米国Monotype Imaging Inc.の日本法人Monotypeは、日本語書体「Shorai Sans」が2022年度グッドデザイン賞に続いて、世界三大デザイン賞のひとつであるRed Dot Design Award 2022のBrands&Communication Design部門において、Red Dot Awardを受賞したことを発表した。
Shorai Sans概要
日本語書体「Shorai Sans」は、たづがね角ゴシック、たづがね角ゴシックInfoに続き、約3年の開発期間を経て完成。幾何学的でシンプルな美しさと読みやすさが特徴の書体となっている。付属欧文には和文にあわせてサイズや位置を調整したAvenir Nextを採用し、和欧混植に最適化。たづがね角ゴシック同様、和文と欧文を別々の書体から選ぶ必要がなく、Shorai Sans単体で美しく読みやすいテキストを組むことができる。
Red Dot Design Awardについて
Red Dot Design Award は、1955年に創設され、 IF Design Award、International Design Excellence Awards(IDEA)と並ぶ世界三大デザイン賞のひとつで、国際的に権威のあるデザイン賞。ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン・デザインセンター(Design Zentrum Nordrhein Westfalen)が主催している。Product Design、Brands&Communication Design、Design Concept の3部門に分かれ、毎年約70の国や地域の企業、組織、デザイナーから20,000件を超える応募があり、年に一度、デザインの専門家により審査される。
今回受賞したBrands&Communication Designとは、ブランドデザイン、キービジュアル、ロゴデザインなどの分野での功績に対して授与される部門。受賞作品は、同アワードの公式ホームページでオンラインにて閲覧することができる。
「Shorai Sans」の特徴
文字の線をできるだけ整理し、骨格を極限まで単純化。線を均一に保つことで、すっきりと読みやすい明快な形を目指した。シンプルで見やすい文字は、印刷物のほか、スマートフォンやタブレット端末などのデジタルデバイス、建物や標識のサインまで、幅広いニーズに対応している。
文字の太さは超極太から極細までの10種類。もっとも太いウェイトのHeavyでは、複雑な輪郭線を整理し、Monotype初の超極太の日本語書体を実現した。
通常の単体ウェイトに加えて、文字の太さや幅などをユーザー側で自由に調整できるバリアブルフォントを採用し、ウェイト間の太さも調整できる。ウェブサイトや映像などのスクリーン上で動きのある文字表現も可能。
デザイン開発はMonotypeの小林章氏、土井遼太氏、そして書体デザインの第一人者、中村征宏氏によって行われた。基本となる漢字400字ができる頃、Monotypeの日本、香港、ドイツオフィスの書体デザイナーとエンジニア、そして中村氏が香港に集まり、1週間ほど一緒に書体制作をした。日本語書体の制作では、書体デザインを終えてからエンジニアにバトンタッチするのではなく、両方を同時に進めたほうが効率的であると過去の経験から学んだためとのこと。将来の字種拡張も考慮し、最初から多国籍メンバーで開発を進め、世代や文化を超えたコラボレーションとなった。人間らしい自然な筆の動きをイメージしたたづがね角ゴシックに対し、Shorai Sans は「何も足さない『素』のかたち」をテーマに、読みやすくクリーンで理知的な印象の書体に仕上げた。
書体名の「Shorai(ショウライ)」は、松の枝を吹き抜ける風やその音の意味である「松籟」に由来。茶道では茶釜の湯がたぎる音を意味し、日本的で優雅な響きのある名前に。誰でも発音しやすく、世界中の人々が使いやすい日本語書体である。