ツールだけを学んではいけない サイト改善に取り組みたいデザイナーのはじめの一歩を、分析のプロが語る

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2020/09/14 08:00

 「デザインシンキング」や「アートシンキング」などの言葉が広まり、ビジネスの現場でデザインの考えかたが求められるシーンが増えてきた。同時にクリエイティブの現場でも、マーケティングをはじめとしたビジネススキルが必要なシーンも増加しているのではないだろうか。そんななか今年の6月、サイト改善のなかでも“デザイン”に焦点をあてた『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』(マイナビ出版 、2020年)が刊行された。なぜ本書ではデザインにフォーカスしたのか。またサイト改善について学びたいデザイナーは、なにに気を配り、どのように学習すればいいのか。監修をつとめた小川卓さんと著者の菊池達也さんに話を聞いた。なお、著者のひとり、井水大輔さんには一部テキストで回答してもらった。

サイト改善の本で「デザイン」にフォーカスした理由

――まずはおふたりのご経歴と、『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』における役割を簡単に教えていただけますか?

小川 私はリクルートやサイバーエージェント、Amazonといった事業会社で、自社のウェブサイトの分析や改善を行ってきました。現在はHAPPY ANALYTICSという会社を立ち上げ、さまざまな企業さんの分析やコンサルティングを実施しています。そのなかでUNCOVER TRUTHという会社のCAO(Chief Analytics Officer)もつとめています。また今回の書籍では、監修という立場で、掲載する内容や見せかた、テキストなど全体をレビューしています。

菊池 株式会社UNCOVER TRUTHでアナリティクスグループリーダーをつとめています。経歴としては、1社目にマーケティングコーディネーターとして、サイト制作から運用、分析といったところの、ウェブコンサルディング業務に従事していました。UNCOVER TRUTH社では、CROといわれるウェブサイトのコンバージョンを上げる支援のなかで、分析をしながら施策を立案していく役割を担っています。

書籍における役割はふたつあり、ひとつは事例集めです。もうひとつは、さまざまな事例を収集していくなかで、具体例をあげるのは難しいけれど、改善のヒントがたくさん詰まっているというサイトを紹介したかったので、それを汎用的な形にして伝える第2章の執筆を担当しました。

――本書の刊行にいたった経緯と、デザインにフォーカスした理由について教えてください。

菊池 執筆者のひとりでもある井水さんのセミナーに参加してくださった編集者のかたが、サイト改善(A/Bテスト)に可能性を感じてくださり、事例を豊富に含んだ本を作れないかと相談なさったことが始まりです。そのなかで、

  • ツールや技術ハック的なものでなくもっとサイト改善に寄せたい。
  • 解析によりすぎるとターゲットが狭くなるので、広く多くの人の役に立つ本にしたい。

という方針がきまり、具体的には、実際のサイトにおけるBefore/Afterのデザインを見せながら、改善のポイントを解説する形で進めることになりました。

小川 アナリストやウェブマーケターは、データをもとに改善案を考えていますが、デザイナーさんの協力がなければそれらをサイトに反映することはできません。そのため、アナリストやマーケターが、よりよいサイトを作るためにどんな取り組みをしているのか、またデータをどのようにアイディアに結びつけているのかなどを知っていただきたいというのがひとつです。

もうひとつは、アクセス解析やアナリティクスと聞くと、難しそうという印象を持たれる方が多いのではないでしょうか。アナリストとデザイナーは、もともと交流が多い職種同士ではないですし、どうしても離れた世界であるように思われがちですが、お互いにウェブサイトをよくしていきたいという思いは同じ。だからこそ、その間を埋めたいと思いました。

そして100人に1人くらい、さらに解析を学んでみようと思ってもらうことができれば、私としてはとても嬉しいです。自分でデザインを作って自分で分析し、さらに改善していくことができるデザイナーは、個人的に最強なのではないかと思っています。

――なぜデザイナーがサイト改善まで理解しておくと“最強”なのでしょうか。

小川 とてもシンプルに言ってしまうと「それができると成果が出やすく、社内で評価されるから」だと思います。

サイト改善まで理解をしたデザイナーさんがデザインをしたおかげでユーザーが使いやすいサイトになり、そのおかげで購買につながって売上が上がったということ自体は、やはり当然評価されるべきもの。そのデザインのおかげでどれぐらい売上があがったかを提示することは厳密には難しいのですが、そこまでイメージして制作を進めてくれるデザイナーさんのほうが間違いなく成功確率は上がります。

となると、あのデザイナーさんに作ってもらうといい結果になるねとか、良いページになるねということが数字上でも何かしらの形で表れてくると、デザイナーもより仕事がしやすい環境を作ることができると思いますし、それが評価にもつながるのではないかと感じます。

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