――まずは御社の事業概要について教えてください。
InstagramのARフィルター制作にのめりこんだことがきっかけで、AR/VRコンテンツ制作が思う存分できる環境に身を投じたいと思い、vartiqueを設立しました。
弊社はAR/VRコンテンツの制作が主な事業内容です。InstagramやSnapchatなどで使用するSNSのARフィルター制作や、ウェブブラウザで使用するWeb ARのコンテンツ制作を行っており、それらはプロモーションやブランディング、イベントといったマーケティング施策として活用いただいています。
――2021年11月に提供を開始した「One VR」にはどういった特徴があるのでしょうか。
「One VR」は企業・ブランド向けのVR(メタバース)空間の制作サービスです。ブラウザで利用できるため、アプリ不要で、PC・スマホ・VRゴーグルなどさまざまなデバイスから体験することができます。
VR空間の中で、音声会話・チャット・画面共有が可能なため、テレビ会議や動画配信だけではできなかった交流がOne VRでは可能になります。自由にカスタマイズすることもできるため、さまざまな用途で活用していただくことができると考えています。
One VRの強みは、ARコンテンツ制作で培った社内の2D、3Dコンテンツのスキルやノウハウを存分に生かすことができる点です。ARとVRを組み合わせ、たとえば洋服をVRで展示してARで試着するなど、VR空間の中で展示している商品や製品をAR上で確認することも可能です。一気通貫して最先端のコンテンツを提供することができるのは、ARとVR両方のコンテンツを制作しているからこその強みだと自負しています。
なおOne VRは、一般企業やブランドが世界にひとつだけのオリジナルのVR(メタバース)空間を保有できるという意味をこめたサービス名です。
――本サービスの開発に至った経緯について教えてください。
コロナ禍により、多くの企業が従来の形式でイベントなどを実施することが困難となりました。そこで活用されたのがオンライン会議ツールですが、できることが限られている面もあり、徐々に「もっと新しいセミナーやイベントを行いたい」というニーズを耳にする機会が増えたことがきっかけです。
VR空間での交流を実装するには開発に莫大な費用がかかったり、アプリやソフトをダウンロードする必要があったりと、クライアントが興味や関心をもっても、ユーザーが利用するまでの障壁が高いところに課題を感じていました。発展途上な部分もありますが、1クリックでVR空間にアクセスできる「One VR」はバランスのとれたサービスにできたと考えています。
――本サービスの開発にあたり工夫した部分や苦労した点はありますか?
力を入れたのは、ブラウザベースのVRでも、豊富な機能とリッチな表現が十分できるということが伝わるようなデモルームの設計や制作です。
またリアルの空間では実現が難しい演出を加えることで、VR(メタバース)空間のビジネス活用ならではのおもしろさやメリットを感じてもらえる空間づくりを意識しています。下の動画のような展示・広報のデモルームで言うと、弊社のロゴである巨大天使像が動いたり、展示会場内の噴水設置、ルネサンス期の天井壁画などです。
一方苦労したのは、スマートフォンでも、ブラウザベースのAR/VRコンテンツのようなリッチコンテンツを表示させることです。スマートフォンの性能にもよりますが、コンテンツの容量のサイズが大きくてエラーが発生してしまうこともよくあるため、3DCGの見た目はなるべく変えずに容量を圧縮したり、画像や動画のファイルサイズも極限まで圧縮しています。
また、アバター同士の音声や動画、BGM、噴水の音など、VRの空間におけるそれぞれに適切な音響設定にも苦戦しました。設定の音響パラメーターを徹底的に検証し、ひとつずつ問題を解決していくことで、エラーなどを改善していきました。
――One VRの今後の展望についてお聞かせください。
最近、メタバースは投資的な意味でクローズアップされることも多いように感じています。メタバースの「離れていても同じ空間で交流ができる」という特徴そのものにビジネス活用の大きな可能性があることを、より多くの企業やブランドに認識してもらうことができたらと考えています。そのためにも、One VRを成長させていきたいです。