こんにちは。アトラエでエンゲージメント解析ツール「wevox(ウィボックス)」のデザイナーをしている竹田です。最終回は「“ブランド”をデザインする」をテーマに、私の考えをお伝えします。
ブランドと聞くと高級品やロゴをイメージされることもありますが、それは狭義になりますので、この記事では「ブランド=人の頭の中に出来上がるイメージの総体」と定義し、進めていきたいと思います。
「ブランドのイメージを形成する」とは
世の中にはさまざまなブランディングで溢れています。
たとえば、隙がない完璧さで魅了するブランドがあるとします。そのブランドは美しさやカッコイイなどのイメージで形成されています。こういったブランドの場合、寸分の狂いも許されないよう完全にコントロールしなければならないため、一元管理するといったブランドコントロールが必要となります。これは欧米のブランディングに多い印象で、海外の製品やアニメーションをイメージすると想像しやすいのはないでしょうか。
一方で、親密さで魅了させるブランドがあります。愛くるしさやカワイイなどのイメージによって形成されているこのブランドの場合、NGなことはありながら余白を残しているなど非常に寛容です。ご当地ゆるキャラのようなイメージで、日本のブランディングでよく見かけるように思います。
この2種類は対立するようにきっぱりと分かれるものではなくグラデーションになっていますが、それぞれ違いがあって興味深いものです。みなさんが関わる製品やサービスはどちらに近いでしょうか。また、この2種類はどういった割合でしょうか。
このように、製品やサービスは顧客とのあらゆるタッチポイントで、情報、見た目、機能や体験、思想などで顧客の頭の中にイメージがつくられています。このイメージの総体がブランドであり、製品やサービスを識別してもらう役割を持っています。
では、ブランドにはどんな要素があるのでしょうか。ここからはブランドの構造について考えていきたいと思います。
ブランドが共感を生むために 「言語化」の重要性
顧客は最初に見た目で良し悪し、好き嫌いなどの価値を判断していると言われていることもあり、ブランドの重要な要素として「ビジュアル」が挙げられます。ビジュアルを細分化していくとさまざまな表現がありますが、なかでも次の4つは、ブランドを構築するうえで最低限おさえておく必要があるでしょう。
- 製品やサービスを象徴するロゴ(Logo)
- 性格づけるタイポグラフィ(Typography)
- 特徴づける色(Color palette)
- 雰囲気を伝えるムードボード(Mood board)
もうひとつブランドを形成する際に大切なのは、言語化です。意味づけをしたり、顧客と同じ認識をもつために、それらを共通言語にしていく必要があります。最初は、次の4つの言語化を意識すると、思考の整理や開発が進めやすくなると思います。
- 哲学や信念(Philosophy)
- 世界観(Vision)
- コンセプト(Concept)
- 便益と約束(Benefit and Promise)
これら4つの言語化要素の関係を図に表したものが、次の図です。横軸を時間とし、左が過去、右が未来としています。
製品やサービスが存在しない場合、何も変化せず左(過去)から右(未来)へまっすぐ進みます。そこに、ユニークなコンセプト(Concept)を持つ製品やサービスが存在することで、変化が生まれます。矢印の角度が、その変化を表しています。
この製品やサービスを利用することで便益があり、顧客との約束があること(Benefit and Promise)で安心して利用してもらうことができます。それにより矢印の角度が上がり、良い方向へと向かっていくのです。
ただし、角度が大きく上がればいいわけではありません。上がりすぎると想像がつかない世界観となり顧客を獲得できませんし、上がり幅が少ないと想像にたやすいため魅力が減り、顧客が離れてしまいます。この製品やサービスだからこそ起こりえるワクワクできる世界観(Vision)を描くことが大切です。
そして、この世界観を描き実現させる理由や信念(Philosophy)がすべての源泉となり、製品やサービスに込めるものとなります。
これらの4つの要素を行き来しながら言葉を磨いていくことが共感を生む要素となる。そして、それらをビジュアルに落とし込んでいくことで、魅力的なブランドを生み出せると考えています。