矢野経済研究所は、国内外のM2M市場を調査し、市場規模、セグメント別の動向、参入企業動向、注目技術動向、将来展望を明らかにした。
市場概況
同調査では、人が介在せずに、主に携帯電話/PHS通信規格に準じた通信モジュールを内蔵した機器・デバイス間で情報のやり取りをするM2M(Machine to Machine:機器間通信)を対象とし、ネットワークを用いたシステム構築やプラットフォームの利用などの動向を調べている。2019年度の国内M2M市場規模(事業者売上高ベース)は2,100億円で、前年度比4.5%増となった。第4四半期は新型コロナウイルスの影響で既存案件がペンディングや延期になったものの、通年では人手不足対応や遠隔/リモート志向の高まりなどもあり、依然としてマーケットは拡大基調であった。
注目トピック
IoT市場動向 ~ローカル5GのIoTソリューションへの活用~
IoTではさまざまなネットワークが利用されているが、現状でモバイル回線としては、4G/LTE(Long Term Evolution)および3Gネットワークを利用するケースが多い。2020年度以降、産業向けIoTの本格実装に合わせて、徐々に高速・大容量、低遅延、多接続などの機能に大きな強みを持つ5G対応機器やデバイスなども含めた5GベースのIoTソリューション導入が始まってくる。
2025年度以降になると、既存の4G/LTEやLPWA(Low Power Wide Area)、Wi-Fi系などの通信ネットワークとの間で極端なコストの違い(導入コスト、運用コスト)や、信頼性、対応機器・デバイス数が少ないといった問題が生じない限り、新規導入するIoTソリューションではモバイル5G型IoTやローカル5G(狭域の特定範囲限定で構築する5Gのプライベートネットワーク)型IoTを選択するケースも少なくないと考える。そして2030年を睨んだ将来展望では、産業分野での「IoT×5G」活用は拡大すると考える。5G型IoTでは、ローカル5Gおよび、より広域をカバーするモバイル5GをベースとしたIoTソリューションが並行して導入されていく見通しである。
将来展望
2020年度上期はコロナ禍により新規受注にブレーキがかかったことや、LTE対応の通信モジュール需要が一巡したこともあってマーケットの勢いは鈍化しており、2020年度のM2M市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比1.0%増の2,120億円を見込む。
ただし、コロナ禍の影響による遠隔/リモート志向の継続や、多様な通信ネットワークの登場に伴う適用領域の拡大などもあり、2020年度下期に入って新規受注も戻り、プラス成長は維持する見込みである。2021年度以降も同様な市場環境は続く見通しで、拡大基調は継続すると考える。