[最終回]デザインシステムの未来とは――その可能性やAIとの接続を考察

[最終回]デザインシステムの未来とは――その可能性やAIとの接続を考察
  • X
  • Facebook
  • note
  • hatena
  • Pocket

 これまでさまざまな組織のデザインシステム構築や運用を支援してきたグッドパッチ。本連載ではデザインシステムにフォーカスし、その概要や歴史、導入から運用、構築にいたるまで網羅的にお届けします。最終回となる第7回は「デザインシステムの未来」についてです。

 こんにちは。グッドパッチのUIデザイナー 乗田です。前回の記事では、デザインシステムを拡張する方法やそのポイントについて紹介しました。最終回となる今回は、「デザインシステムの未来」をテーマに、デザインシステムが秘める可能性やAIとの接続についてお届けします。

デザインシステムの課題

 これまでの連載を通して、デザインシステムは組織全体で一貫したデザインを維持し効率的な開発を可能にするためのツールであることや、これらのメリットを享受するためのデザインシステムの構築・運用方法について紹介してきました。

 デザインシステムは組織やユーザーに大きな価値をもたらします。その一方で、デザインシステムには、構築や運用に要するコストの肥大化をはじめ、次のような多くの課題も存在します。

1.構築フェーズの課題

コンポーネントの構築

デザインシステムのなかでも、コンポーネントはとくに重要な存在です。しかし、コンポーネントの構築を行う過程において、一貫したスタイルですべての要素を設計し、名前やプロパティの整合性を保つことは容易ではありません。とくに複数のサービスやマルチプラットフォームで活用するための大規模なデザインシステムは考慮すべきポイントが多いため、全体最適を図ることはとても難易度が高いです。そのため、これらの観点を反映したコンポーネントの構築には多くの開発期間が必要です。

ドキュメントの執筆

デザインシステムが組織に深く浸透するためには、ドキュメントが欠かせません。ドキュメントはコンポーネントの仕様やふるまい、使いかたが網羅的に記されている必要があり、それと同時に文章の読みやすさやわかりやすさも求められます。これらのポイントを備えたドキュメントを用意することで、デザイナーやエンジニアが迷うことなく効率的にデザインシステムを利用できるようになります。しかしドキュメントの執筆もまた、時間と労力を要する作業です。

2.運用フェーズの課題

一貫性の維持

デザインシステムが稼働し始めたあとも継続し、一貫性を維持することは重要です。デザインシステムが組織の共通言語として機能するためにはすべての要素がひとつのデザイン原則にもとづいていること、各コンポーネントやドキュメント同士の整合性が保たれていることも欠かせません。

一方、デザインシステムのアップデートでコンポーネントなどが増えるにつれ、デザインシステムに含まれる要素の依存関係は強くなるため、要素同士の一貫性を維持することは難しくなります。

柔軟性の確保

これまでの連載で、良いデザインシステムは組織やプロジェクトの成長に合わせてその形が変化することも紹介してきました(参考記事)。さまざまなプロジェクトやチームの多様なニーズに対応できるデザインシステムに育てるためには、柔軟性と拡張性が重要です。

しかしそれらの設計を誤るとデザインシステムの複雑性を増長させ、一貫性の維持に支障をきたす可能性があります。

デザインシステムは組織のデザインプロセスをより良いものにする効果がありますが、こういった理由から、その構築や運用は容易ではありません。

※この続きは、会員の方のみお読みいただけます(登録無料)。