Netflixのゲーム事業
動画ストリーミングを本業とするNetflixだが、ユーザーベースの拡大に向け2021年11月にゲームサービスを開始した。Netflixの有料会員向けのサービスで、Netflixアプリからモバイルゲームをダウンロードできる仕組みだ。
現在プレイできるゲームタイトル数は35本のみだが、最新の四半期報告では2022年末までにさらに55本追加する計画が明らかにされた。
Protocolの記事によると、この55本のうち14本はNetflixの自社スタジオで開発されている。また、同社は南カリフォルニアにゲームスタジオを新設しており、インハウスのゲーム開発能力を強化。この新スタジオには、ゲーム開発大手「Activision Blizzard」の元エグゼクティブプロデューサー、チャッコ・ソニー氏が責任者に就任する予定だ。
モバイルだけでなくクラウドゲームにも本格参戦
現在のところNetflixのゲーム事業は、モバイルゲームが中心となっている。「AAA」と呼ばれる大規模なゲームではなく、比較的開発期間とコストを抑えられるモバイルゲームに特化することで、同プラットフォームで提供するゲームタイトル数を短期間で拡充するのが狙いのようだ。
ただ、モバイルゲームを拡充する一方で、Netflixは大規模ゲームの可能性も模索している。これは、同社のクラウドゲーム関連の動きから推察することができる。
最近までNetflixのクラウドゲーム参入は憶測の域を出なかったが、Netflixのゲーム事業責任者が公の場で、クラウドゲームへのコミットメントを明確に述べたのだ。この情報が明らかになったのは、TechCrunch Disruptイベント。Netflixのゲーム開発部門バイスプレジデント(VP)マイク・ベルドゥ氏がクラウドゲームサービスの提供に向け本格的に動いていると発言した。
クラウドゲームは、高負荷処理が必要な大規模ゲームをハイスペックPCやコンソールなしにプレイできる手段として期待される仕組みだ。十分な速度の出るインターネットに接続さえしていれば、誰でも高画質・高負荷のゲームがプレイできるようになる。
そんなNetflixは現在、クラウドゲームサービスの構築に向け、人材の確保に奔走している。ビジネス特化型SNS「LinkedIn」の Netflixアカウントで募集されている職種のひとつに「ゲーム部門のセキュリティ・プロダクト・マネジャー」がある。文字通りゲームのセキュリティを担当する役職だが、候補者に求められる好ましいスキル・経験に、クラウドゲーミング環境における課題解決が含まれており、クラウドゲーム関連の役職であることがわかる。
またNetflixのウェブサイトでも、クラウドゲーム関連の人材募集が始まっている。ひとつは、カリフォルニアを拠点とするプロダクト・マネジャーだ。募集要項には、クラウドゲーム部門の役職であることが明記されている。このほかにも同社ウェブサイトでは、クラウドゲーム向けのレンダリング・エンジニアやソフトウェア・エンジニアなど、多数の役職を募集していることが確認できる。
Netflixとクラウドゲームの相性
Market Research Futureの調べによると、2023年のクラウドゲーム市場は225億3,000万ドル。2027年まで年率50%以上の成長が続く見込みだと言う。
スマホ、ラップトップ、デスクトップ、スマートテレビなどクラウドゲームをプレイできるデジタルデバイスの普及が同市場の追い風になるとみられる。
これらのデジタルデバイスは、Netflixのドラマや映画を視聴する上でも利用されているもの。映画・ドラマ視聴からゲームプレイへの移行がシームレスなものであれば、Netflixはクラウドゲームユーザーを大きく増やすことも可能だ。とくにスマートテレビやデスクトップの大画面で高画質ゲームをプレイしたいという需要が出てくることも予想されるだろう。
Netflixがクラウドゲーム市場でどのようなパフォーマンスを示すのか。今後の展開から目が離せない。