「パッケージデザイン」という言葉の意味を考えてみる
はじめまして。小林ユウスケです。私は普段、飲料系のパッケージをメインにデザインをしています。この連載ではパッケージを通して「?」や「!」を引き出す内容をお伝えできたらと思っています。パッケージを近くで見たり、離れて見たりさまざまに視点を動かして見ていくことで楽しいパッケージデザインの世界を巡っていきましょう。
早速ですがまず、パッケージデザインをわかりやすくするために要素を分解してみましょう。
パッケージデザインという言葉は「パッケージ」と「デザイン」のふたつの単語から成り立っています。それぞれの言葉について少し掘り下げて意味を把握してみます。
まずは「パッケージ/package」です。
辞書やwikipediaを見てみると、「包むこと・包装」、「ひとまとめにすること」、さらには「一括して処理すること」という言葉が並んでいます。パッケージソフトやパッケージツアーといった単語もありますね。物体に限らず、届けたり保管するために、なにかしらでくくる、もしくは包み、まとめられていれば「パッケージ」ということができそうです。
次に「デザイン/design」です。辞書には「図案を作る」、「企てる」、「設計する」という言葉が載っています。
さらにデザインという言葉の意味を探るために「アート/art」との違いを考えてみると、持論ではありますが、このふたつには大きく異なる点がひとつあると思っています。それは"目的"を見出す場所です。
アートではアーティスト自身の内側から目的を見出していくのに対し、デザインは主に世の中や顧客が抱えている課題を解決、発見するといったことが目的です。デザイナーの内側からではなく、外側の環境に目的が存在します。
「パッケージ」、「デザイン」というふたつの言葉の意味から考えると、パッケージデザインとは、「目的をもって包み届けること」と定義することができそうです。この「目的をもって包む」という点が大事なポイントです。
パッケージデザインとは目的をもって包むこと
ここからはパッケージデザインとはなにかについて、考えていきたいと思います。
まず、「適当に拾った石を、無作為に丸めた紙で包みました」という状態を想像してみてください。これではパッケージデザインとは言えませんよね。包むという点ではパッケージしているかもしれませんが、ここには目的や意味、意図がないからです。
しかしこれが「お坊さんが自ら選定し、祈願した石を、和紙で丁寧に折り包みました」となるとどうでしょうか。これであれば、お守りのような価値と形式を持ったパッケージデザインと言えるでしょう。
さらに「『折る』と『祈る』という言葉を掛けて折り紙の形式で包み、和紙を使うことで手触りと質感をあげ、より丁寧に手間をかけている印象を伝えたい」という意図が加われば、さらにパッケージデザインとしての役割が強くなるのではないでしょうか。
どちらの場合も、モノとしては“紙に包まれた石”であることは変わりません。しかし背景が肉付けされることでそのモノに価値が生まれ、さらにそれを伝えるために“目的”をもって包むことで価値を高めているのです。
商品のパッケージデザインもこれと同じようなことをしています。
たとえばコンビニなどで売られているミネラルウォーター、これもモノとしては水です。
しかしこれらの水には「自然豊かな森と山が育んだ美味しい水」といった背景や商品価値があり、これを山や自然のイラスト、やわらかいラインの透明な容器で表現、演出することで、このミネラルウォーターを見る人にその価値を伝えます。
その商品を手に入れることで得られる状態、渇きを癒す爽快感や身体に優しそうなイメージ。そしてそれによって彩られる生活など、大小さまざまな幸せな状態をパッケージデザインを通して想像させるのです。
実際にはここにマーケティングや広告プロモーション、ブランド戦略などさまざまな要素が組み合わさり、ひとつの商品として組みあがっていきます。