Apple Vision Proの登場でどう変わる? その概要と活用事例から考える、今後の可能性

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 XRやメタバースといったキーワードは依然として未来を感じさせる魅力的な響きを含む一方、一過性のブームが去ったように捉えられる風潮もあります。こうしたなか、デザイナーやクリエイターとしてバーチャル文化とどのように向き合うべきなのか、疑問に思う人も多いかもしれません。この連載では、デザイナーやクリエイターの観点を主軸に、Oculus Rift DK1時代からXRに取り組み作品制作や企業のXR導入支援を行ってきたCHAOSRU代表の内藤薫さんが、その全体像を俯瞰した考察をまとめていきます。第7回は「Apple Vision Pro」についてです。

Apple Vision Proの特徴と注目ポイント

 昨年Apple Vision Proが発表されて以来、その可能性に高い期待と関心が寄せられているように感じます。AR/MR系のヘッドセットと言えば、MicrosoftのHoloLensやMagic Leapなどたくさんの種類がありましたが、Vision Proは何が違うのでしょうか。

空間コンピューティング

 Vision Proが提唱する「空間コンピューティング」は、現実空間そのものをインターフェイスに変えてしまうというコンセプト。

 AR/MR技術において、「現実空間と仮想世界の断絶感」は長年の課題でした。たとえば、現実とCGのライティングが違うためにいかにもCGに見えてしまったり、映像が不安定でプルプルするような動きが発生しまったり、といった点が課題として挙げられます。

 Vision Proは、カメラやセンサー、ディスプレイの進化にくわえ、高い空間認識能力を備えています。周囲環境を高精度に認識することで、アプリのウインドウや3Dオブジェクトを違和感なく自由に空間に配置したり、自然なCGライティングを再現したり、空間に連動した音響になっていたりと、以前のデバイスまでになかった自然さで「実在感のあるデジタル」を実現しています。

 これらの特徴は、もしかすると実際に体験しないとわからないような、細やかなディテールの話に聞こえるかもしれません。しかし、デジタルに実在感を持たせるためには、こうしたシビアなディテールが実はとても大切で、Appleがここにこだわっている点が大きなポイントだと思っています。

空間認識を生かしたアプリの様子

インターフェイス

 従来型のVR/ARヘッドセットはコントローラーを使うインターフェイスが主流でしたが、Vision Proは、視線やジェスチャー、音声といった人間の動作を使う点が特徴です。コントローラという機械的な概念をなくし、人間の動作にフィットしたインターフェイスを追求している点も、Appleらしいこだわりかつアプローチであると言えそうです。

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