契約情報を武器に“攻め”のコンテンツ事業を その環境づくりとリーガルテックの選びかた

契約情報を武器に“攻め”のコンテンツ事業を その環境づくりとリーガルテックの選びかた
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 日々どれだけの契約を結んでいるか、自身の会社を思い浮かべてみてほしい。外部のクリエイターや制作会社に発注する場合もあれば、逆に発注を受ける場合もあるだろう。口頭契約も含めると、意外と身近に存在するのが契約だ。しかし、実際の制作業務と比較すると軽視されがちな業務でもある。本連載では、「Contract One」を提供するSansan株式会社が、コンテンツに関わる企業が意識すべき、契約業務の重要性や課題などを解説。最終回となる今回は、「リーガルテックの賢い活用方法」について、クリエイター個人と企業それぞれの立場から紹介する。

契約情報に対するハードルを下げるカギはリーガルテックの導入

 前回の記事では、法的知識を経営者や法務部門だけのものにせず、コンテンツ制作に関わるクリエイターをはじめとした社員全員が主体的に契約情報を活用することの重要性について述べた。そしてそのためには、まずは自分が携わるプロジェクトに関する契約情報に触れることが必要である点にも言及した。

 とはいえ、日々の業務に追われているなか、契約情報を管理している部門にわざわざ連絡をし、「契約情報の確認をしたい」と尋ねることを躊躇する人も多いだろう。では、どのような環境があれば、気軽に契約情報に触れられるだろうか。

 そのひとつの手段となるのが、リーガルテックの導入だ。近年では法律関連の業務や手続きにIT技術を活用することで業務効率化を実現し、コンプライアンス強化にも役立つリーガルテックが続々と登場し、市場は拡大している。

 リーガルテックを導入すれば、たとえばそれまでアナログだった契約書の情報をデジタル上で閲覧することができたり、データベースを構築して検索が容易にできたり、法務担当者とフロント部門担当者が同じ契約情報を共有できたりする。契約情報を参照したいときに、わざわざファイルを開いて紙をめくる必要がなく、紛失や破損のリスクもない。ハードルが高いと感じていた契約情報へのアクセスが容易になり、契約に触れる機会はきっと多くなるだろう。

 また、契約情報にアクセスできたとしても、それが専門的な文言が並ぶ難解な文書であれば、「やはり自分にはわからない」と、せっかく近づいた契約情報から遠ざかってしまうことも予測できる。そのためたとえば、AIを活用した契約情報の要約サービスを提供しているリーガルテックなどを活用することで、アクセスしやすい環境を構築できる可能性が高まる。

 能動的に見に行ける環境をつくることが可能なだけでなく、契約に関するリスク情報を受動的に受け取れるようになる点もメリットのひとつだ。契約の中には自動更新されるものも多くあり、とくに見直すことなく更新を繰り返している企業も少なくないだろう。しかし契約期間の間にも最低賃金が向上したり、物価が上昇したりと社会環境は変化するだろうし、とくに人が介在する取引では「健全であるかどうか」が強く求められるようになったりする。

 一部のリーガルテックでは、期限が迫る契約に対してアラートで通知をし、見直しや確認を促してくれたり、難解な法的文書のなかから必要な情報だけを抽出して見せてくれる機能が備わっていたりする場合もある。過去の契約をそのまま更新して本当に問題がないのかどうか、見直すきっかけを作ってくれるはずだ。

契約情報をビジネスの武器に

 リーガルテックを導入して契約情報にアクセスしやすい環境をつくることで、コンテンツ制作に関わるクリエイターの業務にはどんな影響があるだろうか。第一に、不要なトラブルを回避し、ビジネスを有利かつ円滑に進める「守り」に活用できると言える。

 映画の企画制作、プロモーションやイベントなどを行う企業を例に説明しよう。その会社では「○○制作委員会」と冠したチームで制作にあたるケースがよくある。クリエイターなど関係者が多岐にわたるために、全メンバーに契約の内容を回覧し締結するのに長い時間がかかっていた。結局、契約書を回収できないまま制作がスタート、進行してしまうケースがあり、のちにトラブルに発展するリスクがあるという課題を抱えていた。

 そこでリーガルテックを導入し、契約情報の確認や回収スピードなどの効率化を実現。「以前は契約書が返送されるまでおおむね 3~4 週間は時間を要していたが、現在はもっとも長いものでも 20日間に短縮された。契約締結の早期化や未締結の防止につながっている」と聞く。

 第二に、「守り」だけではなく、積極的なビジネスの「攻め」に契約情報を活用することもできる。

 大手映像配信会社では、年に数回ほど、作品の仕入れのために海外で開催される見本市へ足を運んでいる。その際に、仕入担当者は契約管理サービス上に登録されている契約情報を過去の取引情報などとあわせて一覧にして持っていくことで、過去の契約を参考にコンタクトを取ったり、交渉材料として使ったりすることが可能になる。何の武器も持たずに向かうより、有利に物事を進めることができるのは明らかだろう。

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