なぜAIに負けたくないクリエイターが、パーパスブランディングを知っておくべきなのか

なぜAIに負けたくないクリエイターが、パーパスブランディングを知っておくべきなのか
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 企業の存在意義を表す言葉として耳にする機会が増えた「パーパス」。策定する企業も少しずつ増える一方、それが形骸化してしまっている企業もいるのではないでしょうか。そんななか電通デジタルでは、パーパスの浸透に一役買う新たなCXのフレームワーク「PIECEキャンバス」を開発。本連載では、パーパスを活用したブランディングの基本や、パーパス浸透のためのアクション、その実践例などを解説します。初回は「パーパスが生まれた背景やその基本」についてお伝えします。

「パーパス」がコモディティ化に打ち勝つ

 こんにちは。電通デジタルでクリエイティブディレクター/コピーライターをしている大木と言います。

 ところで生成系AIの進化、凄まじいですね。AIにクリエイターがリプレイスされる日が近づいているのかもしれません。いや、近づいているどころではないのです。一部の会社ではすでにディレクター職を減らすことも検討しているようです。おそろしい話ですね……。

 彼らのその後が気になりますが、気にしている場合ではありません。私が所属する電通デジタルでもAIをゴリゴリに活用しており、社員全員にOpenAIのアカウントが付与されているように、明日は我が身なのです。ではAIにリプレイスされないクリエイターになるためには、具体的にいつまでに何をすれば良いのでしょうか。

 すみません、ちょっと前のめり過ぎました。いったん冷静に考えましょう。

 いまクリエイター界隈で一気に起きているのは、要するに「コモディティ化」です。たとえば絵師。これまで個々のクリエイターが独自性のあるイラストを描いてきました。しかし生成系AIの誕生により、一瞬にしてAIとの差別化が難しくなってしまった。イラストを描いたことがない人間でも、生成系AIに言葉を入力すれば一瞬でイラストが描けてしまうのです。

 これと同じようなことがデザイナー、コピーライター、ディレクターにも起きてしまう。「個性が勝負」でもあったこれらの職種が、没個性化してしまうのです。手厳しく言えば、陳腐化してしまうということ。ああ、怖い。

 ではどうしたら良いのか。結論から言えば、AIにできないことをすれば良いのです。AIにできないこととは何かというと、ずばり肉体労働です。そういわれると少し引いてしまう方もいるかもしれませんが、冗談ではありません。デジタルの手がまだ及んでいない現実世界で、アクションを起こせる人になれば良いのです。

 そこで登場するのが「パーパスブランディング」です。

 一般的には企業の「存在意義」と訳されますが、私は企業の「社会的存在意義」と呼んでいます。なぜAIに負けたくないクリエイターがパーパスブランディングを知っておくべきなのか。それはパーパスがコモディティ化に打ち勝つ方法だからです。企業のコモディティ化を防げるクリエイターは、自身のコモディティ化も避けることができる、という話をこれからしていきます。(そしてそれがいかに肉体労働的か、についてもお伝えします)

 まずはさらっとパーパスについておさらいしましょう。そもそもパーパスの重要性が叫ばれるようになったのは、2019年のビジネスラウンドテーブル(米国の主要企業が名を連ねる財界ロビー団体の会合)。そこで、「米国の経済界は株主だけでなく、従業員や地域社会などすべてのステークホルダーに経済的利益をもたらす責任がある」と宣言されました。

 これは非常に画期的なことで、Harvard Business Reviewの記事では「資本主義との決別」と伝えられたほどです。実際にこの宣言は、株主至上主義からステークホルダー資本主義への大きな舵切りを意味していました。これまでの資本主義が「株主」だけの利益を追求していたのに対し、ステークホルダー資本主義は「顧客」「従業員」「サプライヤー」「地域社会」「株主」の利益を追求するものとなったのです。

 株主至上主義のときは、極端に言えば株主が儲けることができれば良いので、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が策定されていれば企業の方向性は明確でした。それはあくまでも組織そのものを中心に据えた内向きなもので良かったのです。

 一方、ステークホルダー資本主義は、あらゆる立場の人々の利益を考えようというもの。こうなると内向きの論理は通用しません。立場の異なる人々を包摂する会社の存在意義、つまり「パーパス」が不可欠となったのです。

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