「クーポンチャンネル」がローンチされたのは2018年3月。そこから1年半とかからずにPVは20億を突破し、実際にクーポンが利用された回数も1億回を超えている。これによって同アプリは、それまで利用率の高かった男性の中年層に加え、女性を中心に若年層から中年までの幅広い利用者を拡大することに成功した。
そして、この「クーポンチャンネル」を手がけた山本さんは、スマートニュースにジョインしてからわずか3ヵ月という短い期間のなかで、このサービスを生み出したのだ。
0.5秒で「おいしそう!」と思わせる
SmartNewsアプリが提供する「クーポンチャンネル」は、そのデザインにおいて、ある大きな特徴がある。それは、シズル感溢れる料理写真。「おいしそう」という気持ちを掻き立て、ユーザーは「食べてみたい」と思わずツバを飲み込んでしまう……。スマートニュースの山本興一さんはこのサービスをデザインするにあたって、クーポンを利用するユーザー体験に徹底的に向き合った。
「さまざまなクーポンサービスを調べてみたのですが、『お得』という情報が最初に伝わってくるサービスが多かったように感じました。その場合、商品の写真はあくまでも『説明』でしかありません。もちろん、『お得』という情報も大切ですが、『商品そのものの魅力』を伝えることを前提にしたサービスを作れるのではないか。そう思い、商品自体が主役になるようなクーポンの画面を作っていこうと思ったんです」
各クーポンをタップすると、スマホの画面には商品画像が全画面で表示され、ユーザーの目には商品の魅力が飛び込んでくる。そして、この商品写真にあわせて商品名、ブランド、そして割引情報といったテキストが表示される。
ただし、このデザインを生み出すためにはいくつかの課題があった。そもそも、各企業で持っている商品の写真は横長の画像がほとんど、縦長のスマホの画面では全画面表示にしてもインパクトが欠けてしまう……。
「各企業から提供していただいた商品の画像は、縦長のレイアウトにあわせて手作業で調整を行っています。それぞれのクーポンにあった画像を作成していくのはとても大きな手間になりますが、ユーザーに0.5秒で『美味しそう』と思ってもらうためには絶対に必要な作業なんです。
実は、このサービスとは別のプロジェクトとして、SmartNewsでは0.5秒でニュースや天気予報などの情報を伝えるための実験を行っていました。その時、クーポンについても実験を行っており、『動くクーポン』というデモも作ったことも。将来的にはそんな表現にも取り組んでいきたいと考えています」
しかし、同時に、「おいしそう」と思わせることは「あくまでもひとつの手段にすぎない」と話す山本さん。その最終的な目的は「ユーザーに行動を起こさせること」にあるという。そのため、クーポンの中には地図アプリへの連携が埋め込まれており、そもそものクーポン配信企業も、全国に展開する企業をメインにしているのだ。
では、SmartNewsというニュースアプリは、なぜクーポン配信を手掛けているのだろうか。そこには、ニュースだけにとどまず「良質な情報」を提供するという同社のミッションが深く関係している。
「『ニュース』というと、どうしても硬いイメージがありますよね。ここにクーポンという入り口を作ることによって、プロダクトへの興味を持ってもらえる。新聞にも折り込みチラシがあるように、生活に密着したクーポンを配信することは、さらに幅広い情報をユーザーに届けることへとつながっていくんです」