2020年、ゲームアプリ需要45%増でモバイルゲーム市場がさらに拡大/AppsFlyer調査

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2021/01/04 05:00

 モバイル広告効果計測プラットフォームとマーケティングアナリティクスを提供するAppsFlyer Japanは、2020年の第1四半期から第3四半期までのモバイルゲーム業界の成長を調査したレポート「State of Gaming App Marketing 2020」を発表した。同社が保有する92億のアプリインストールを分析し、世界各国の動向をまとめている。

 2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、既存ユーザーだけでなく新規ユーザーも含めて多くの人が自宅にいながら楽しめるモバイルゲームを手にとった。

 これまでも、近年成長著しいアプリ経済のなかでその原動力の中心となってきたモバイルゲームだったが、今年は2019年と比較してインストール数が45%急増し、成長率も40%上回った。同レポートでは、2020年のモバイルゲームに関するインストールデータを基に、現在市場に起きている変化や、ニューノーマルなモバイル市場を理解するための分析を行っている。

新型コロナウイルスの影響受けモバイルゲームインストール数が45%増加に

 新型コロナウイルス感染拡大にともなう外出自粛の影響も受けて、モバイルゲームに対するユーザーの需要が急増。2019年と比較してインストール数が45%増加し、成長率においても2018-2019年と比較して2019-2020年は40%増加。2019年とは異なり、2020年の成長のほとんどがオーガニックインストールの需要増によって牽引されており、前年比57%増となっている。一方で、マーケティングによる非オーガニックインストール(NOI)も前年比の成長率は70%に迫る大幅な伸びを示しており、堅調に推移している。

 NOI成長の背景として、ひとつは平均的なアプリはオーガニックで発見されることが非常に難しくなっていることが挙げられる。オーガニックインストールの需要の対象の多くはトップチャートのアプリであり、トップチャート上位に入らないアプリはインストール促進のためにマーケティングが必要となっている。もうひとつの要因は、ゲームアプリはデータを活用することで収益性の高いマーケティング投資を行う術を持っているためだという。

ゲームジャンルがソフトであるほどインストール数の伸び率が高い結果に

 また、世界におけるカテゴリー別の前年比インストール率成長率を見ると、ゲームジャンルが「ソフト(簡単)」であるほど、総インストール数の伸び率が高いことがわかる。ソフトなジャンルであるハイパーカジュアル、カジュアル、ミッドコアのゲームは、より本格的なハードコアやソーシャルカジノゲームと比較して、少なくとも2倍の成長率を示している。これは、自宅にいながらエンターテイメントや気晴らしを求めて、これまでゲームをやっていなかった新規プレイヤーが初めてモバイルゲームに挑戦するようになった影響でもある。新規プレイヤーは、もっとも容易なゲーム(ハイパーカジュアル)から始め、そのうちのごく少数がハードコアゲーマーになる傾向にあるためだという。

 2020年、ゲーミングアプリ、特にハイパーカジュアルは、こうした需要の高まりに対応するためユーザー獲得(UA)の努力を大幅に加速させた。

マーケティングによる新規ユーザー獲得は成長中の発展途上国市場が狙い目

 マーケティングによるユーザー獲得の成長率では、ブラジル、インドネシア、インド、ベトナム、ロシアなど、主に大規模な発展途上国がもっとも高くなっている。アメリカや日本のような主要市場とは異なり、急成長している発展途上国の市場は、現在より多くの予算を集めており、間違いなくマーケットとして視野に入れる必要がある。こうした市場は、ユーザーひとりあたりの平均収益が低いにもかかわらず、メディアのコストは主要国の半分以下のため、ROI(投資対効果)に関しては大きなメリットがある。

 そのなかでも、ハイパーカジュアルだけはほかのカテゴリーとは異なる傾向を示している。イギリス、フランス、アメリカがもっとも急速に成長しており、マーケティング担当者は欧米市場に力を注いでいる。

アプリ内課金(IAP)においては、外出自粛中に特に高収益を維持

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に本格化した3月は、ユーザーが一斉にゲームアプリをインストール。アプリ内課金(IAP)は5月・7月にピークを迎えている。カテゴリー別では、カジュアルがIAPの収益を牽引しており、3月から5月にかけて55%急増しただけでなく、直近の数ヵ月も高水準を維持している。

 ゲームアプリは、ロックダウンや外出自粛が明けたあとでも印象的な収益を維持しており、これらのアプリは、自粛中にインストールした多くのユーザーにおいて継続的なエンゲージメントを獲得することに成功していることがうかがえる。

“リマーケティング”において課金ユーザーから得られる平均収益が95%増加

 ユーザーがリマーケティングキャンペーンに参加したゲームアプリと、参加していない同じゲームアプリを比較すると、リマーケティングを活用したゲームアプリは、課金ユーザーひとり当たりの平均収益95%増加をはじめ、リテンション、課金ユーザーのシェアなどのパフォーマンスを大幅に向上させていることが示されている。

 リマーケティングによるパフォーマンスの向上は明確であるにもかかわらず、ゲームアプリにおいてリマーケティングの採用率は比較的低く、特に「ソフト」ジャンルの間では普及していない。リマーケティングで大幅なパフォーマンス向上を享受しているハードコアゲームでさえ、その採用率はわずか11%にとどまっている。リマーケティングはUAよりも安価かつ確実に計測可能であるものの、ゲームアプリにおいて“リマーケティング”が見逃されている機会となっていることが見受けられる。