今後クリエイティブとテクノロジーといかに関わるべきか ネット黎明期を知るクリエイターとベンダーが語る

今後クリエイティブとテクノロジーといかに関わるべきか ネット黎明期を知るクリエイターとベンダーが語る
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2022/04/06 08:00

 コロナ禍でいっそうデジタル化が進んだ今、クリエイターに求められることとは。必要となるスキルはなにか――。本連載では、データやマーケティングをキーワードに、クリエイターを取り巻く環境や今後の変化について考えていきます。最終回となる今回は対談をお届け。デザインとクリエイティブをベースに、企業の研修プログラムや学校のカリキュラムを設計するインストラクショナルデザインの領域で活躍するクリエイター・境 祐司さんと連載執筆者のアドビ・阿部成行さんが、クリエイターに求められるもの、テクノロジーとの関わりかたなどについて語ります。

コロナ禍で加速した、クラウドによるコラボレーションワーク

――クリエイターに求められること、クリエイターから求められることに変化はありましたか?それぞれのお立場からお聞かせください。

境 テクノロジーによって社会にもさまざまな変化が生まれており、今までになかった概念や仕事のやりかたが一気に広まることもあります。たとえばPhotoshopなどのツールにAIやテクノロジーの力が活用されたことで、高度なテクニックが必要だった写真の切り抜きをデザイナーではない人も行うことが可能になった。

今はとくにアジャイル開発でアプリケーションソフトなどがつくられるようになり、ツールの変化も非常に早い時代だからこそ、情報を収集し、実際に自分で試すこと。これを繰り返しながらスピード感に慣れていくことは、これからのクリエイターに必須のマインドではないでしょうか。

この2年間のコロナ禍によって、仕事の進めかたにも大きな変化がありました。とくに以前の大企業では、セキュリティのルール上、新しいソリューションをご提案しても外部のクラウドサービスを使うことが難しく、業務の効率を上げるといった変化を起こしづらい状態でした。しかしこのパンデミックによってそれが変わった。

今まではデータを安全なサーバーにアップロードし、それをダウンロードしてからチェックをし、修正したらまたアップロードする。そんな手間が発生していましたが、今はクラウド上のデータにそれぞれが直接アクセスし、リアルタイムで共同編集をすることが当たり前になりつつある。おそらくコロナ禍が収束しても、またセキュリティが厳しい状態には戻らないと思いますので、さらにクラウドのコラボレーションワークは高度化していくのではないでしょうか。

阿部 アドビが提供しているクリエイティブツールは、Creative Cloudという名前のとおり、10年近くクラウド機能とセットで提供してきましたが、各企業の事情からクラウド機能があまり使われていない期間も非常に長かった。

ですが最近、クラウド機能を使うケースが増えてきており、コラボレーションというテーマが非常にフォーカスされていると感じます。Adobe XDも最たる例ではありますが、情報を共有しながら一緒にモノを作っていくプロセスをどのように円滑に進めていくのか。そこに注目が集まっているように思います。

境 Adobe XDで言えば、私も最初にリリースされたプレビュー版から使っています。アドビにはユーザーから直接声を集める仕組み「UserVoice」があり、それによって迅速にその意見が開発に反映され、使いづらい部分の修正や欲しい機能の追加が行われている。本当に必要な機能だけが搭載されていくという、非常に理想的な形ではないでしょうか。

ただ一方、頻繁にアップデートがあるため、改善されてよかった面もあればバグが出てくることもある。ウェブブラウザのように、こういった調整が繰り返しあることも時代の変化のひとつです。できあがったものを購入して使うパッケージ型のツールではなくて、常に更新されているアプリケーションを活用しているという意識で仕事をする必要があるでしょう。

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