「デザイナーは"アイデアを磨く存在"に」 AIとデザインのこれからをFigma Japan 川延さんが語る

「デザイナーは"アイデアを磨く存在"に」 AIとデザインのこれからをFigma Japan 川延さんが語る
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2025/03/07 08:00

 ブラウザ上でデザインを作成・編集できる米国サンフランシスコ発、ブラウザベースのデザインプラットフォーム「Figma」。2022年1月当時、日本ではほぼ無名だった同社の製品シェアを一気に拡大し、日本のデザイン界に大きな変革をもたらしたのが、Figma Japan(以下、Figma)のカントリーマネージャーを務める川延浩彰さんだ。そんな川延さんに、日本市場におけるFigmaの成長戦略や、AIの台頭によってデザイン界およびデザイナーにもたらされる変化など、業界全体のトレンドを軸に未来のクリエイティブのありかたを聞いた。

日本市場は「コミュニティ」がカギに Figmaをグロースさせた成長戦略とは

――日本市場において、Figmaは成長戦略をどのように展開していったのでしょうか。

Figmaが日本に本格的に進出したのは、私がカントリーマネージャーに就任した2022年1月からです。当時は日本法人の社員は私ひとりで、Figma製品も一部のアーリーアダプターやイノベーター以外の方に採用いただいていたものの、市場全体での認知は進んでおらず、一般の方々の認知向上が目下の課題でした。そこで、デザイナーをはじめとしたFigmaに親和性のある方々に盛り上げていただく「コミュニティ・レッド・グロース(CLG)」に注力し、コミュニティの皆さんのお力を借りて市場の認知を高めることを目指しました。

コミュニティ・レッド・グロースとは、コミュニティを活用したビジネスの成長戦略です。具体的には、プロダクトやソリューションを使ったユーザーが、ブログやSNSなどを通じて“自主的に”クチコミを拡散したり、イベント(オフ会)を通してコミュニティを活性化したりすることなどが挙げられます。

こうしたボトムアップ型の成長戦略は、日本市場においては非常に重要です。他国と比較すると、日本は新しいものを導入するスピードが比較的ゆるやか。他社やマーケットの動向、世間の認知度を踏まえて導入するかどうかを判断する側面があるためです。

――コミュニティを通じた成長戦略の具体例を教えてください。

代表的な事例のひとつは、デザインシステム構築時にFigmaを導入したケースです。サイバーエージェントさんの「Spindle(スピンドル)」や三菱電機さんの「Serendie Design System(SDS)」、「デジタル庁デザインシステム」などのデザインシステムの構築にもFigmaを使っていただいています。

デザインシステム事例
デザインシステム事例

全社的なルールを統一するプロセスにおいて、部署の垣根を越え、リアルタイムでファイルを共有・編集できるFigmaのアクセシビリティの高さがデザインシステムを作成するうえで多くの企業に評価されたと思います。

2022年1月当初、デザインシステムを構築している企業は今ほど多くありませんでしたが、ここ数年でかなり増えた実感があります。これも、コミュニティを通じた導入促進のアプローチがもたらした成果のひとつだと考えています。

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