クリエイター・エコノミーのカオスマップから見る、市場を形成する3つのカテゴリーの特徴と軌跡

クリエイター・エコノミーのカオスマップから見る、市場を形成する3つのカテゴリーの特徴と軌跡
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2021/07/05 08:00

 自身の表現や作品をマネタイズすることは、クリエイターにとって究極の目標である。企業に属さずにクリエイターとして生計を立てることは、従来の枠組みでは困難だった。しかし、新しいメディアプラットフォームの登場によってエコシステムに変化がもたらされ、今では多くのクリエイターが個人の活動を通して収益を得られるようになった。アメリカの投資会社・SignalFireによると、副業を含めた個人クリエイターは世界で5,000万人を超え「クリエイター・エコノミー」の規模は拡張し続けているという。

クリエイター・エコノミーを形成する3つのカテゴリー

 一般的に「クリエイター・エコノミー」と聞くと、YouTubeなどのプラットフォームやコンテンツ制作者を想起する。しかし実際、その経済圏にいるプレーヤーはさらに多様だ。

 アーリーステージのスタートアップを支援するベンチャーキャピタル「SignalFire」が作成したクリエイター・エコノミー市場のカオスマップによると、現在は大まかに以下の3つに分類される。

クリエイター・エコノミーのカオスマップ(出典:SignalFire「SignalFire’s Creator Economy Market Map」)

クリエイター・エコノミーのカオスマップ(出典:SignalFire「SignalFire's Creator Economy Market Map」)

1. メディアプラットフォーム

YouTube、Instagram、Twitch、TikTokなどのプラットフォームや、配信コンテンツを作成するための機能・内包するサービス。

2.インフルエンサーマーケティング

クリエイターの制作活動を事業会社の広告・マーケティングに生かすためのマッチングを促すサービス。ここには、インフルエンサーマーケティングに特化したエージェンシーやCRMツールなどが含まれる。

3.クリエイターにオーディエンスが直接課金するサービス

オーディエンスが直接支援するファンディングサイトやSubstackのようなファンエンゲージメントを収益に換えるサービス、コミュニティ運営支援サービスなど。

 クリエイター・エコノミーが登場したのは2000年代後半であり、その歴史はまだ10年余りと短い。しかしこの短期間の中でもさまざまなサービスが勃興し、トレンドとなるマネタイズのモデルを作っていった。

 上記3つはそのまま昇順にクリエイター・エコノミーの進化過程を表している。次からはクリエイター・エコノミーが辿った軌跡を振り返りながら、それぞれの特徴を紹介しよう。

カテゴリー1.メディアプラットフォームの登場

 2005年に創設した動画配信プラットフォームのYouTube。翌年にはTwitterや音楽配信のSpotify、2010年からは写真共有アプリのInstagramやSnapchat、ライブストリーミングのTwitchなど、2000年代後半から新しいメディアプラットフォームが続々と登場した。

 だれもが無料で簡単に発信できるメディアツールの登場は、スマートフォンの普及と相まってメディアそのもののありかたに革新をもたらした。

 これらのプラットフォームは瞬く間に世界中で支持を得て、だれもがクリエイター/発信者になれる時代の幕開けとなった。

 プラットフォームはその後も増殖し、ショート動画配信のTikTokや音声SNSのClubhouseなどのほか、ポッドキャストのようにプラットフォームの枠を超えて展開するサービスも登場している。

 プラットフォームを介した収益化モデルとしてもっとも成功しているのは、YouTubeでコンテンツ配信をするYouTuberだろう。

 子どもの将来の夢ランキングの上位に常時入るほど、“一般的な職業”としても認知されるようになったYouTuber。現在、YouTubeの全3,100万のチャンネル中、1万人以上のチャンネル登録者を抱える専業ユーチューバーは約100万人にのぼる。

 YouTuberのマネタイズ方法は、自身の動画コンテンツに広告を掲載することで得る広告収益が主流で、ミリオネアも登場している。一方で、収益化を達成する前の条件(直近12ヵ月の総再生時間が4,000時間以上、チャンネル登録者数が1,000人以上など)を満たすことができず挫折する人も多い。また、再生回数を増やすために過激な内容をポストする迷惑系YouTuberも出現し、一部では社会問題にもなっている。

 このモデルは、プラットフォーム側の事情に左右されやすいという特徴もある。内部機能やアルゴリズムの変更、プラットフォーム自体の衰退など、さまざまな危険性をはらんでいる。のちにバイデン政権が撤回したものの、2020年にはアメリカのトランプ政権が国内のTikTok使用禁止を示唆し、衝撃が走った。

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