当初活用率が低かった「Odd-AI Creation」を浸透させるために行ったこと
――セプテーニにおけるクリエイティブ×AIのお取り組みの変遷について教えてください。
小川 セプテーニの取り組みを振り返ると、2019年に広告効果の事前予測により効果の高い広告クリエイティブの選択や配信を可能にするソリューションツール「Odd-AI」を開発したことが始まりです。それを受け、2021年にディスプレイ広告案件において AIと人による効果の高いクリエイティブ制作を実現するメソッド 「Odd-AI Creation」を構築しました。現在は静止画広告に適用していますが、今年1月より動画広告への適用を拡大し、今後はLPにも幅を広げていく予定です。
事前に、通常の属人的な運用と制作プロセスによって制作されたディスプレイ広告と、「Odd-AI Creation」を通じて制作したディスプレイ広告の広告効果を比較検証した結果、CTRは約1.1倍、広告配信量が約1.5倍になるといった成果は立証できていました。ですが社内にリリースしたところ、クリエイターにほとんど使われなかったんです。
良いものは活用してもらえるだろうと短絡的に考えていた部分もあると思いますし、AIに対する不信感をぬぐい切れなかったこと、機械的なAIと人が生み出すクリエイティビティの両立に対する配慮にやや欠けていたことも、活用につながらなかった要因ではないかと考えました。そこで、まずは社内への普及活動を優先。AIを活用することで、日々関わる広告主や社内のクリエイター双方にどのようなメリットがあるのかなど、まずは社内のメンバーに意義を伝えるところから始めたんです。そこから少しずつ活用するアカウント数やクリエイターが増えてきた印象です。
――具体的にどのような意義やメリットを伝えたのですか?
小川 自分たちが普段行っている業務をAIが代わりに行うことになるため、現状のまま人間が行っても差し支えないと考える人もいるとは思うのですが、代替された時間で何ができるかのほうが大切だと伝えました。その時間で、顧客とより密なコミュニケーションをとることができたり、顧客の課題解決のためにさまざまなアプローチを試すこともできるはず。AI活用は目的ではなくあくまで手段であること、私たちの目的は顧客のビジネスに対する貢献である、といった意識づけをしていきました。
西原 社内にその考えが浸透するまでに、半年ほどかかったと思います。社内のコミュニケーションツールとして使用しているSlack上でOdd-AIやAIといった言葉を見かけるようになったり、メンバーが自発的に案件での成果報告を行う数が増えたことなどによって、その成果を実感していきました。