【最終回】ショートは年間200本!作り続けて見えてきた景色と無限の可能性――ファンを増やす極意とは

【最終回】ショートは年間200本!作り続けて見えてきた景色と無限の可能性――ファンを増やす極意とは
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 2020年ごろまで社内の従業員と外注先でYouTubeの運用を行っていた、B.LEAGUEに所属する人気プロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」は、SNSマーケティングをさらに強化し新たなファンを獲得するために、2021年ごろからMIXIのデザイン本部 動画クリエイティブ室が支援を開始。公式YouTubeチャンネルの企画立案から撮影、編集といった動画制作などを担った結果、約3年でチャンネル登録者数が約10万人増加しました。この連載では、本チャンネルで行った具体的な取り組みや撮影の運用体制、クリエイティブへの取り組みかたなどを、エンゲージメントの視点から解説。最終回となる第3回は、動画制作のコツやコンテンツを量産するための体制づくりについてお伝えします。

 はじめまして、デザイン本部で動画のディレクションを担当している福﨑です。今回は実際にYouTubeに投稿する動画制作のコツ、そしてコンテンツ量産体制のつくりかたについて紹介します。

選手の負担を最小限に抑えるための撮影体制

 前回の記事でも触れたように、選手の協力なしには魅力的なコンテンツを生み出すことはできません。しかし、プロ選手は常に練習や試合で忙しく、撮影に割ける時間も限られています。そこで私たちが工夫したのは、「2分で撮りきる撮影体制」の確立でした。

“待ち伏せ型”撮影の導入

 練習場の出入り口付近にカメラマンとスタッフがスタンバイし、選手が通りがかったときに声をかける形で撮影するスタイルを採用しました。複数人の選手を撮影した素材で1本作ることにより、選手1人あたりの拘束時間は”撮り始めから終わりまで2分で完了”させるのがポイントです。選手への負担を最小限にすることで、段々と選手たちへの”ショート動画撮影”が浸透し、快く協力してもらっています。

 またブースター(バスケットボールのファンを表す名称)やリーグ関係者にも広まったことで、千葉ジェッツに新しく入ったスタッフから「これがあの二択撮影(※)か」と撮影中に声をかけられたこともあります。

 こうして1日の撮影でショート動画7~8本分を撮影し、定期的な投稿ができています。

※「究極の二択」という定期的に作成しているショート動画のフォーマット。選手に右or左を選択してもらい、軽く話を聞く。

即時アップロードを目指す“切り抜きショート動画”の運用

 こうして撮影コストを下げた動画制作をできるようになったとはいえ、選手の貴重な練習時間を撮影で頻繁にいただくわけにはいきません。そこで新しく作ったフォーマットが「試合即出しショート」です。

 Bリーグ公式YouTubeでもすでに取り組んでいたこのフォーマットに目をつけ、試合中や試合直後に起きた印象的なプレーや面白シーンを短尺で切り抜き、その日のうちにアップする手法を私たちも取り入れました。ここで意識したポイントは次のとおりです。

「目線(切り口)」をつける

 単にプレーの切り抜きを載せるだけでなく、見せたい部分を強調するテキストや、おもしろさが伝わる演出を加えることで、視聴者が「今すぐ見たい!」と思うショート動画に仕上げています。
たとえば画像左の動画では、ダンクをしているプレーに「まさにスラダン」というキャッチコピーを付けることでマンガが好きな人にも動画が届き、結果として視聴者層を広げることができました。

 このようにひと手間工夫することで、数十万再生を超える動画を量産することができ、100万再生を超えた動画も4本生まれるなど大きな反響を得られました。このような動画を昨シーズンは30本作成しましたが、Bリーグでは年間約60試合(チャンピオンシップを除く)あるため、約半数の試合後に作成している計算になります。

少しの仕掛けでチャンネル登録者が増えるきっかけになる

 動画の再生数だけでなく、チャンネル登録者を増やすための仕組みにも着目しました。とくに効果があったのが、出演者自ら「チャンネル登録お願いします!」と呼びかけるひと言です。試合ハイライトや選手企画などの最後に入れ込むことで、実際に登録者数の伸びが変化しました。実際に顕著に数字に現れた事例を紹介します。

 画像を見ていただくと、視聴回数が少ないほうが顕著に新規登録者が増えていますが、右の画像では動画内の最後に演者が「チャンネル登録お願いします!」と呼びかけています。この動画でもコラボしている「あしざるFC」の皆さんから学んだテクニックですが、通常、チャンネル登録者数の増加は視聴回数に比例するものなので、ここまで大きく反響があったことには私たちも驚きました。