アートとコラボすることで何が生まれるか マイクロソフトが「Flags!」に込めた思い
デジタルフォーメーションを加速する取り組み「Flags!」の一環として、なぜマイクロソフトはこのようなワークショップを実施しようと考えたのか。その背景について、同社の浅野さんはこう説明する。
「日本マイクロソフトは、テクノロジーを通して日本の社会変革に貢献をしたいと考えているのですが、中でも具体的にイノベーションを推進していきたいのは、インダストリーイノベーション、ライフスタイルイノベーション、ワークスタイルイノベーションという3つの領域です。インダストリーイノベーションでいうと、たとえば自動運転。自動運転の車には、当然ながらたくさんのセンサーがついていて、AIがリアルタイムで何が起こっているかを把握することで、正しい方向に自動車のハンドルを切るなどが可能になりますよね。そういったことをAIが人間の代わりに行っているわけです。
しかし、そのテクノロジーが進み、自動車が自動で目的地Aから目的地Bに行けるようになると、自動運転バスが登場したり、毎朝タクシーが家まで来てくれて会社まで自動で送ってくれることもできるかもしれない。そんな風に通勤の仕方が変われば、当然働きかたも変わる。働きかたが変われば、仕事でのライフだけでなくプライベートのライフもどんどん変わっていくでしょう。
このような変化が生まれたときに、アートとコラボレーションすることで、AIに使われる人間ではなく、AIを使って新しいことを想像していく人間になることが必要なのではないか。そう考え、プロジェクトを進めてみたいと考えたわけです」
しかしいざ始めようと思うと、さまざまな問題に直面した。そのひとつが、欧米諸国と日本での技術に対する考えかたの違いだ。「IT 人材白書 2017」によれば、日本では、AIで新しいモノを創造する、もしくはそれを形にできるエンジニアの70%はIT企業におり、実際にモノを作りだす場にいるエンジニアは3割弱にとどまっている。一方、アメリカではこの数字が逆転している。つまり、アイディアやアートを使って実際に飲み物やテレビといった「モノ」を作り出す側に、多くのエンジニアがいるのだ。これが、技術に対する予算の投資配分にも影響を与えていると浅野さんは指摘する。
「あるデータによると、アメリカや欧米諸国は、ビジネスモデルの変革や、製品/サービス開発強化のためのITにたくさんお金を使っている。『攻めのIT』とも言えるでしょう。それに対して日本は、業務効率化やコスト削減といった『守りのIT』に多く投資をしている。ここに大きなギャップがあると思っています」
そういった現状を変えるための起爆剤になるべく立ち上がった「Flags!」。Flags!が提供するワークショップは、Art thinking、Design thinking、Business thinkingの3つのステップで成り立っている。
「AI時代にビジネスをしていくために、自分らしいFlagsを立てて、アイディアをそこに住まわす。そしてアートを使って、今までとは違う新しいものを作り出そう。こういったAIとアートのコラボレーションを進めていくためのプログラムにしていけたらと思っています」(浅野さん)