イギリス当局がMetaにGIPHY売却を命令 競争法違反の懸念と高まる対テック大手規制の現状

イギリス当局がMetaにGIPHY売却を命令 競争法違反の懸念と高まる対テック大手規制の現状
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2022/12/16 08:00

 アメリカ国内だけでなく欧州やイギリスでもテック大手の影響力を懸念した規制強化の動きが本格化している。直近では、2022年10月18日にイギリスの競争規制当局「Competition and Markets Authority(CMA)」がMetaに対し、ソーシャルメディアとデジタル広告市場における競争が著しく阻害されるとしてGIPHYの売却を命じたところ。CMAは、Metaだけでなく、MicrosoftやAmazonなどいわゆるビッグテック(テック大手)と呼ばれる企業に対する姿勢を厳格化しており、市場関係者の関心を集めている。イギリスではテック大手企業を取り巻く環境がどのように変化しているのか、最新事例から現状を探ってみたい。

テック大手に目を光らせるイギリス当局

 今回Metaに対しGIPHY売却命令を出したCMAとは、日本の公正取引委員会に相当する市場監督機関だ。

 このCMAだが、数年前からイギリスにおけるテック大手の動きに目を光らせており、2020年5月にMetaがGIPHYを買収した際にも、競争阻害懸念を名目とする調査を実施するなどしている。

 結果、GIPHYはMetaに買収されたが、CMAの姿勢は厳格化していった。CMAは2021年8月に発表した暫定調査報告書の中で、MetaがGIPHYのサービスを競争相手から引き上げ、サービス継続の条件としてこれまで以上のデータ提供を求めるなどのリスクがあるとの懸念を表明。その後、同年11月には、Metaに対しGIPHY売却を要請する流れとなった。

 Metaは、この決定を不服として控訴したが、2022年6月控訴は棄却され、最終判断はCMAに委ねられた。その後3ヵ月のレビュー期間を経たあと、CMAは最終決定として、MetaにGIPHY売却を命じた格好となる。

 GIPHYとは2013年に創業されたGIF(音声なしのループ動画)画像検索プラットフォーム。FacebookやTwitterなどさまざまなソーシャルメディアでGIF画像の検索ができるが、この検索を可能にしているのがGIPHYの検索エンジンだ。

 2016年10月時点の公式統計によると、1日あたりのアクティブユーザー数は1億人、1日あたりのGIF画像提供数は10億枚、1日あたりの総GIF視聴時間は200万時間であった。

 ビジネス専門チャンネルのアメリカ「CNBC」 によると、GIPHY社は今年2022年8月、裁判所への提出書類で、GIF画像の人気低下を挙げ、Metaによる買収の影響は少ないという点を強調していた。しかし、CMAは、英国のディスプレイ広告市場においてMetaが市場シェアの半分ほどを占めている現状を指摘し、メタのGIPHY買収の影響は小さくないと判断した。

 またCMAは、MetaのGIPHY買収で、競合他社のGIF画像へのアクセスが制限され、それが結果的にFacebookなどMeta傘下のソーシャルメディアへのユーザー誘導につながった可能性を指摘している。さらに、CMAはMetaがサービス条件を変更して、競争を阻害した可能性があると主張。中国のTikTokなどGIPHYを利用するソーシャルプラットフォームに対し、さらに多くのイギリスユーザーの情報を求めた可能性があるとしている。

 CNNによると、MetaはCMAの決定を受け入れ、GIPHYの売却を進めるという。

 アメリカでも規制圧力は強まっている。現在、Metaに対し傘下のWhatsAppとInstagramを分割させる連邦訴訟の準備が進められており、裁判は2024年にも開始される見込みだ。

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