企業事例から紐解くサステナブルなUX戦略
サステナブルデザインの概念を実践している企業の成功事例を見てみましょう。
1.Patagonia:エコとUXの調和
アウトドアブランドの「Patagonia」は、サステナビリティをブランドの核心に据えています。製品の製造過程において、環境に優しい素材を使用することを重視しているだけでなく、ユーザーに対してもエコフレンドリーな選択肢を促進しています。
とくに注目すべきは、Patagoniaの「Worn Wear」プログラム。これは、古くなった製品を修理して再利用できるようにする取り組みで、ユーザーに製品の寿命を延ばすことを促すものです。UXデザインの観点からみても、このプログラムは非常に直感的と言えるでしょう。製品ライフサイクルの可視化、修理・再利用プログラムのシームレスな統合、持続可能な消費行動の促進など、環境に優しい選択肢をユーザーに提供しています。また、Patagoniaのウェブサイトはとてもシンプルで、無駄なコンテンツが排除されています。これにより、ユーザーが欲しい情報にスムーズにアクセスでき、エネルギー消費も最小限に抑える意思表示がなされています。
2. IKEA
IKEAは、サステナブルデザインとUXデザインの観点からみても、環境への配慮とUXの向上を意識した取り組みを行っています。
サステナブルデザインの取り組み
持続可能な素材の使用
製品に使用する素材を環境に優しいものにすることに力を入れています。たとえば、2020年に発表した「IKEA 2030ビジョン」では、全製品において再生可能素材やリサイクル可能な素材を100%使用する目標を掲げています。
エネルギー効率の向上
IKEAの製品やサービスは、エネルギー効率を重視しています。たとえば、LEDライトや省エネ家電などがその一例です。また、IKEA店舗自体も太陽光パネルの導入など、再生可能エネルギーの使用を推進しています。
サーキュラーエコノミー
サーキュラーエコノミーを実現するために、製品のリサイクルや再利用、リファービッシュ(再生品)の販売などの取り組みを行っています。たとえば、家具のリサイクルや修理サービスを提供しています。
UXデザインの取り組み
シームレスなオンラインとオフラインの体験
オンラインとオフラインのショッピング体験を統合しています。とくに「IKEA Place」アプリでは、AR技術を利用して、家具が部屋にどのように配置されるかをリアルタイムで確認できる機能を提供しています。
ユーザー中心の店内デザイン
IKEAの店舗デザインは、ユーザー中心に設計されており、迷わず目的の商品を見つけやすい動線が特徴です。製品は実際の部屋を模した展示方法で、使用感を確かめやすく、ユーザーが購入後をイメージしやすくなっています。さらに、わかりやすいサインや案内で直感的に移動できるよう工夫されており、ユーザーニーズに応える快適なショッピング体験が提供されています。
3. Airbnb
Airbnbは、サステナブルデザインの先駆者のような存在です。彼らのプラットフォームは単なるホスピタリティサービスを超え、地域コミュニティとの持続可能な関係性を重視。サステナブルとUXデザインの観点では、ゲストまたはホストの体験に重点を置いています。
- 地域文化に根ざした宿泊先の推奨
- エコフレンドリーな施設の視覚的マーキング
- カーボンフットプリント削減機能
- コミュニティ持続性を促進する設計思想
サステナブルデザインの取り組み
エコロジーに配慮した宿泊施設
Airbnbは「エコ・リスティング」や「サステナブル・ステイ」を促進しており、エコフレンドリーな宿泊施設を探すことができるフィルターを提供。エネルギー効率が高い家や再生可能エネルギーを利用した施設など、環境に配慮した選択肢が増え、それらのグリーンホストを支援しています。
地域社会との連携
旅行先の地域経済への貢献を意識しており、地域の持続可能な観光資源を活用した旅行プランの提供にも力を入れています。観光業の地元経済への貢献を強化し、環境負荷を減らすような取り組みが行われています。
UXデザインの取り組み
簡単で直感的なプラットフォーム
ユーザーが簡単に宿泊施設を検索・予約できるように、シンプルで直感的なインターフェースを提供。カード型のグリッド、宿泊施設の画像、レビュー、アメニティの詳細情報をわかりやすく表示することで、ユーザーの選択をサポートしています。
個別化された体験とつながりの強化
ユーザーが自分の好みに合わせた検索条件を設定できるようにしており、過去の宿泊履歴やレビューをもとにパーソナライズされたオススメを提案しています。またホストとゲスト間のコミュニケーションを円滑にするための機能(メッセージ機能、レビュー機能など)を提供し、信頼性を高めています。