「視覚」と「文章」で魅力を倍増させている2冊を紹介――『作家のおやつ』『世界で一番美しい元素図鑑』

「視覚」と「文章」で魅力を倍増させている2冊を紹介――『作家のおやつ』『世界で一番美しい元素図鑑』
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 書店員芸人として活躍するカモシダせぶんさんが、クリエイト脳を刺激された本を毎回2冊お届けする本連載。第3回は、『作家のおやつ』『世界で一番美しい元素図鑑』を紹介します。

 クリエイト脳を合法的に刺激されて、脳汁を出したい皆さま、いかがお過ごしでしょうか。花粉に鼻を刺激されて汁を出している書店員芸人、カモシダせぶん(@kamo_books)です。

 さて、今回のテーマは「ビジュアルとエピソード」です。「視覚」と「文章」、ふたつの情報を同時に発信することで強いパワーが生まれている二冊を紹介します。

文豪とお菓子の組み合わせが新しい『作家のおやつ』

 まず1冊目は『作家のおやつ』(平凡社/コロナ ブックス編集部 編)です。タイトルそのままに、小説家やマンガ家、映画監督などさまざまなクリエイターが愛した「おやつ」について、本人や周りの人物が書いた文章をまとめたもの。写真も多めです。

『作家のおやつ』(平凡社/コロナ ブックス編集部 編)
作家のおやつ』(平凡社/コロナ ブックス編集部 編)

 創作活動をしているときに甘いものを食べる人は結構多いような気がします。エネルギーを使った分、頭が糖分を欲しているのかもしれません。僕の周りでは煙草か甘味で口の中を満たしながらネタを書いている人が多い印象です。

 この本の初っ端に登場するのが三島由紀夫。いきなり大物ですね。執筆中に好んで食べたのはウィスキーボンボンとかぼちゃの種。『百万円煎餅』というエッセイも発表しています。ほかにも手塚治虫とチョコレート、向田邦子と水羊羹、開高健とみつ豆など、刺激的な作品も世に出している作家がお菓子を頬張ってるさまは、ギャップがあって微笑ましいですよね。

 そんなギャップが極まっている小説家をご存知でしょうか。僕もこの本で知った、坂口安吾です。

 まず安吾の章のタイトルがやばいんです。「ヒロポンとアドルムとあんこ巻き」というタイトル。この3つは安吾が執筆中、頻繁に摂取していたものです。ヒロポンは覚せい剤だし、アドルムは睡眠薬……。いや、おやつと同列のお気軽さで摂取するものじゃない!!イメージに違わない、昭和の文豪像だなぁと思わずにはいられません。ちなみに3つめのあんこ巻き、これは浅草にあるお好み焼き屋「染太郎」の甘味で、お好み焼きの皮であんこを巻いたもの。う、うまそう。浅草でお笑いライブに出演したときに食べに行きたいです。

 この本でポップに映っているお菓子の写真からは想像がつかない、文豪の奥深いエピソード。受け手の興味を一気に引き付ける手法が素晴らしい1冊です。かく言う僕は、文章を書く時は必ず「飴」を舐めています。今も、メロン味の飴を舐めながら執筆していますが、決して皆さんを舐めているわけではないです。真剣だからこそ舐めてます、飴を。

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