成否をわけるのは「クリエイティブ運用」 これからのデジタル広告で成果をあげるための勘所とは

成否をわけるのは「クリエイティブ運用」 これからのデジタル広告で成果をあげるための勘所とは
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2022/04/22 11:00

 昨今のデジタル広告は、形式も配信先も多様化している。“なんでもできる”からこそ、もっとも効果が大きいクリエイティブは一体何なのか、頭を悩ませているクリエイターも多いだろう。2022年3月に開催されたオンラインイベント「Creators MIX 2022」では、株式会社リチカ CMOの田岡凌氏が登壇。デジタルマーケティングにおけるこれからのクリエイティブ戦略について、同社が蓄積してきたナレッジや最新事例をもとに語った。

成果に影響するのは「ターゲティング」より「クリエイティブ」

 デジタル広告を運用しているが成果が上がりきらない。たくさんのクリエイティブを用意することができず検証がうまく進まない――。そういった悩みをもつ企業も多いのではないだろうか。そんな課題を解決するひとつの突破口になりうるのが、リチカが提唱する「運用型クリエイティブ」だ。リチカは、400社以上のデジタルマーケティングを支援するだけでなく、Facebookやヤフーといったプラットフォーマーとの共同研究も行っている企業である。

 まず田岡氏は、「デジタル広告やSNSでいちばん成果に影響するものは何か」という問いから解説をスタート。ターゲティングやクリエイティブ、コンテンツ、リーセンシーなどその構成要素はさまざまであるが、グローバル調査会社のニールセンが行ったリサーチによると、デジタル広告の要素でもっとも購買貢献率が高かったのはクリエイティブであった。

 さらに田岡氏は「近年クリエイティブの重要性はますます増している」とし、これにはふたつの環境変化が背景にあると分析する。

 ひとつめは、顧客や顧客接点の多様化だ。これはコロナ禍による生活様式の変化を鑑みれば想像がつくかもしれない。たとえば「東京都郊外に住む30代男性」という属性でも、その人がどの程度の頻度でリモートワークを行っているのかなどによって、行動や選択は変わってくる。また、TikTokやYouTubeといったショート動画や、ポッドキャストなどの音声メディアをはじめ、新しいメディアが次々に台頭したことで配信先はいっそう多様化し、顧客接点も変化している。昨今はスマホやパソコンだけでなくテレビで動画を見る人も増えており、配信面の広がりに合わせたクリエイティブが不可欠だ。

 ふたつめは、プライバシー保護の波である。サードパーティクッキーの利用制限やスマートフォンアプリによるトラッキングの透明性が必須となる中で、従来型のターゲティングを続けることはなかなか難しいだろう。それに代わる手段として「クリエイティブが注目されている」と田岡氏は説明する。さらに言えば、各プラットフォームで広告運用の自動化が進んでいるため、運用などの要素で差をつけるのが難しくなったことも、クリエイティブの重要度が増している理由のひとつであると指摘した。

動画と静止画、役割の違いは?

 田岡氏は「動画と静止画で、より成果がでるのはどちらか」と聞かれることも多いと言う。こうした質問に対し、リチカは「動画と静止画のどちらも重要」であると結論づけている。

 Facebookの調査によると、動画と静止画の両方を配信した場合と静止画のみで配信を行った場合を比較すると、両方配信したケースのほうが約17%コンバージョン率が高いという結果が出ている。またリチカとヤフーの共同研究によると、動画と静止画をどちらも見たユーザーのうち、両方クリックしたユーザーの重複率はわずか3.7%であった。

「これにはふたつの理由があります。多くのプラットフォームでは動画と静止画で配信される面が異なるため、どちらかしか入稿していないと取り逃しがあること。もうひとつは、動画と静止画では役割が違うという点です」

 静止画は“顕在層”にリーチし顧客の獲得に貢献する一方、動画が顕在化できるのは“半潜在層”のニーズだと言われている。テレビCMが認知目的で展開されることからもわかるとおり、動画は情報量が多いためだ。

 「動画と静止画の両配信がこれからのスタンダードになることは間違いありません」と田岡氏は強調する。