SNS運用のいちばんの目的は「ユーザーとのコミュニケーション」
――まずは運用の体制や、各SNSの使い分けなどについて教えてください。
郡山 コピックでは、企業がSNS活用を行うようになった初期のころから着手していました。コピックのおもなユーザー層である10〜20代の女性にアプローチするための手段としてSNSは必須だと考えていたためです。
もちろん、SNSは製品の認知を広げるためにリアルタイムで情報を発信できる場でもありますが、もっとも大切にしているのはユーザーとのコミュニケーションです。コピックのメインユーザーはSNSを積極的に活用していますし、制作物をSNS上で発表したり、それにともないコミュニティが生まれる側面もある。そのためたとえば、SNSでコピックに関する疑問を投稿している方がいれば、可能な限りお返事をすることなどは心がけています。こういったリアルタイムなコミュニケーションがとくに大切なのはX(旧Twitter)ではないかと感じています。
また、コピックのマーカーはある程度使いこなそうと思うとテクニックが必要となるため「憧れの作家さんの技術を真似したい」というユーザーさんもたくさんいます。そのためテクニックを伝える場としてもSNSは非常に有効です。この場合、とくに重要なのがYouTubeです。私たちはコピックのユーザーでもある作家さんにお声掛けをし、実際に色塗りをしている手元を映した動画なども公開しています。
また、魅力的な作家さんの作品を知ってもらうための場として運用しているのが「Instagram」です。作家さんが活躍する場を提供する役割もSNSにはあると考えているため、Instagram上でハッシュタグを活用したコンテストを実施したり、年に1回コピックで描くことの楽しさをユーザーさんと共有するアワード「COPIC AWARD」も開催。「COPIC AWARD」では、ブランドとは別に、アワード専用のアカウントをXとInstagramで用意し、コミュニティづくりにも活用しています。
TikTokは若い世代へのきっかけづくりを意識して投稿しています。細かな製品情報やテクニックよりも、見た目のおもしろさから興味を持ってもらえればと思っています。
運用体制としては、マーケティング部のなかでSNS運用に直接関わっているのは5人で、それぞれ担当のアカウントがあります。即時性が求められるものは各担当者が判断していますが、担当者にすべて丸投げするわけではなく、毎週の定例ミーティングではチーム全員でSNS施策の方向性を考えたり、具体的な企画を立てたりしています。
英語での発信やユーザー対応するアカウントも
――コピックでは国内向けとは別にグローバルアカウントも運用していますが、なぜアカウントを分けて発信しているのでしょうか。
郡山 現在コピックは世界70ヵ国以上に輸出されているため、SNSの運用は各国のファンベースマーケティングを意識して行っています。海外の各地に代理店があり、その代理店が運営しているSNSアカウントもありますが、公式として正しい情報を発信するために、日本国内でグローバル版のオフィシャルInstagramアカウントを用意。代理店に任せるだけではなく、我々自身で発信することに意味があると考えているからです。
ただ、公式アカウントからの発信で日本語と英語などいくつかの言語が混ざると、それぞれの国のユーザーにとってノイズになりかねません。正確な情報も把握しづらくなってしまうでしょう。このような理由からオフィシャルのInstagramアカウントでは海外のユーザーさん向けに絞り、英語による発信をメインに行っています。ちなみに、Xは日本のユーザーが圧倒的に多いため、日本語のみで発信することがほとんどです。
――海外向けの発信では、どのようなポイントを意識していますか?
樋口 やはり大前提として、ユーザーによって言語も文化もバラバラですし、コピックの商品構成も異なることが多いです。そのためマーケットごとにどのような製品が好まれるのかといった点には、やはり気を配るようにしていますね。
たとえば日本だと、マンガ系のイラストを描いているユーザーさんが圧倒的に多い印象です。もともとコピックは、デザイン向けの製品として開発されたのですが「マンガやイラストを描く時にとても使い勝手が良い」とユーザーさんが発見してくれたんです。
一方で海外の場合、ペーパークラフトなどにコピックが用いられているケースも多くあります。プロダクトデザインのラフスケッチなどで使っている方もいらっしゃいますね。そのため投稿内容もひとつのジャンルに偏らないように意識しています。