デザイナーとして生き残るために 元ミクシィ・現LAPRAS平澤さん流、戦略的キャリアチェンジ論

デザイナーとして生き残るために 元ミクシィ・現LAPRAS平澤さん流、戦略的キャリアチェンジ論
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2020/10/29 08:00

 自分のキャリアをどのように積み重ねていくか。多くの社会人が一度は考えたことのあるトピックだろう。そんなキャリアについて「戦略的に考えてきた」と語るのは、デザイナーの平澤克幸さん。制作会社、広告代理店、大手事業会社、ベンチャー企業と、約20年にわたってさまざまな場所でキャリアを積んできた人物だ。平澤さんはなにを考え、働く環境を選択してきたのか。その経歴を振り返ってみると、デザイナーがキャリアを形成するうえでのヒントが見えてきた。

平澤さんの経歴

  • 2002年7月:総合広告制作会社に入社。
  • 2006年12月:キービジュアル、ブランディングに重点をおくクリエイティブカンパニーに入社
  • 2012年8月:医療専門の広告代理店に入社。ブランディングメソッドとマーケティング戦略の実績と経験を積む。
  • 2015年1月:ミクシィに入社。アクションRPG「モンスターストライク」のブランディング、「XFLAG」ブランドの立ちあげ、デザイン戦略室のPRなどに携わる。
  • 2020年3月:ネット上に公開されている情報をもとに、人工知能がエンジニアの能力を自動分析する個人向けのスキル可視化サービス「LAPRAS」などを提供するLAPRAS株式会社に入社。現在に至る。

LISMOで実感した、新しい価値を生むことのやりがい

――まず、キャリアのスタートから教えていただけますか?

大学では経済や経営を学び、新卒では販売促進のセールスプロモーションを専門にしている制作会社に入社しました。アパレルブランドをはじめノベルティーや映画館で販売されるグッズの企画や営業を担うポジションで入社したものの、営業売上として数字を伸ばすことや企画営業の働き方にやりがいを感じることができなかった一方、企画から先の制作プロセスに関心があったため、1年ほどで退職することを決めました。これが最初の転職でしたね。

もともとクリエイティブなものづくりに興味があったことや、絵画教室の先生として営んでいた親の影響もあり、デッサンやスケッチには自信がありました。そこで、イラストレーターとデザインの知識を学ぶべく、美術系の学校に入学します。学校に通いながら、イラストレーターとして出版社や書籍の制作会社に売り込みをしたり、女性ファッション誌の挿絵のお仕事などをいただいたりしながらイラストを描いていたところ、持ち込みをした広告制作会社のクリエイティブディレクターの方に「広告のデザイナーとして働かないか」と声をかけていただきました。イラストやデザインなどひとつの表現に固執せずメディアを選ぶところからものづくりに携わる期待から、その会社に入社しました。

――自信があったイラストではなく、デザイナーとして働くことに迷いはなかったですか?

学生当時から下手ながらイベントチラシのデザインを作ることは好きでしたし、イラストレーションとデザインは表現プロセスとして隣接するの近い領域だと思っていたので違和感なく受け入れることができました。またビジュアルデザインの仕事の中でイラストレーションを描けることが自分の武器になる意識は持っていたと思います。実際に携わるなかで、自動車メーカーのマス広告でマスコットキャラクターを描かせてもらったり、食品メーカーの広告でもメインモチーフとして自身のイラストを採用してもらったりと、結果的にイラストからデザイン、ディレクションを一気通貫で依頼していただけるようになりました。

なかでも印象に残っているのは、KDDIが提供する音楽サービス「LISMO」のプロジェクトです。そのミッションは、当時としては珍しかった通信機器のメーカーが提供する音楽配信サービスを、多くのユーザーに喜んで使ってもらうためにはどうしたらいいかを考えることでした。

当時のアートディレクターは、キャラクターを入り口にすることでユーザー認知を高めることで魅力的なサービスになるのではないかと考えており、私は制作の一部をサポートさせてもらいました。そのなかで「LISTEN MOBILE SERVICE」から派生した動物のリスをモチーフにキャラクターを作ったところ、多くの人に受け入れてもらうことができた。サービスの認知と愛着を通じて新しい価値が社会に浸透していく様子を間近で体感できたことは、とても大きな学びでした。

その経験から、新しい価値を作ることにやりがいを感じるようになり、イラストよりも、さまざまなメディアや表現を活用してメッセージを作っていく「コミュニケーションデザイン」に興味が向かっていきました。

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