第1回〜5回ではダイレクトレスポンス×ショート動画にまつわるテクニックなどをお伝えしてきました。もちろんそれらはショート動画を制作するうえで重要なポイントではありますが、そのいちばんの目的は、ユーザーに商品を購入してもらったり登録してもらったりすること。ノウハウだけをいくら学んでも意味はなしません。重要なのは「ユーザーを考え、理解すること」だからです。
「サービスやユーザーを理解する」とはなにか
では、どうすればユーザーを理解することができるのでしょうか。当たり前のことのように感じますが、まずは商品やサービスを実際に利用してみると良いでしょう。可能であれば担当している商品だけでなく、競合商品まで体験することをオススメします。
ただもちろん、体験しにくい商品も存在します。女性の下着案件を担当している男性社員の場合、ひとりでランジェリーショップに入るのは難しいでしょう。実際に弊社の新卒男性メンバーが下着案件の担当になったことがあったのですが、パートナーに同行してもらい商品をリサーチしたと話していました。少しの工夫で商品理解を深めることができた好例でしょう。
またときには、ほかのチームや別の役割をもつメンバーにアイディアを聞いてみるのもオススメです。自分にとってはあまり馴染みがなかったとしても、サービスを愛用していたり商品に興味を持っていたりする人が社内にいるかもしれません。たとえばペット関連商品であれば、自分自身はペットを飼っていないとしても、身近な人をあたってみるとペットとともに生活している人がいるのではないでしょうか。
第4回の記事では味の素株式会社さんの事例を紹介しましたが、私はスーパーに行く時は必ずクライアントである味の素さんの商品をチェックするようにしています。現実的には難しいかもしれませんが「クライアントよりもクライアントの商品を知っている人」を目指したいと考えているからです。
「クライアントへの愛」と言うと少しありきたりな表現になってしまうかもしれませんし、愛や情熱だけでは解決できない問題もあるでしょう。しかしたとえスキルが足りなかったり、キャリアが浅かったりしたとしても、最後には愛を持って完遂できる人が、最終的により良いクリエイティブを作ることができるのではないかと感じています。
心理的フリークエンシーに注意する
広告クリエイティブ制作の現場において、効果の高いクリエイティブをただコピーしたり、一部を変更したりすることで量産するケースは珍しくありません。良いクリエイティブをベースにしているため成功する確率は高いですし、広告運用において必要な施策のひとつであることは間違いありません。
一方、デメリットも存在します。横展開をしすぎるとユーザーは「また同じ広告だ」と感じてしまうかもしれません。広告運用では、フリークエンシー(ユーザーひとりあたりの広告接触回数)を管理画面で確認することができますが、一部を変更した新しいクリエイティブの場合は管理画面に反映されません。
制作側では別のクリエイティブとして扱っているものの、ユーザーがその差異に気づくとは限りません。そうなると当然、同じクリエイティブとして認識されることもあります。私はこれを「心理的フリークエンシー」と呼んでいますが、ユーザーに心理的な飽きや慣れを感じさせないためにも、新しい表現を取り入れることが重要だと考えています。