Z世代にリーチするために始めたTikTok
――まずは、岡本さんのご経歴とご担当の業務を教えてください。
2017年に新卒でヤンマーに入社し、広報部門に配属になりました。2年目からSNSの担当者となり、今に至ります。私が所属するのは、社内外のコミュニケーション業務を担うブランド部コミュニケーション部のなかでも、SNSやオウンドメディア、ウェブサイトの制作などを担当するデジタルグループです。
SNSの担当になった当初はFacebookのアカウントだけでしたが、2020年にX(旧Twitter)、昨年2023年からTikTokのアカウントを立ち上げました。新卒採用向けのInstagramのアカウントも合わせると4つのプラットフォームを運用しています。今はこれらのアカウントを2名体制で運用しており、私はおもにTikTokを担当しています。
アカウントの棲み分けについては、まずFacebookは既存のヤンマーファンの方に向けたものです。フォロワーも40〜50代の男性で農業をされている方が多く、そうしたユーザーに向けてヤンマーの最新情報や製品情報を中心にお届けしています。Xを立ち上げた目的は、若年層の認知を獲得するため。2020年当時はTikTokもまだ主流ではなく、Instagramよりも拡散力が高いことからXを選びました。ただ、アカウントを大きくしていく過程でプレゼントキャンペーンなどを実施したこともあり、30代以上の女性のフォロワーが増加したものの、当初のターゲットとは別の層にリーチしている状況でした。そこで、Z世代とのタッチポイントを増やすために始めたのがTikTokです。Instagramは先述のとおり、新卒採用専門のアカウントになります。
ヤンマーは創業100年以上になりますが、次の100年も世の中に貢献し続けるためには未来を担う人材の確保が必要であると考えていることから、Z世代へのリーチに注力しています。その手段のひとつとして活用しているのがTikTokです。
流行をキャッチアップしながらヤンマーらしさを表現したい
――TikTokの運用体制と、コンテンツづくりで意識していることを教えてください。
社内の担当者は私ひとりで、外部ベンダーさんにサポートをしてもらいながら運用しています。まずはベンダーさんから提案をいただき、そこからヤンマーらしいアレンジやアイディアを一緒に考えます。撮影・編集はベンダーさんが、出演する社員のアサインといった社内調整は私が担当します。投稿頻度は週2回です。
企画を検討する際は、できるだけZ世代の間でトレンドになっているものを取り入れるべく、私自身も隙間時間でTikTokをチェックするよう心がけています。ただ、流行しているからという理由で、そのトレンドを真似するだけではなかなかバズを生むことはできないため、ヤンマーならではのエッセンスを加えることも大切にしています。
ヤンマーの入社理由に「人」を挙げる社員が多くいることから、できるだけ社風や社員の魅力を引き出すことを意識し、その雰囲気を通してヤンマーの取り組みを楽しく伝えていくことも心がけています。最近の投稿で反響が大きかった動画は「工場の嬉しい瞬間・悲しい瞬間」です。一般のユーザーが共感できる「工場で働く社員あるある」なネタを入れながら、「ヤンマーあるある」なネタも取り入れることで、ひとつのコンテンツとして違和感なく楽しんでもらえるようまとめています。
@yanmarofficial 工場の嬉しい瞬間 #ヤンマー#YANMAR#嬉しい瞬間#工場#びわ工場#滋賀 ♬ オリジナル楽曲 - YANMAR/ヤンマー【公式】
コンテンツの理想は、ヤンマーを前面に出すのではなく、「おもしろいと思って動画を見ていたら実はヤンマーだった」という形。見やすさを重視し、動画の長さは30〜40秒に収めるようにしています。
――TikTokを運用してみて、どのようなことに苦労しましたか?
とくに大変だと感じているのは、流行に乗り遅れないようにすることです。撮影は月に1回、8本ほどをまとめて撮影し、編集まで完了したものから順に投稿しているのですが、企画から撮影までの間に流行の旬が過ぎてしまい、再度企画を検討し直す場合もありますね。
もうひとつは、撮影協力してくれる社員の募集です。撮影地の窓口担当が社員を集めてくれる場合もあれば、私が直接オファーするケースもあります。これまでたくさんの社員が登場しているため、イメージをつかんでもらいやすくなっていることから、立ち上げ当初よりTikTokへの理解は広がり、撮影に協力してくれる社員も少しずつ増えてきていると感じます。
もちろん出演を無理強いすることはしませんし、顔出しがなければ出演可能など各自の要望に応じるようにしています。ですがTikTokは拡散力があり、良くも悪くもコメントが多く寄せられることもあるため、出演に抵抗を感じる社員もいます。TikTokへの理解もふくめ、安心して出演できる環境づくりも引き続き行っていかなければならないと感じています。