CMYKとRGBの違いとは?
人間が色を認識するのは、光の波長の違いによるものです。人間が目で認識できる波長のことを「可視光線」と言い、最も短い波長は紫、最も長い波長は赤く見えます。例えば、夕陽が赤く見えるのは最も長い波長のため、太陽が沈むときでも人の目に届くことができるのです。
他にも、青い色鉛筆は、青以外の波長を吸収してしまい、青だけを反射するため、人の目には青の波長だけが届くので、青く見えます。さまざまな色の色鉛筆があるのは、それぞれ違う色を反射する物質を使って作っているためなのです。
CMYKやRGBはいずれも色を表現する手法のことを表しますが、この基本的な仕組みに違いはありません。では、CMYKとRGBはどのように使い分けられているのでしょうか。
CMYKとは
CMYKという名称は、そもそも色の頭文字を取った略語です。
- C…Cyan(シアン、青)
- M…Magenta(マゼンタ、赤)
- Y…Yellow(イエロー、黄)
- K…Key Plate(キープレート)
Kだけは色名の頭文字ではなく、画像の輪郭を再現するための印刷版「Key Plate」から取られています。KuroのK、BlackのKなどさまざまな誤解がありますが、Key PlateのKが正式名称なので、こちらで覚えましょう。
C・M・Yの3色を「色料の三原色」と言い、印刷物に使われるインクの色を表しています。これらは混ぜれば混ぜるほど暗く、黒に近づいていくことから、「減法混合」や「減法混色」などと呼ばれます。
しかし、これらの3色を混ぜた色は純粋な黒になるわけではなく、正確に表すならば「濁った暗い灰色」といった色になります。そのため、家庭用プリンターで純粋な黒を表現したい場合に使われる黒のインクは、CMYKのKと分けるため「BK」と書かれています。
RGBとは
RGBも同じように、色の頭文字を取った略語です。
- R…Red(レッド、赤)
- G…Green(グリーン、緑)
- B…Blue(ブルー、青)
これらは光の三原色と呼ばれており、「三原色」と言えばこちらを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。パソコンやスマホのモニターなどでは光で色を表現するため、この三原色が使われています。これらは混ぜれば混ぜるほど明るく、白に近づいていくことから、「加法混合」「加法混色」などと呼ばれています。
CMYKとRGBの違い
ここまでCMYKとRGBについてそれぞれ説明してきましたが、違いをまとめると以下のようになります。
- CMY(K)はインクの三原色、RGBは光の三原色
- CMY(K)は混ぜるほど暗くなり、RGBは混ぜるほど明るくなる
一般的に、RGBはCMYKよりも表現できる色の領域が広いとされています。一色につき256段階の色味を設定できることから、256×256×256≒約1,680万通りの色を表現できます。ただし、画面上で同じ数値であっても、モニターやディスプレイの違いやMac、WindowsなどOSの違い、ナイトモードなどさまざまな環境によって見え方が変わってきますので、同じ数値がいつでも全く同じ色に見えるとは限らないことに注意が必要です。
CMYKはそれぞれのインクの割合を0〜100%の間で、小数点以下の値も使って指定できることから、表現可能な色数は理論上、RGBより多くなります。とはいえ、実際に印刷でそこまで細かい色の差を表現することができないため、RGBよりも表現できる色の領域が狭い、とされているのです。CMYKもRGBと同じように、全く同じ数値を指定しても、印刷機やインク・用紙の状態などさまざまな条件で出力される色が微妙に変わってきます。いつでも全く同じ色が印刷できるわけではないことに注意しましょう。
RGBで印刷物を入稿してはいけない?
印刷物を入稿する場合は、RGBでなくCMYKで入稿するように指定されることが多くあります。その理由はここまでご紹介してきたように、インクの色はCMYKで表現されるためであり、RGBよりCMYKの方が表現できる色の領域が少ないからです。
特に、RGBで鮮やかな緑や青を表現しているデータをそのままCMYKで印刷した場合、くすんだ色味になってしまうことが多いのです。特にこれらの色は、くすみによって大きく印象が変わる色でもあることから、RGBで作ったデータをそのままCMYKで入稿する場合は注意しましょう。
また、CMYKは淡いパステルカラーを表現しにくく、これもくすんだ色味になりやすいとされています。想定した色で印刷したいなら、初めからRGBモードではなくCMYKモードで作成するか、後述するようにRGBからCMYKに変換して色味をチェックしてから入稿すると良いでしょう。
RGB印刷という方法もある
近年、CMYKではなくRGBの発色をそのまま再現する「RGB印刷」という印刷技術も出てきました。カレイド印刷、ビビッドカラー印刷、ヘキサクローム印刷などさまざまな手法があり、一般的なCMYKでの印刷と比べて遥かに鮮やかな色を表現できるため、RGBの色もくすませずに印刷できます。
しかし一方で、こうした特殊な印刷のために開発されたインクはまだまだ値段が高く、特に使われるインクが6色と多いヘキサクローム印刷の場合、一般的なCMYKでの印刷と比べてコストが高くなりやすいことがRGB印刷の大きな課題のひとつです。
RGBをCMYKに変換するには?
では、RGBで作られたデータをCMYKのデータに変換するためには、どのようにすれば良いのでしょうか。今回は、よく使われるPhotoshopとIllustratorに加え、変換時にくすみを抑える方法もご紹介します。
PhotoshopでRGBデータをCMYKに変換する方法
PhotoshopでRGBデータをCMYKに変換するには、以下の手順で行います。
- メニューから「イメージ」を選ぶ
- 「モード」から「CMYKカラー」を選ぶ
「モード」はデフォルトでは「RGBカラー」に設定されていますが、最初に「CMYKカラー」に変更しておけば、最初からCMYKカラーで作品を作ることもできます。
IllustratorでRGBデータをCMYKに変換する方法
IllustratorでRGBデータをCMYKに変換するには、以下の手順で行います。
- メニューから「ファイル」を選ぶ
- 「ドキュメントのカラーモード」から「CMYKカラー」を選ぶ
これもPhotoshopと同じように、デフォルトでは「RGBカラー」に設定されているため、最初に「CMYKカラー」に変更しておくことで、最初から印刷物用のデータを作れます。
RGBからCMYKに変換する際、くすみを抑えるには
既にRGBモードで作ってしまった作品データをCMYKに変換する場合、くすみはできるだけ抑えたいものです。そもそもCMYKで色がくすむのは、色を混ぜて暗くなっているためですから、明るくしてやれば良いわけです。
そこで、Photoshopの場合、RGBからCMYKに変換する際に以下の手順を挟むと、くすみを抑えることができます。
- メニューから「イメージ」を選ぶ
- 「モード」から「Labカラー」を選ぶ
- 「イメージ」の「色調補正」から「トーンカーブを調整」を選ぶ
- トーンカーブの「L」のチャンネルの線をやや上げ、色味を明るくする
- 「イメージ」の「色調補正」から「色相・彩度」を選び、彩度を10〜20プラスする
- 「モード」から「CMYKカラー」を選ぶ
Labカラーとは、L(明度)、a(赤または緑の度合い)、b(黄または青の度合い)で色を表現するものです。つまり、この手順で行っているのは元々のデータの明るさ(明度)と鮮やかさ(彩度)を上げ、くすんでも元々のデータとあまり変わらない見た目にする、というものです。RGBからCMYKに変換した際のくすみに悩まされたときには、一度試してみてはいかがでしょうか。
CMYKとRGBの違いをしっかり理解し、作品によって使い分けよう
CMYKとRGBは同じ色を表す三原色ですが、インクと光というように表しているものが異なります。そのため、表現できる色の領域も異なり、印刷物には基本的にCMYKが、Web上のバナーやイラストにはRGBが使われます。両者の違いをしっかり理解し、作品によってモードを使い分けましょう。