ジャンルをカットしたなかでトップを目指す MIHA5つの特徴とは
――まずはMIHAの事業概要について教えてください。
2017年に楽天とガールズアワードによる合弁会社として設立し、YouTubeを活用したインフルエンサーマーケティングを提供しています。
楽天はインフルエンサーマーケティング事業に参入するにあたり、まずは楽天グループ内での展開からスタート。楽天の22のサービスで167本のYouTube投稿を行い効果を検証したのち、外部へのサービス提供を開始しました。現在では過半数が楽天グループ以外の企業がクライアントとなっており、外へ向けた展開も急拡大しています。
そもそもYouTubeでは、動画クリエイターが自身のタイミングでプライベート動画をアップしています。これに対し、YouTubeチャンネルにスポンサーがついたときに投稿が行われるのがタイアップ動画です。そのタイアップ動画と動画クリエイターをマッチングさせるために、我々は黒子役としてスポンサーを見つける活動をしています。そのため動画クリエイターはMIHAに所属することで、楽天グループを中心に仕事を受けることができる。たとえるなら、スポンサーが近所にいるような状態です。
MIHAには、クリエイターとのやりとりや動画の編集・分析なども行うチームも所属しているパートナー部門、セールス部門、経理や法務を担うコーポレート部門の3つがあります。動画の編集については、自身で行いたいかどうかクリエイターに希望を伺ったうえで、弊社で行う場合と、外部のパートナーと業務委託して制作するケースがあります。
――MIHAにはどういった特徴があるのですか?
ポイントは5つあります。1点目は、若年層やママ層において特に影響力の強いYouTube上のインフルエンサーが所属していることです。マス型というよりはジャンルをカットし、そのなかでトップを目指していく形で運営をしており、その結果、kemioさんや辻希美さんといった動画クリエイターを排出することができました。
ふたつめは、レシート画像を送付すると「楽天ポイント」を獲得できるサービス「Rakuten Pasha」と連携することで、オフライン購買の計測が可能な点です。Rakuten Pashaとは、実店舗での購入を検討しているユーザーに日替わりクーポンを提供し、そのクーポンを取得したユーザーは、該当商品購入後にそのレシート画像を送付すると、どの店舗で購入しても「楽天ポイント」を得ることができるサービスです。我々はそのレシートを解析し、購買データの分析を行っています。
このサービスとYouTubeを活用したインフルエンサーマーケティングを掛け合わせることで、YouTubeを視聴してどれくらいのレシート画像が送られたか、つまりどれだけ購買されたかを把握することが可能になりました。いままではYouTubeで動画を投稿しても、どれだけ効果があったのかを正確に把握することは難しかったですが、これによりオフライン購買の動向を物理的に捉えることができる。とても画期的なつながりなのではないかと自負しています。
3点目は、特別レポートの提供を行っていることです。レポートでは、一般的なデジタルマーケティングと同じか、それ以上に詳細なデータをお伝えすることが可能です。動画を何分まで視聴したのか、どこからその動画にたどり着いたのかなどを細かく分析することができます。より専門的なレポーティングが出せることも強みのひとつだと考えています。
MIHAは広告代理店機能ももっており、他社さんやフリーのインフルエンサーへの提案も可能というのが4つめの特徴です。楽天グループにもスポンサーをもっている特性を活かした提案や、動画の事前審査、インフルエンサーのレポート作成代行や契約書作成のサポートなども行っています。代理店としてMIHAを活用いただくケースも非常に増えていますね。
5つめはMIHAで審査を行っていることです。20の審査項目にもとづき、動画公開前に事前に楽天が審査をするなど、安心安全を最優先にしたサービス提供を大切にしています。そのため、炎上といったトラブルもこれまではゼロにおさえることができています。
――ジャンルをカットしたなかでトップを目指していくという方針は、事業開始時から決めていたのですか?
はい、MIHAを立ち上げるときからこの戦略で進めていこうと考えていました。ひとつめの理由は、我々が後発だったため、幅広い層をターゲットにするのは難しいと感じていたこと。またふたつめは、楽天グループとのシナジーです。まずは楽天グループに対して、しっかり効果を出していくべく、楽天ユーザーのボリュームゾーンを考えたところ、やはりママ層に支えられている面が大きい。一方、楽天会員のなかでこれから伸ばしていきたいと感じていたのが若年層です。すでに多くの会員がいる層とそうでない層の両方にアプローチすることで、バランスのとれた事業展開ができるのではないかと考えました。
3点目の理由は、女性をターゲットにしたサービスや商品が非常に多いことです。若年層とママ層の中でも“女性の”視聴者にMIHAはこだわっており、kemioさんも視聴者の9割は女性。楽天グループの外にもビジネスを展開していくならば、女性に視聴者になってもらう必要があると考え、ターゲットを絞りました。