なぜイラストがビジネスの課題解決に活きるのか そのメリットと意義を解説

なぜイラストがビジネスの課題解決に活きるのか そのメリットと意義を解説
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 イラスト、デザイン、コンサルティングの3つを柱として活動するユニット「rala design」。代表兼デザイナーをつとめる青木孝親さんが、長年イラストレーターとともに二人三脚でプロダクトづくりをしていくなかで見えた、イラストとの付き合いかた、イラストの楽しさなどについてお伝えします。第6回は「ビジネスシーンでの活用」がテーマです。

 どんな業種においても、自分の仕事を客観視するのは難しいことではないでしょうか。同じ仕事でも切り口を変えれば、見えかたは違ってきます。

 rala designはデザイナーとイラストレーターの共同デザイン事務所でしたが、クリエイターというひとつの仕事であるとも、デザインとイラストはまったく別物であるとも言えます。私たちはひとつの仕事を一緒に取り組みながらもスキルで役割分担をしていましたので、多少は相手の仕事を客観視できます。イラストレーターの隣に座っていた私は、ときに気分転換がてら「イラストの仕事って、あらためて考えてみるとどんなものなんだろう」なんて思いを巡らせたりしていました。そして、会社のマネジメントの役割も担っていましたので、“イラストの仕事”と“お金”の関係にも思考が向かいます。

 今回は「イラストを描くお仕事」の切り口で、それらを分類してみたり、ビジネスでイラストが活用されるシーンを探ってみたりしたいと思います。

ビジネス視点でイラストの仕事を分類

 最初は「イラストを描く」という全体像を再認識するために、描く目的をおおまかに分類してみます。私はまず、描いたイラストを「報酬がない/ある」で切り分けてみました。

 報酬がないイラストとは、[1.趣味や暇つぶしなどによるもの(楽しむため)]、[2.誰かに協力したりボランティアで描いたりするもの(使命感や奉仕の精神から生まれるもの)]などがあります。さらには、自己PRの手段としてイラストを公開したり、他者に使用を認めたりする場合もありますが、これらは先ほどとは少し性格が異なり、[3.将来への先行投資として無償にしているもの]です。お金をもらわないイラストではありますが「対価分をまるまる値引きしている」という状態ですから、有償と無償の間に位置しています。

 一方、報酬があるイラストには、[4.対象は不特定でありながらも相手を想像して、その人に共感してもらえるように描くもの]と、[5.特定の相手の要望を叶えるために描くもの]があります。1から5は、イラストを描く要望もとが自分から他者へと変化していくような順番で並べています。

 さらに4と5は誰から報酬をもらうのか、という区分けで細分化できます。いわゆるBtoC、BtoBの視点です。4と5について、さらに分類してみましょう。

 [4-1.不特定相手の「BtoC」は、イラストをアートピースとして一般の人に販売する場合やSNSで使われる有料スタンプの販売]などが想像しやすいと思います。

 [4-2.不特定相手の「BtoB」では、イラストのストックサービスが該当]します。ストックサービスは一般の人も多く利用しますが、ビジネスの現場においては、普段イラストレーターと関わりがない企業でも手軽にイラストを活用できるようになった点が革新的です。フリーランスのイラストレーターにとっては、企業との相対取引やエージェンシーへの登録による仕事の獲得に加え、「ストックサービスを窓口としたビジネスシーンへのイラスト販売」というマーケットに直接参加できるようになりました。

 [5-1.特定相手の「BtoC」では、たとえば似顔絵やブライダル関連に使われるイラスト]などがあります。特定の人を相手にする場合には、イラストに着手する前に相手のリサーチやヒアリングを行い、オーダーメイドの制作工程になるケースが多い点が特徴です。

 そして、[5-2.イラストの使用目的が大規模になり、報酬金額も大きくなって、相手が事業者であるのが特定相手の「BtoB」]です。

 「将来はイラストレーターになりたい」と夢を抱く多くの人が想像している世界は、この特定相手とのBtoBだと思います。有名企業の商品・パッケージ・広告に自分のイラストが使われるようになりたい、絵本を出版して作家になりたい、ゲームや出版物などで大々的に扱われるようになりたい、と華やかなイメージをもたらしてくれる世界ですね。BtoBでやりとりされるイラストの多くは、商品やサービスの販売に活用されます。イラストが商品の価値にどの程度寄与するかはそれぞれですが、商品に魅力を付加したり、情報をわかりやすくしたりすることで売上が増大することを期待して活用されます。そしてその対象は、一般の消費者であることがほとんどです。

 このような「特定相手か不特定か」「BtoCかBtoBか」といった区切りかたにくわえ、「イラストの用途」による分類もおもしろいのではないかと思います。BtoBtoCやBtoBtoBなどの言いかたもありますが、直観的に感じ取っていただくために、ここでは「市販用」と「業務用」という呼びかたを使います。

 市販用に用いられるイラストには、一般向けの商品やサービスで使用されるイラストがあります。そして、発注される仕事の量は、圧倒的に市販用のイラストのほうが多いとはいえ、業務用イラストの仕事ももちろんあります。

 業務用のイラストには、社内のみで使われるものや、企業間の取引においてのみ使われるものなどがあります。社内プレゼンの資料や社内報、社員教育の教材、作業マニュアル、施設内のサインや掲示物など、業務にもイラストが使われているシーンが意外にも多くあります。企業間取引では、昔から製品の説明図や取り扱い説明書などにテクニカルイラストがよく使用されていますが、市販用商品と業務用商品の両方を扱う会社では、市販用に作成したオリジナルキャラクターを業務用の資料やパンフレットに流用したりもします。

 この業務用のイラスト分野において、企業がより積極的にイラストを活用する傾向が出てきたと私は最近感じています。この次は、その変化と推測される理由について、私の考えを皆さんと共有したいと思います。

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