インボイス制度とは?企業から仕事をもらう人がまず知るべきこと

インボイス制度とは?企業から仕事をもらう人がまず知るべきこと
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2022/02/11 00:00

 2023年10月からスタートする「インボイス制度」については、さまざまな場所でセミナーや説明会などが行われていることを見聞きしている人も少なくないでしょう。インボイス制度とは2023年10月1日に導入開始予定の正式名称「適格請求書(てきかくせいきゅうしょ)等保存方式」のことです。今回は、インボイス制度について、最低限知っておきたいことをまとめました。

 副業解禁など時代の変化により企業から仕事を受託するフリーランスが増加傾向にあります。 特に2023年10月からスタートする「インボイス制度」については、さまざまな場所でセミナーや説明会などが行われていることを見聞きしているフリーランスも少なくないでしょう。 インボイス制度がフリーランスにとって損する制度だという声や「そもそもわけがわからない」といった声をネット上で見聞きすることが増えました。

 しかし、SNSなどでは一部のフリーランスなどによる「免税事業者のままでいると企業から取引をしてもらえないのではないか」「課税事業者になると売上げの10%の納税が必要になる」などといった誤解を招くような内容がひとり歩きしてしまっている様子も見受けられます。 そこで今回は、インボイス制度とはどのような制度なのか、最低限知っておきたいことをまとめました。

インボイス制度とは?

Woman doing accounting

 インボイス制度とは2023年10月1日に導入開始予定の正式名称「適格請求書(てきかくせいきゅうしょ)等保存方式」のことで、消費税の仕入税額控除を受けられる適格請求書(インボイス)を発行する方式を指します。 インボイス制度の登録事業者が「決められた事項を記載した請求書」を発行する制度だと覚えておくと、わかりやすいかもしれません。

 インボイス制度開始に合わせて登録事業者になる場合は、2023年3月31日までに国税庁に対してe-taxなどで登録に必要な各種書類を提出することで、インボイス制度に対応した事業者になれます。

仕入れ販売するフリーランスは仕入税額控除が受けられなくなる

 インボイス制度がスタートすると、決められた事項を記載した「きちんとした請求書」でないと、確定申告時に「仕入れ税額控除」が受けられなくなります。

 したがって、何かを仕入れて販売する業者のフリーランスである場合は、登録事業者になりインボイス制度に対応しないと「仕入れ税額控除」が受けられなくなるのです。

 「仕入れ税額控除」とは、仕入れと販売した物に対する消費税から仕入時に払った消費税分を差し引いての差額を納める税制のことで、同じ商品から何度も重複して徴税しない仕組みを指します。何かを仕入れて販売する業種のフリーランスである場合は、インボイス制度に対応しないと仕入れ税額控除の対象外になってしまう恐れがあります。

 一方、フリーランスの中でもWebライターやマンガ家・Webデザイナーなどといった業種の場合は「物を仕入れる」という概念は一般的にはありません。インボイス制度が開始されることが活動には関係ないように思えますが、交通費などの経費については「消費税」がかかるため、インボイス制度は今後の活動と関係すると予想されます

インボイス制度を語るに欠かせない事業者タイプ2つ

Idea, creative concept with two human heads and bulbs inside

 「消費税」は一般的に、商品を購入するときに払った消費税を、お店が自身の代わりに納税してくれますが、この流れがインボイス制度に関係しています。フリーランスの場合、自身が消費税の課税事業者なのか免税事業者なのかを理解しておかないと、今後インボイス制度においての損得を正確に把握できません。

課税事業者

 現在、消費税の課税事業者とは、簡単にいうと2年前の売上が1,000万円以上で、消費税を納める義務のある事業者です。 法人化している場合は、2期前の売上が基準となり、課税事業者かどうか判断されます。

  また、次のケースに当てはまる場合も課税事業者になりえます。

  • 前年の1月1日から6月30日までの間で課税売上が1,000万円を超える個人事業主
  • その事業年度の前事業年度開始の日以後6カ月で課税売上が1,000万円を超える法人
  • 給与等支払額(給与、賞与等の支払額)が1,000万円を超える事業者
  • 新規設立などで基準期間がない法人の場合、資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上の事業者
  • 最寄りの税務署に「消費税課税事業者選択届出」の手続を行った人

課税事業者でいることにメリットがある人

 課税事業者でいることにメリットがあるフリーランスの人は、お店や事業所の設備投資をした人や、売上年間が1,000万円以上に該当する個人です。該当する場合は「消費税課税事業者選択届出」を提出して課税事業者になることにより、自身が仕入れ商品や経費などで支払った消費税を控除できます。

 また、預かった消費税よりも支払った消費税が多い場合、確定申告で消費税が還付される可能性があるのも課税事業者です。

免税事業者

 一方の免税事業者は「消費税の納付を免除されている事業者」のことで、前述の課税事業者の条件に当てはまらない、それ以外のフリーランスを指します。

 次に該当するフリーランスなどの事業主は免税事業者です。

  • 2年前の1月~12月までの売上が1,000万円以下の事業者
  • 今年フリーランスになったばかりの人

 この後詳しく解説しますが、免税事業者は消費税を免除されていることから、インボイス制度がスタートしたとしても「インボイス」自体を発行できません。

 また、前項で紹介した「消費税課税事業者選択届出」を提出することで免税事業者から課税事業者になることは可能です。

免税事業者でいることにメリットがある人

 商品を仕入れ販売するような事業をしていない場合や、店舗や事業所を持たずに在宅で勤務をするライターやイラストレーター・Webデザイナーなどといったフリーランスは、免税事業者でいたほうが現時点ではメリットがあると言えます。

【インボイス制度】まず知っておくべき3つのこととは?

Wide panorama view of three light bulb formed by white puzzle pieces placed on wooden pegs

 インボイス制度を正しく理解するためには、次の3つのポイントを最低限知っておくと便利です。

  • 課税事業者になると適格請求書(インボイス)発行が義務化
  • インボイスに記載する項目が義務
  • 免税事業者はインボイスが発行できない

 それぞれについて詳しく解説します。

課税事業者になるとインボイス発行を義務付けられている

 インボイス制度に準じた「適格請求書発行事業者」は、請求書などに事業者としての登録番号を記載する必要があります。 たとえ売り上げが少なくても、課税事業者として登録したらインボイス制度開始以降は制度に則った請求書を発行しなければなりません。

 登録番号があることにより、インボイス制度を利用できる「適格請求書発行事業者」かどうかが目で見てわかるだけでなく、確定申告時に仕入れ税額控除になるかどうか判断しやすくなります。

 また、インボイスを発行する際は副本(書類の写し)も保存しないといけません。

インボイスに対して記載する項目が義務付けられる

 インボイス制度がスタートすることにより、登録事業者は登録番号以外にも以下の項目を明記する必要があります。

  • 税率ごとに合計した対価の金額
  • 税率ごとの消費税額

 また、現行の請求書で義務付けられている

  • 発行者名
  • 取引年月日
  • 取引内容
  • 取引金額(税込み)
  • 取引先名

については、インボイス制度がスタートした以降も記載が必要です。

免税事業者はインボイス発行不可

 免税事業者である場合、そもそもインボイス制度に対する登録番号が発行されませんので、インボイス自体が発行できません。したがって、課税事業者が免税事業者から何かを仕入れた場合の費用は、仕入れ税額控除の対象外になります。

インボイス制度でフリーランスは損するのか?

MERITとDEMERITについて考える男達

 一般的に、インボイス制度で損するのは、課税事業者であるクライアント側だと予想されています。インボイス制度導入において、仕入税額控除が急にゼロになるわけではなく、段階的に行われる予定です。

  一方で、フリーランスは自身の身を守るために、インボイス制度開始後にクライアントとの間で何が起こり得るかを、あらかじめ把握しておくと役立ちます。

発注単価が減額される可能性がある

 クライアント側が課税事業者である場合、発注単価が減額される可能性があるかもしれません。 インボイス制度がスタートしたとたん、「消費税分安くしてほしい」や「消費税分は払わない」などと言われる可能性があります。 このような発言は「下請法」違反ですので、公正取引委員会や消費者センターへ相談しましょう。

免税事業者のフリーランスだと取引を嫌がられてしまう可能性がある

 消費税負担を懸念したクライアント側の財布のひもが固くなってしまい、発注数が少なくなる可能性もあるかもしれません。

 施行予定のインボイス制度では、課税事業者(クライアント側)は免税事業者(フリーランス)に対して消費税の「仕入税額控除」ができなくなると予想されており、課税事業者(クライアント側)の消費税負担が増す可能性が予想されています。

 インボイス制度施行後に突如発注数を打ち切るといった行為は「下請法」違反の可能性もありますので、企業からそのような行為を受けた場合は公正取引委員会などしかるべき場所に相談するようにしましょう。

免税事業者であるフリーランスも課税事業者になるべき?

Confused lovely female teenager holds chin

 免税事業者であるフリーランスが今から課税事業者に変更すべきかどうかは、未知数とされています。 2022年時点、実際に制度が始まっていないことや、取引先の企業によっても対応が異なるためです。

  現在、課税事業者と取引しているフリーランスをはじめとする免税事業者は、取引先との信頼関係を厚くすることが大切だと言えます。

免税事業者のフリーランスにも消費税請求の決定権がある

 免税事業者が課税事業者に対して消費税を請求したとしても、法律などを無視して消費税を支払わない悪質クライアントが一定数いるのは避けられない事実です。

  インボイス制度が正式導入されたとしても、免税事業者が消費税を請求していたのであれば、引き続きクライアントに対して消費税を請求しても良いとされています。

  もし、インボイス制度が正式導入後に消費税の請求を断るようなクライアントと遭遇するような場合は、速やかに公正取引委員会などに相談することをおすすめします。

報酬に消費税が入っていない場合は今後の動向もチェック

 「クライアント企業から消費税を受け取っていない」という認識のある免税事業者だとしても、内税という形で消費税を受け取っているかもしれません。 今のうちに、クライアント企業に消費税の請求方法など確認しておくと安心です。

まとめ

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 インボイス制度はきちんとした請求書を発行する制度で、施行されれば請求書を見るだけで課税事業者なのか免税事業者なのかがわかりやすくなる制度だと言えます。

  免税事業者であるフリーランスにとってのインボイス制度は、クライアントありきの制度です。 実際に導入されないとわからないことも多くあるものの、「フリーランスだからインボイス制度で損する」という認識は誤りであり、正しく知らないほうがかえって損する可能性が高まるかもしれません。

  また、必要な時は課税事業者になれるよう、すぐ事業者番号を申請できるように必要書類を準備しておきながら様子を見ることも手段のひとつです。

  インボイス制度について正しく理解を深め、クライアント企業とより良い関係を築きながらフリーランスとしての活動を継続させていきましょう。