカムであるパフォーマンスやコミットメントが上がり、チームの血の巡りが良くなることが期待できるでしょう。

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