XR市場の創造に取り組むSynamon(読み:シナモン)は、ジィ・シィ企画と合同で、北海道大学の学生協力のもと、採用活動におけるVRの有用性に関する調査を実施した。
同調査では、企業の採用活動にVR技術を活用した場合の効果や有用性について考察。会社説明会やグループディスカッションという、新卒採用で一般的に取り入れられる選考フローの手段のひとつになり得るのか、学生目線での意見を収集。ウェブ会議システム「Zoom」を使った場合とSynamonの開発するVRコラボレーションサービス「NEUTRANS BIZ」を使った場合とで、会社への理解度や興味関心度合い、グループワークでの発言などに違いが表れるかを調査した。
結果として次の3点に関して、VRを活用して会社説明会を行うほうが優位に働く傾向がみられたという。
- 会社への興味度が高まる
- グループディスカッションでリラックスした場作りができる
- グループディスカッションでアイデアが出しやすくなる
調査概要
北海道大学の学生25名を対象に、「Zoom」と「NEUTRANS BIZ」を使用して次の4つのプログラムに参加してもらった。
- Zoomでジィ・シィ企画の会社説明会
- VR空間でジィ・シィ企画の会社説明会
- Zoomでグループディスカッション
- VR空間でグループディスカッション
VR空間で実施の際は、VRデバイス「Oculus Quest」を使用。会社説明会は同じ内容をそれぞれで開催している。また、グループディスカッションについては、難易度が同等レベルの異なるテーマで開催した。
同調査の結果について
会社説明会の理解度はウェブのほうが高いがVRのほうが興味喚起を起こしやすい
会社説明会には、自社について理解してもらうだけでなく、自社に興味関心を抱いてもらい選考に促すという目的もある。 同調査では、理解度に関しては64%以上の学生が「ウェブのほうがよく理解できた」もしくは 「ウェブのほうが理解できた」と回答している。
一方、「会社への興味度が深まったか?」という質問に対しては、約56%が「VRのほうがとても深まった」「VRのほうが深まった」と回答している。その具体的な理由として、「体験にインパクトがあり印象に残りやすかった」「疑似的に会社訪問ができるなどで会社の雰囲気をつかみやすいと感じた」といった声があり、情報を伝えるだけではなく体験を共有できるというVRの強みが、企業への興味喚起にも役立ったといえる。
グループディスカッション、やりやすさはウェブ優位 リラックス度やアイデアの発散性はVRが優位に
ツールへの慣れや通信環境などの関係もあり、グループワークのやりやすさでは76%近くがウェブのほうがやりやすかったと回答している。
一方、「リラックスして取り組めたか?」という質問では、「ウェブのほうがとてもリラックスできた(12%)」、「ウェブのほうがリラックスできた(20%)」に対し、「VRのほうがとてもリラックスできた(24%)、「VRのほうがリラックスできた(40%)」と総じてVR実施のほうが高評価となった。 「対面で話している感覚がある」「同じ場所に集まっているように感じた」「アバターなので自分の表情を意識しなくてもよいし、周りの視線も気にならない」といったポジティブな意見が上がる一方で、「周りの人の反応を表情から伺えないためファシリテーションがしづらい」という意見も出ている。
アイデアの発散性に関しても、「VRのほうがとてもアイデアを出しやすかった(20%)」、「VRのほうがアイデアを出しやすかった(32%)」と、50%以上がVRの方がアイデアを出しやすいと回答。学生からは「空間にアイデアの種となる情報を散りばめて共有できる」「アバターのコミュニケーションの気軽さから普段言わないアイデアも気軽に発言できた」「VR空間に居ることでまったく普段考えないようなアイデアが出た」という声があり、VR空間やアバターという非日常性がアイデア発散につながったといえる。
同調査では、一概にVR実施に優位性があるとはいえず、ツールへの慣れや通信環境、VR機材の装着といったハードルもあり、会社説明会の理解度やグループワークのやりやすさではウェブ会議システムのほうが優位となった。学生からは「Zoomのほうが慣れていてスムーズに実施できた」「Oculus Questを長時間使用すると疲れる」「通信負荷の大きいVR実施はメンバーが頻繁に落ちたりしてたびたび進行が止まった」といった意見が多く上がった。VR機材に関しては、調査実施時点(2020年8月)では装着時の重さや動作の安定性といった側面からも、ハードウェアレベルでの改善が必要だったといえる。